第8話
ーー翌日、俺たちは冒険者ギルドへとやって来た。中に入ると相変わらず賑わっているようだ……俺はアヴァリスさんと一緒に受付カウンターに向かい、ギルドマスターに面会を求めた。
するとすぐに応接室へと案内される……そこで待っていると一人の女性が姿を現した。その女性は俺と目が合うと小さくお辞儀をした。
「初めまして、私はこの冒険者ギルドのギルドマスターを務めているニーナ・ノヴァと申します」
彼女は丁寧な口調で自己紹介すると、俺たちに座るよう促す。俺たちはそれに従ってソファーに腰を下ろした……そして早速本題に入るのだった……
俺は緊張した面持ちで話を聞くことにする……何せ相手はこの国の最高戦力の一人なのだ。
絶対に失礼のないようにしておかなければならない……そう思っていたのだが、どうやらアヴァリスさんは俺の考えていることを察してくれたようでクスクスと笑っていた。ああもう!笑われてしまったじゃないか……!
俺は恥ずかしさに顔を赤らめながらも平静を装って話を聞くことにしたのだが……全くといっていいほど話が頭に入ってこなかった。だって仕方ないだろう?ギルドマスターは美人だし美しい声をしてるし、何よりいい匂いがするんだもん……俺は思わずドキドキしてしまう。
だがそんな俺の気持ちを察してか、アヴァリスさんはニヤニヤしながらこちらを見つめてきた……くっ!なんか悔しい……!すると彼女は笑いながら口を開いた。
「ごめんねユウトくん、うちのギルドマスターは可愛い子が大好きなのさ」
その言葉を聞いて俺は思わず赤面してしまう……すると彼女はさらに追い討ちをかけてきた。
「ふふっ、ユウトくんって本当に可愛いわね♪」
ギルドマスターがイタズラっぽい笑みを浮かべてこちらを見つめてくる……そして俺の頬に手を当てると優しく撫でてきた。俺の顔がどんどん熱を帯びていくのがわかる……ああもうダメだ!恥ずかしくて死にそう……!俺はこれ以上耐えられなくなって思わず両手で顔を隠してしまった。
だが、そんな俺を見てギルドマスターはクスッと笑う……そして立ち上がると俺の前までやってきて頭を撫で始めた。
「うふふ、恥ずかしがっちゃって可愛いわぁ♪」
そう言いながら彼女は俺を抱きしめて来る……!あぁもうダメだ!耐えられない!!だけど抵抗しようとしても力が入らないし体が動かない!くっそぉ……もう好きにしてくれ……!俺は諦めて彼女に身を委ねることにした。
ーーギルドマスターは、そんな俺を見てニヤリと笑うとそのまま俺の耳元に顔を近づけてきた。そして囁くように言うのだ……
「ねえユウトくん、今夜私といいことしない……?」
ーーその言葉を聞き、俺は思わずドキッとする……ちょっと待て!それってどういうことだ!?というかこの状況やばい気がするぞ!!何とか切り抜けないと……!!
そう思い、慌てて逃げようとするが体が動かないままだ。すると彼女はクスりと笑い俺に囁いてきたーー
*****
***
俺は、アヴァリスさんの助けを借りて何とかギルドマスターから逃げることが出来た。
だけどその代償として、しばらくの間からかわれ続けることになってしまった……うう……屈辱だぜぇ……!!でも仕方ないか……元はと言えば俺が悪いんだしな……?
あの後、俺たちはギルドマスターと話し合って依頼を受けることにしたのだが、依頼内容ははなんと人探しだった。
しかもその人物は貴族の娘で、名前をルミというらしい……そんな人がどうして行方不明になったのか……? とりあえず俺たちは早速その娘の捜索を始めたのだが、手がかりが全く見つからない状態だ。
このままでは埒があかないので冒険者ギルドの受付嬢であるレイナさんに協力を仰ぐことになったのだが、彼女もなかなか苦戦しているようで、なかなか情報を掴めずにいるらしい……
ーー俺は仕方なくアヴァリスさんに相談することにした。すると彼女は俺をじっと見つめながら口を開く。
「ふむ……そうか……」
そう言って顎に手を当てて考え込んでいた彼女だったが、不意に立ち上がると言った。
「……わかった!私たちも手伝うよ!」
おおっ!!めっちゃ優しい!!女神かよこの人!!俺が感動していると、彼女はさらに言葉を続けた。
「実は、君たち以外にも依頼を受けた冒険者たちがいるんだ……彼らは既にこの森の中にいるはずだから、彼らと合流すれば何か情報が得られるかもしれない」
なるほど!確かにその方が効率的だな!よし!そうと決まれば早速出発だ!俺は意気揚々と歩きだすと、レイナさんがクスクスと笑った。
「ふふ♪キミは本当に元気だね」
そう言われると恥ずかしいな……だけど本当に嬉しいんだ。だってさ、可愛い子と一緒に依頼受けられてんだぜ?最高じゃん!!そんなことを考えているうちに俺たちは森の入り口までやってきた。
するとそこに人影が見えた。あれはまさか……?
