第3話 

「ところでアヴァリスさん。俺以外に人はいますか? それと、もしいたら家族とかは?」



「ああ、いるぞ? といっても全員で四人しかいないのだが……」



「そうなんですか? ちなみにどんな人たちなんですか?」



「一人目は私の妹だ。名前はアイリスと言う。歳は17歳で私の二個下だな。性格は真面目なんだが少し頑固なところがあるな。あとは、いつも本を読んでいるな」



「へえー、妹がいるんですか。」



「ああ、いるぞ。二人目はこの国の王だ。名前はアルノルトという。年齢は25歳だ。ちなみに独身だ」



「王様って結婚しないんですか?」



「ああ、しないな。なぜかというと結婚相手を探す時間がないからな」



「なるほど……、確かにそうですね」



「そして三人目がミーシャだ。こいつは18歳の少女だ。姉であるアヴァリスが大好きで、よく一緒に遊んでくれる」



「仲良し姉妹って感じですか?」



「ああ、そうだな。そして四人目がエルザだ。彼女は16歳で、とても優しい子だ。ただ、怒ると怖い」


「そ、そうですか……」

俺は苦笑いを浮かべた。



「まあ、とりあえず私たちの国を見てみるか?」


「はい、是非!」


俺はアヴァリスさんに連れられて、セリュナリア王国の中に入っていく。

セリュナリア王国は、月光によって照らされた幻想的な光景が広がっていた。

大きな銀色に輝く月に照らされて、美しく輝く街並み。



夜空に浮かぶ月は、まるで何かの儀式を行うかのように、神秘的に輝いている。

道を歩く人々の中には、獣人やエルフといった様々な種族の姿が見える。


「凄い……」

俺は思わず感嘆の声を上げた。

俺の隣ではアヴァリスさんが俺の顔を見ながら微笑んでいる。


「どうだい? この国は美しいだろう」


アヴァリスさんが自慢げに言った。

俺はアヴァリスさんの言葉に同意するようにうなずいて

「はいっ! こんな綺麗な景色見たことありません」

と答える。

本当に言葉に言い表せないくらい綺麗な国だ。


「ふふんっ、そうかそうか。気に入ってくれたみたいで何よりだ」


アヴァリスさんが満足気に笑った。


「さて、まずはどこに行きたい? どこでも案内してやるぞ?」


どうしようか……。

アヴァリスさんにはお世話になっているし、ここは素直に希望を言うか。


「じゃあ、冒険者ギルドに連れて行って貰えますか?」



「ほう、なんだか意外だな。もっと違う場所に行きたいと思ったんだが」



「いえ、アヴァリスさんにはとても良くしてもらっているので、恩返しできればと思っています。それに俺自身もこれから生きていくためにお金が必要ですからね」


正直、どの世界もお金がないと何も出来ない。それに、せっかく魔法が存在する世界にきたのだ。

やはり一度は使ってみたいなと思う。

すると、アヴァリスが嬉しそうな表情を浮かべた。



「そうか。それは助かるな。それじゃあ、早速行こうか」



俺たちは、アヴァリスさんの言う通り、冒険者ギルドへと向かうことにした。

セリュナリア王国の冒険者ギルドがある場所は、街の中央にある巨大な建物だ。

建物は石造りでできており、扉を開くと、中は広々とした空間が広がっている。

中には数多くの冒険者がおり、依頼掲示板の前で熱心に話し合っている姿も見られた。

アヴァリスさんは受付カウンターの方に向かうと、一人の男性に声をかけた。

「久しぶりだな、マテウス」


「これはアヴァリス様。お久しぶりでございます。本日はどの様なご用件でしょうか?」


声をかけられた男性は、丁寧に挨拶をする。

年齢は40代後半だろうか? 白髪交じりで顔立ちは整っており、身なりも良い。

おそらく、アヴァリスさんと同じかそれ以上の地位にいる人なのだろう。


「今日は私の友人を連れて来た」

そう言って、俺のことを指差す。



「は、初めまして。アヴァリスさんにはお世話になっています。藤原悠斗といいます」


俺は頭を下げ、自己紹介をした。

すると、男性が笑顔で話しかけてくる。



「これは、ご丁寧なあいさつありがとうございます。私はこの国の冒険者ギルドのマスターを勤めている、マテウス・メフィストフェレスと申します。以後、よろしくお願いします」



そういって、マテウスさんは俺に向かって握手を求めてきた。

俺は差し出された手を握る。手のひらには、まめができており、見た目からも強いと確認できる。


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