履く知能
mimiyaみみや
第1話
「博士、ついに今日は日本での発売日ですね。私にはこれまで博士の理論が分かりませんでしたが、この靴を履いた今、もう一度説明していただけませんか?」
「ふむ、よかろう。足裏には多くのつぼがあり、様々な臓器の活性化に結び付けられることは知っておろう。ある部位を押すと肝臓の働きを良くし、ある部位を揉むと眼精疲労に効果がある。そしてある部位を刺激すると、脳の働きまでもが良くなる。私はこのことに着目し、履くと知能が飛躍的に上がる靴を開発した。すなわち、靴底の凹凸が足つぼを刺激し、脳の相下位や朶岸瑪帯など知能に関わる百八の部位を活性化させる」
「人類は博士の力によってひとつ進化したと言えますね。現に、試験導入したパラグアイでは廃棄物処理の問題が解決し、人々の幸福度が上がっています。すでに売り上げが好調な中国では、貧富格差についての取り組みが始まりました。イギリスでは政治腐敗が解消されつつあり、アメリカでは環境に配慮し高効率を求めた製品が多く生まれていると聞きます」
「しかし、日本で長いこと認可がおりなかったのは情けない。しかも、医療品としては結局認められず、ジョークグッズとしての販売となるとは」
「まったくです。しかし、この靴を履けば愚かな考えも改まるでしょう。どうやら今各地で、開店前の靴屋に長蛇の列ができているようですよ」
「まあ、日本がより良くなってくれるなら良しとしよう。さて、日本で解決せねばならない問題はなにがあるかな?」
「経済の停滞、税収低迷、労働力不足など、いろいろありますが、少子化が根源にあるかと思われます。きっとこの靴の力で、解決へ導かれることでしょう。あ、靴屋が開店する時間ですよ」
「ほう。せっかくの記念日だ。私も新しい靴を履くとするかな」
「最近はワンサイズオーバーのものを、靴紐できつく縛る履き方が流行っているそうですよ」
「ふむ、せっかくだ。それに倣って履くとオホーーー!」
「どうしました博士!」
「オホーーー! オホーーー!」
博士は陰茎を屹立させ、腰を激しく振りながら奇声を発していた。
「ははあ、どうやらワンサイズオーバーの靴を履くと、足つぼの刺激される部位が変わって、ああなるようだ」
「ウヒョヒョ、ヒョヒョ!」
「ああ、外へ出て行ってしまった」
外では博士同様、理性が崩壊し性欲が暴走した男女で溢れていた。少子化は解決しそうである。
履く知能 mimiyaみみや @mimiya03
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