***
ーー俺たちがその人影に近づくと、その人物は俺たちに気づき笑顔で手を振ってくれた。どうやらあれがレイナさんの言っていた冒険者みたいだ!俺は早速彼らに話しかけることにした。すると彼らは快く迎え入れてくれたのだった……
最初は緊張していた俺だったが、話しているうちに段々と打ち解けることができた。どうやらこの人たちはベテランの冒険者らしい。彼らは俺たちが依頼を受けた理由を聞いて、快く協力してくれることになったのだ。
「さて、まずは情報を集めないとね」
レイナさんがそう言うと、俺たちは手分けして情報を探すことにした。
***
ーーしばらく探してみたが、なかなか有力な情報は見つからない……どうしよう?このままだと何も進展しないままだし……俺が悩んでいるとアヴァリスさんがある提案をしてきた。
それは今回の依頼を受けたのは俺たち以外にもいるという情報から、他の冒険者たちと手分けして探せば良いのではないかということだ。なるほど!それは名案だな!
さっそく俺はアヴァリスさんの提案を採用して、俺たちはそれぞれ別々の方向に向かって歩き出した。
ーーそれから数時間後、日が沈みかけた頃になってようやく俺たちは最初の手がかりを見つけた……だが、その手がかりというのはどうやら人の足跡のようだ。
「これは……この足跡を辿っていけば何か見つかるかもしれないね」
アヴァリスさんの言葉に頷き、俺たちはさらに奥へと進んでいくことにした。するとその先にあったのは奇妙な形をした木々だった……なんだこれ?なんか生き物みたいな形をしているような……?それに妙に色が違う……もしかして、これが妖精の樹と呼ばれるものか?
俺はそんなことを考えていたのだが、ふと周囲を見回してみると何か違和感があるような気がした。
あれ?そういえばなんでこんなに静かなんだ……?普通なら鳥のさえずりや虫の鳴き声が聞こえるはずなのに今日は全く聞こえない……これはおかしいぞ!嫌な予感がする!! 俺がそう思っていると
「おい、ちょっと待て」
不意に後ろから声をかけられて振り返ると、そこには二人の男がいた。一人はガタイがよく身長も高い男で、もう一人は小柄だが目つきが悪い男だ。二人は俺たちに近づいてくると話しかけてきた……
「お前たちも依頼を受けた冒険者か?」
その言葉に頷きながら俺が答えると小柄な男が続けて
「そうか、なら一緒に行こうじゃないか。」
と言い、俺たちは五人で行動をすることになった。そしてしばらく歩くと例のモンスターが出現したという場所に到着したのだが……そこには何もいなかったのだ。だがその時ーー ーー突然、地面から何かが飛び出してきた!俺は慌てて回避しようとするも間に合わず吹き飛ばされてしまう……!くっそっ!
「大丈夫か!」
そう言って小柄な男が駆け寄ってくる。だが、そいつはニヤリと笑うと俺たちに攻撃を仕掛けてきた!
ーー俺は咄嵯に防御したが間に合わずダメージを負ってしまう……!ぐっ……なんて力だ……!! すると大柄な男と星芒の少年も駆けつけてきてくれたのだが、奴らは二人で連携を取りながら
「おらぁ!」
と言って攻撃してくる……!くっ!このままじゃマズイな……仕方ない、ここは俺のスキルを使うしかないみたいだな。
ーー俺は全身に力を込めて叫んだ。すると体から光が放たれ、その光に触れた奴らの動きが鈍くなったのだ。よし!これならいけるぞ!!そう思った瞬間ーー 後ろから衝撃を感じ、
「ぐあっ!!」
と呻き声を上げながら地面に倒れ伏してしまう……くそっ!!油断した……!!すると、小柄な男がニヤリと笑いながら言ってきた。
「へっ!ざまぁねえな!」
そう言って俺の足を掴み引き摺っていく……くっそぉ〜……!俺は必死で抵抗していたものの、奴らは全く動じていない様子だ
「やめろぉー!」
そんな叫びも虚しく、俺は結局奴らに連れ去られてしまったのだった……
***
「さあ、着いたぞ」
そう言われて顔を上げるとそこは森の中だった……って、はあ!?なんでこんな所に連れて来られたんだ?意味がわからんかった俺は、思わず疑問を口にすると彼らは顔を見合わせてニヤニヤし出した……なんだこいつら気持ち悪いな。
そう思っていると大柄な男が語り始めた。
「この場所はかつて神々の住まう土地だった場所だと言われているのさ。だから、ここに生えている木々や草花は神聖な力を秘めていて、俺たち人間はこの場所に近づくことすら出来ないと言われているんだ」
なんだそりゃ?つまりここは聖域ってことか?
「まあ、そんな場所は他にもあるんだけどな!」
と小柄な男が付け加える。なるほどな……それでさっきの奴らは俺を捕まえて
「お前には、その神聖な力を手に入れてもらう」
と言ってきた。意味が分からん……どういうことなんだ? 俺が戸惑っていると大柄な男が説明してくれた。
なんでも神々の住む土地には強力な結界が張られていて、普通の人間が近づくことができないらしい。
だから、そいつらの力を得るためにこの場所に来たというわけだ……ってふざけんなよ!!連れてこられた挙げ句に何言ってんだこいつら。
俺が唖然としていると不意に腕を引っ張られて、体勢を崩してしまう。何だよ一体……ってうおっ!?
「ほら、着いたぞ」
「ここを通るんだよ」
そう言いながら小柄な男が俺の胸の辺りを指さしている……そこには何かの模様が描かれているようだった。え?マジで何やってるんだ。
「ほら、早くしろ」
そう言って奴らは俺を急かしてくる。仕方がないので俺は服をめくると胸の辺りに書かれた模様に手を重ねた。すると魔法陣のような物が浮かび上がり光を放つ─
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