第8話 血と俺

「やっと、捕まえた」

そう叫びながら現れた一人の女性が現れたんだよ。

その女性は俺に近づいてくるなり抱きつこうとしたので咄嵯に避けたんだ。

しかし、それでも諦めずに追ってきたので逃げ続けていたんだが、とうとう追いつかれてしまったんだ。

それから彼女は俺に向かって、いきなり告白をして来やがったんだ。

俺は戸惑ったが断ろうとしたら押し倒されちまったから参ったもんだよな、

でも流石にこれ以上付き合うわけにはいかないんで振りほどこうとしたその時、

彼女が突然苦しみだしたかと思うと口から血を吐き出したんだ。

(あれ、これってやばいんじゃ……)

と思った瞬間だったんだけど、そのまま気絶しちまったんだ。

その後、目を覚ましたら俺は診療所にいたみたいで、医者の話を聞きながら状況を把握することができたんだ。

どうやら彼女は病気にかかっていたようで治療方法がないそうだ、このままだと長くは持たないらしい。

(何とかしてやりたいけど俺には何もできないよな)

そう考えていた矢先のことだった。

彼女が俺に向かってこう言って来たんだ。

「お願い、私を殺して欲しいの」

俺は驚いたが、それでも何とかしようと必死になって考えた結果一つの結論に至ったんだ。

それは、彼女が助かる方法を一つだけ見つけたということだったんだが、

その為には彼女の協力が必要だったんで早速試してみることにしたんだよ。

そしてその結果、見事に成功したので彼女を救い出すことができたのだ。

まあ、その後は色々と大変だったんだけどな、何しろ彼女は有名人だったもんだから

色々な人がお見舞いに来るわ来るわで大変な目に遭ったよ。

だけど、それも今では落ち着いているから良かったと思っているんだけどね。

ところで最近思うことがあるんだが、魔法道具を使って人を生き返らせることができるなら

別に殺さなくても良かったんじゃないのか? って思っているんだけどどうなんだろうか。

「ねえ、聞いてるの?」

そう問いかけてくる彼女だったが、俺は無視して歩き続けることにしたんだ。

すると彼女は不満そうな表情を浮かべていたが諦めてくれたようでホッとしていたんだが、

次の瞬間には腕を掴まれてしまったので驚いてしまったよ。

(え?)

と思った時には既に遅く、そのまま引っ張られて連れていかれそうになったため慌てて抵抗しようとしたのだが、

結局無駄に終わったんだよな。

「どこ行くんだよ」

俺は聞いてみたんだが、彼女は何も言わずにどんどん進んでいくばかりで、

まるで何か目的があるみたいだったな。

そして暫くの間、森の中を歩いていると小さな小屋が見えて来たんだ。

(こんなところに家があるのか?)

そう思いながら見つめていると彼女が扉を開けて中に入って行ったので俺もそれに続くことにしたんだ。

するとそこには一人の男がいたんだが、その男は俺を見るなり嬉しそうに微笑んでいるように見えたんだよね。

何だか気味が悪かったけれど、彼女について行くしか道はなかったからどうしようもなかったんだけどな。

だが、そんな俺の心とは裏腹に男は笑みを浮かべていて、ますます気味が悪く感じられたんだ。

その予感は当たっちまったみたいで、急に苦しみ始めたかと思ったら口から血を吐き出した。

「ゲホッ、ゴホォ……」

咳き込みながら吐血している姿を見て、思わず目を逸らしたくなったのだが我慢するしかなかったんだ。

何故なら男の目は俺を捉えていたからだ。

その瞳からは強い殺意のようなものを感じたから怖くてたまらなかった。

でも、だからといって逃げ出すわけにもいかず仕方なく見ていることしかできなかったんだけど、しばらくすると落ち着いたみたいでホッとした。

すると男が話しかけてきたんだが、その声はどこか弱々しい感じだった。

もしかしたら病気のせいなのかもしれないと思ったが、だからと言って同情するつもりもないけど、

そんなことを考えていると男の方から話しかけて来たので答えてやることにしたんだ。

どうやらこの男は科学者で実験に失敗し、このような姿になったらしいのだ。

それを聞いた時に思ったことはただ一つだけだった。

可哀想だとは思ったけどそれだけだ。

それ以上は何も感じなかったか、それよりも、早く帰って休みたいという気持ちの方が強かった。

そう思っていた時だったんだ。

女が声をかけてきたので、

女が言うには、男を救ってほしいという事らしかったんだが、そんなことを言われても困るんだよなとしか思えなかった。

だってそうだろう?

