第11話
それから数分後、俺とレイナさんは城内へと入った。中は豪華な装飾が施されており、いかにもファンタジー世界らしい雰囲気だった。
俺は少し緊張しながら歩いていたが、レイナさんは全く気にしていない様子だった─さすがだな……と感心していると、彼女は一つの扉の前で立ち止まった。
コンコンというノック音の後、中から返事が返ってくる。
「入っていいですよ」
そう言われると、レイナさんは扉を開けて中に入ったので、俺も後に続いた─そこには椅子に腰掛けているアヴァリスが待ち構えていた。
「探したぞ!!ユウト!!」
そう言って俺のことを抱きしめた。突然のことに驚いたが、彼女の温かさを感じることができたので嬉しかった。俺は彼女を抱きしめ返した。すると、アヴァリスは俺を離してから言った。
「ようやく会えたね……会いたかったよ」
それから彼女は話し始めた─アヴァリス曰く、突然現れた魔物たちが襲い掛かってきたという。
彼女は応戦したものの追い詰められてしまいに逃げるときに、転移魔法を使ったらしい。
(なるほど、それでこの国に転移してきたというわけか……)
俺がそう思っていると、今度はアヴァリスの方から話しかけてきた。
「ユウトも無事そうで安心したよ」
彼女はそう言って微笑んだ─その笑顔はとても素敵で美しかった。思わず見惚れてしまうほどだ─そして、俺は彼女に謝罪した。
「ごめんな、アヴァリス……。突然いなくなったりして……」
すると彼女は首を横に振って答えた─そして、俺の手を取ると両手で包み込むようにして握ってきた─その手は温かくて心地よかった。そして彼女は優しい口調で言う。
「気にしないでいいよ……だってこうして会えたんだから」
その優しさに俺は泣きそうになってしまった。ヴァリスは俺の記憶が一部失われたことを心配してくれていた。
でも、俺はそれを彼女に伝えるべきか迷ってしまった─なぜなら、今の俺にとっては彼女のことだけが唯一の生きる意味だったからだ……。
しかし、その事を彼女に伝えると彼女は悲しむかもしれないと思うと何も言えなかったのだ……。
そんなことを考えていると突然部屋のドアが開き誰かが入ってきた。
(ん?誰だ?)
そう思って見てみると、そこにはレイナさんの姿があった。彼女はこちらに近づいてくるとこう言った。
「悠斗くん、今から一緒に出かけよう」
突然のお誘いに困惑していると、アヴァリスも賛成したのか頷いた。どうやら最初から決まっていたことのようだ……。
まぁ断るわけにもいかないし、せっかく誘ってくれたんだからここは素直についていくことにしよう。
***
(まさかアヴァリスとレイナさんと一緒に出掛けることになるとはなぁ……)
そんなことを考えながら歩いていると、目的地に着いたようだ─そこは大きな神殿のような建物だった。
中に入ると目の前には大きな石像があった。その像は女神の姿をしているように見えるが不思議とどこかで見たことがあるような気がした。
俺が疑問に思っていると、レイナさんが説明してくれた。
どうやらこの女神は、この国を守護している神様らしい─ちなみに名前はアリアナというようだ。
俺とアヴァリスは思わず顔を見合わせて苦笑していた─さて、気を取り直してこの場所について調べてみようと思う─ その石像の下には文字が刻まれている石碑のようなものがあったので読んでみた。そこにはこう書かれていた─
アリアナ神殿 :::::
ここは、アリアナという女神様が祀られている場所。この国に住む人々にとって大切な聖域となっているようだ。この教会の礼拝堂には美しい模様のステンドグラスがあり、その天井からは光が射し込んで神聖な雰囲気を醸し出している。
この教会には、アリアナという女神を崇めるための祭壇や、女神の石像などがいくつかあり、特に中央の祭壇に飾られた神々しき像は非常に美しく見惚れてしまうほどである。
また、この建物は神聖なエネルギーを秘めており、その周囲には聖なる空気が漂っているため心が癒される空間となっている悠斗は、教会の雰囲気に魅了されつつも、異世界での生き方や信念について深く考え込んでいた─この場所に来れば何かが掴めそうな気がしたのだ。
そして彼は思った。この世界で何を守り、何を成し遂げなければならないのかということを─そこでふとアヴァリスのことを見つめると彼女は慌てて目を逸らした。どうやら照れているようだ……
***
教会を後にした俺たちは、城下町を散策していた─辺りを見回すとたくさんの店が立ち並び、様々な人種の人々が行き交っているのが見えた。
本当に活気のある街だ。しばらく歩いていると、レイナさんが突然立ち止まった。
どうしたのだろうと思って見ていると、彼女は何かを見つけたようでそちらに走っていった。そして、そこで足を止めたのだった─そこにあったのは武器屋だった。
(あれっ?アヴァリスって冒険者なのになんで武器が必要なんだろう……?)
そんな疑問を持ったものの口に出さずに俺はレイナさんに着いて行った─
***
(うわぁ、すごい量の武器だなぁ……)
そう思ったものの口に出すと怒られそうなので黙っておくことにする。
彼女は真剣な眼差しで剣を選んでいるようだ─それにしてもどの武器も素晴らしいデザインをしていると思う。
それに見た目以上に軽い感じがするな……一体どういう素材を使っているんだろう……?
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