第六幕 大魔皇王 ディリス・レガリア・ハザーデス

荘厳たる大魔皇王城がこの世界の中心に座する。その荘厳さと鉄壁さは難攻不落の名城として世界各地に知れ渡っている。さて今日は四大魔天王が集まる報告会がある。

その朝、大魔皇王は薄暗い自室にて陰気な気配を醸し出していた。


「もう朝か....昨日徹夜で自作のローグライクゲームしとったらもうこんな時間か」


余は魔王軍のトップである大魔皇王。しかし、力こそパワーといった組織形態なのに余自身の仕事は殆どない。ま、そのために有用な部下を率いて入るのだがな。


「レガリア、精神体とはいえ無理すると脳内演算処理に支障が出るわよ」


「あぁディリス分かってるよ」


 このディリスという人物は余自身である。平たく言えば二重人格というやつだが、正確には違う。二重人格は生命体の後天的なもので生まれるものであり余と彼女は自我を持ったときから一緒である。

 現在はこの機械人形に同居しているが、密かに進めている魔法化学の応用で作られた生命創生装置によって魔族としての肉体も手に入る。

 すると魔王城の城下町から随分と賑やかな音が聞こえる。大魔皇王は気になりそっとカーテンを開けて確認する。


「何やら外が騒がしいと思ったらそうか...今日は会議の日か各四天王自身以外では余だけが知っていることではあるが中々曲者揃いよな。


「それがいいんでしょ?ネームバリューは十分あるし、内に秘めた本心を隠し通すことである意味での緊張感はあるのだから。自惚れたバカよりはマシよ。」


「それはそう...だったな。ディリスはどう思う?現状のこの世界の征服の進捗度について...上手くいくか?」


この発言は魔王にしては弱気に聞こえる発言だが、彼は独り言のように言った。


「さぁね。以前の世界だって世界征服に成功した例は存在しないからね。史上一番大きな国だってモンゴルやオスマン帝国くらいなものよ。それにレガリアと妾は元々そういう目的で造られたじゃない」


「だが以前の世界には存在しない魔法という非科学的技術が横行している場所だぞ」


 魔王は元の世界の科学者組織が目論んだこの世界を新たな人間の居住地として確保し、新種の資源の採取と奇怪な現象の正体を科学的に突き止めるのと同時にそれらを利用しようとするものだった。


 その為に魔王は高性能自律思考AI搭載型侵略殲滅兵器として単独でこの地へと来たのだが、この世界に来てからというもの連絡手段も帰還方法もない。というかこの世界に無事に降り立ったと伝わったのかどうかすら怪しい。恐らくは失敗として封を押されていることだろう。


「レガリア、あなたも分かっているでしょうけど我らの使命はこの世界の物資と新たな居住地の確保よ?その為に人間という原住民を一定数一掃しているんじゃない」


「まぁそうなのだが....そろそろ肉体を持ちたいものだ。ここらの飯を食えないというのは、その...」


少しもじもじしながら言う彼に対しディリスは言う


「なに?あなたってそんなに食いしん坊だったっけ?」


ドキッとしたレガリアは慌てふためきながら言い訳をする


「ち、違うわ!これはだな余がまともに食事を取らないと知った配下たちが不審に思うやもしれぬという、奴らの生態行動に基づいたカモフラージュ工作でーー」


「はいはい、わかりましたわかりました。あなたってどうにも人間臭いわね?」


「....なにをぉ!!そういうディリスだって、ドレスとか洋服着たいとか言ってたじゃん!!」


「あぁ!あなたねぇ!そういうことは気にしなくていいの!」


両者精神の中で睨み合う。しかし客観視すれば魔王が一人で突っ立ちながら漫才でもしているかのような光景である。


「ぐぬぬぬぅううう.....まぁよいかそろそろ時間だ。やつらを待たせてはいかんからな」


「そうね。それにしてもアルベルト・アンダーソン所長元気にしてるかしらね?」


「さぁな。あの人がこの世界に来た時には、ここを明け渡せれると良いのだがな」


現在大魔皇王城地下には研究施設と製造工場という巨大施設がある。この世界に単身で来た時はどうしたものかと思っていたが何とかなっている。


そうして大魔皇王は会議室へと向かったのであった。


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見慣れた世界の見慣れた研究室で二人の男が話している。


「所長。少しよろしいですか?」


「どうした?」


「以前開発していた。プロジェクトは本当に失敗なのでしょうか?」


「....ぁぁあれか?そうだが、何か気になるのか?」


「機体自体は無くなっているわけですし、もしかしたら無事にたどり着いている可能性があると思いまして」


「なるほどな。だがそのもしもがあってもなお、既にこちらからの干渉は不可能に近い。諦めるんだな」


「それに我々が向かうべき世界はアレではない」


「ん?なぜ目的の世界が決まっているのですか?あの転送装置は不確かだと...」


「そうか、君は知らないのか、無理もない。事情が変わったのだ。上の政府連中とはもう掛け合っている。新たなプロジェクト、それが【DAYDREAM計画】だ。」


「それに恐らくだが、転送の衝撃であのAIは使い物になっていない可能性がある。所詮は転送実験に使っただけの器に過ぎない。端から何も期待はしていないよ。」


「....なんといったか?名前...名前...あぁ確か、「DEMONCRIMSON」だったか。由来は搭載したその強さと狡猾さだったか?何にしろ単騎だけで征服できるワケがない。だがもし出来たとするならばそれはもはや【魔王】と言わざるを得ないだろうなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



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次回予告 勇者パーティーVS超魔天王ボース

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