どうして赤の他人を助けないといけないのかって話になる。

「悪いな、他を当たってくれ」

そういって立ち去ろうとする俺の袖を掴んで引き止めようとする女に苛ついたものの、

強引に振り払うこともできない為、どうしようかと考えていると今度は別の声が聞こえてきた。

声の方を向くとそこにいたのはもう一人の男だったのだが、そいつの顔を見て驚いたんだ。

なんと、そこに立っていたのは死んだはずの弟だったからだ。

何でこいつがここにいるのかわからないまま呆然としていると、弟は笑いながらこう言ったんだ。

「お久しぶりです兄さん」

その言葉に違和感を覚えたが、よく見ると顔つきが少し違うような気がしてきたため別人かもしれないと思い直した。

だが、やはり気になるので聞いてみることにしたんだが、その前に名前を聞こうと思ったんだった。

そこで改めて尋ねてみると、彼は嬉しそうに答えてくれたよ。

「僕の名前はジークフリートと言います、以後お見知りおきください」

(やっぱりそうか)

と思いながら話を聞いていると、どうやら彼もあの女と同じように兄を助けたいのだということがわかった。

そのためならば何でもする覚悟だというのだ。

それを聞いて少しだけ心が揺らいだもののすぐに思い直すことになったのだ。

何故なら俺が本当に助けたかったのは、マリーナただ一人だったからだ。

「お前なんかに、俺の気持ちなんてわかるものか」

つい感情的になって怒鳴ってしまったことで後悔する羽目になったのだが、それでも止められなかった。

それだけ腹が立っていたのだから仕方がないだろうと思うことにしたんだ。

しかし、そんな彼女の言葉を聞いているうちに冷静さを取り戻してきたこともあって、冷静に考える余裕ができたように思うんだ。

それで考えた結果、こうすることにしたんだ。

つまり、この男も利用するってことだ。

そうすれば、彼女も喜ぶだろうし一石二鳥ってやつだろ。

そんなわけで早速行動に移すことにすることにしたんだ。

まず最初に、こいつらを利用して復讐を果たすということを考えたんだけど、流石にそれは無理だと思ったから諦めることにしたんだ。

「さて、これからどうするかな?」

そう呟きながら考え込んでいるうちにふと思いついたことがあったんだ。

それを実行するためにはまず準備が必要だと考えた俺は、急いで支度を整えることにしたんだ。

それからしばらくして準備が整ったところで、二人に声をかけると返事を待たずに歩き出すことにしたんだ。

行き先はもちろん、王宮だよ。

あいつに会うためにわざわざやって来たわけだが、ここまで辿り着くのには

「長かったよなあ」

とか考えているうちに自然と涙が出てしまったんだけれども、これも全てあいつらのせいだと思うと許せなかったんだ。

だから思いっきり怒鳴りつけてやることにしたんだ。

そうしたら、あいつはビビッて動けなくなっちまっていたので助かった。

もしそうじゃなかったら大変なことになっていたかもしれんからな、

そういう意味では運が良かったと思うよ。

とはいえ、いつまでもそうしてるわけにもいかないしどうしたものかと考えていたところであることを思い出したんだよ。

(そういえば、王女マリーナはどこにいるんだろう)

そう思った俺は近くにいた兵士に聞いてみることにしたんだ。

そしたら驚きの事実が発覚したんだ。

なんとあの事件の後、捕らえられてから行方不明になってしまったそうなんだが、今思えばあの時の反応を見る限り納得できるような気がするのだった。

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