第6話
そんなことを考えていると、今度はレイナさんが口を開く。
「それにしても、ユウトさんは本当に凄いですね!私なんかじゃ全然敵いそうにありません!」
そう言って笑う彼女につられて俺も笑ってしまう。するとアヴァリスさんもクスリと笑った後、俺に向かって話しかけてきた。
「まあそういうわけだから……今後君は、自分の能力をしっかり理解し、その力を使う時は注意するようにね!」
アヴァリスさんの言葉に俺は深く頷く。確かにその通りだと思ったからだ。今後はもっと注意深く行動しなければなるまい……そんなことを考えていると、再びレイナさんが口を開く。
そして、何かを言おうとしていたが途中で言葉に詰まってしまったようだった。
一体どうしたんだろう?俺が首を傾げていると、彼女は意を決したような表情をして話し始めた。
「あの……ユウトさん!もしよろしければなんですが……私と一緒にパーティーを組んでいただけないでしょうか?」
そう言うと彼女は深々と頭を下げた。突然の行動に驚いてしまうが、俺はすぐに返事をする。
「はい、よろしくお願いします」
俺がそう答えると、彼女はとても嬉しそうな表情を浮かべた。どうやら断られるかと思っていたようだ。そんな彼女を見ていると、なんだか微笑ましく思えてくる。しかし同時に不安もあった……何故なら俺には全くといっていいほど戦闘経験が無いからだ。果たして彼女についていけるのだろうか?そんなことを考えていると、今度はアヴァリスさんが話しかけてきた。
「ユウトくん、私からも一つお願いがあるんだがいいかな?」
俺は首を傾げながら頷く。一体なんだろう?そう思っていると、アヴァリスさんは真剣な表情を浮かべていることに気付いた。どうやら大事な話のようだと思い口を開く。
******
***
その後、アヴァリスさんとレイナさんの提案により、俺たちはしばらくの間一緒に活動することになった。
もちろん二人が冒険者として依頼を受けたこともあるが、それ以外にも自分たちのスキルや技術を教えあうことにしたのだ。これはお互いの能力向上に繋がるし、何よりもパーティーを組んだことでお互いに助け合える仲間ができたことが嬉しかったからだ。
しかし……、 俺はアヴァリスさんの訓練によりボロボロになった身体でその場に寝転んでいた。既に満身創痍だ……。
(さすがに無理があったかな……?)
俺がそう思っていると、アヴァリスさんが近づいてくる。そして俺を見下ろしてきた。その表情はどこか楽しげであるように見えるのだが気のせいだろうか?そんなことを考えていると、アヴァリスさんが口を開く。
「ユウトくん、お疲れ様……今日はここまでにしよう」
俺はその言葉を聞いた瞬間、思わず安堵のため息を漏らしてしまった。どうやらこれで今日の訓練は終わりのようだ。すると突然身体に力が入らなくなり地面に倒れ込んでしまう。そんな俺にアヴァリスさんは優しく手を差し伸べてくれた。俺はその手を掴むと、ゆっくりと起き上がる。
「ありがとうございます……」
俺が礼を言うと、アヴァリスさんは微笑みながら首を横に振った。そして彼は近くに置いてあったタオルを手に取って俺に渡してくれる。それを受け取ると汗を拭いながら呼吸を整える。
すると突然お腹がぐぅ〜となったので思わず赤面してしまう……どうやら身体は正直みたいだ。そんな俺を見てアヴァリスさんはクスリと笑うと言った。
「よし、それじゃあ今日は美味しいものでも食べに行こう!」
その言葉に俺は思わず目を輝かせてしまう……実はここ数日間、まともな食事をしていなかったので空腹だったのだ。それにこの世界に来てから初めて外出することも楽しみだったしね! そんなことを考えているといつの間にか支度が終わっていたようで、アヴァリスさんが俺に向かって手を差し伸べてきた。俺はその手を取ると、二人で一緒に歩き出すのだった……
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