第6話 恩返し

「王国に行って、王様に会えばいいんじゃない」

それを聞いて、確かにそうだなと思ったんだが、どうやって行けばいいのかわからないんだよな。

そう思っていると、彼女の方から提案してくれたんだ。

「私が案内してあげるわ、ついてきてちょうだい」

と言われたのでついていくことにしたんだが、道中で色々なことを教えてもらったよ。

まず最初に聞いたのがこの国の名前なんだが、それはアヴァロンというらしいんだ。

この国では王族であるアーサー家が代々統治しているらしく、国王の名前はエドワードと言うそうだ。

ちなみに今代の王は女性だそうで名前はアリス様というらしい。

次に俺達がいた国の名前だが、そこはエルドランドという名前だったらしい、

なんでも大昔に滅んだ国で今はもう存在しないそうだが、何故そんな国がこの世界に存在しているのかは不明だという事だ。

最後にこの世界の通貨について聞いてみたところ、

「銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、そして金貨100枚で白金貨1枚になるわ」

と教えてくれたんだ、

つまり日本円にして一万円、十万円、百万円、千円、千二百円、二千四百円ということになるわけだな、

わかりやすい説明ありがとうよ。

そんな話をしている間に目的地に到着したようで、そこには立派な城が立っていたんだ。

ここがこの国の王城というわけか、すげえ立派だなこりゃあ、そう思いながら眺めているうちに中へと通されて応接室のような場所に連れてこられたんだが、

そこでしばらく待っているように言われたんだよな。

なので大人しく待つことにする事にしたんだが、しばらくして現れたのは一人の女の子だったんだよ。

年齢は十代前半といったところだろうか。

綺麗なドレスに身を包んでいて、いかにもお姫様といった感じの子だったが、

その子が言うにはこの子は王女様の娘のマリーちゃんという子らしい、それにしても可愛い子だなあと思っていたら、

急に抱きつかれてしまってびっくりしたぜ。

でも悪い気はしなかったかな、むしろ嬉しかったくらいだしよ。

そんな事を考えているうちに眠ってしまったみたいで気がついた時には朝になっていたんだが、

隣に誰かいるような気がして見てみるとそこに居たのは裸の女性だったんだよ。

しかもよく見ると俺も裸じゃないか!?

驚いて飛び起きると彼女も目を覚ましてこっちを見てきたので目が合ったんだが、その瞬間に何かを思い出した気がしたんだ。

(あれ? これってもしかして夢じゃないんじゃないか?)

そう思って自分の頬をつねってみたんだが痛かったので間違いないようだな、

じゃあやっぱり現実なのか?

だとしたらまずい事になったぞ、まさか俺がこんな事になるなんて思わなかったからな、

「おはようございますご主人様♡」

そう言いながら抱きついてくる彼女を受け止めつつどうしたものかと考えていると、不意に扉が開いて誰かが入ってきたんだよ、

それは何とメイド服を着た少女だったのだが、どう見ても日本人じゃなかったんだよな、

髪の色も目の色も違うし何より耳が尖っているから明らかに人間じゃなさそうだよな、

それにこの子どこかで見たような気がするんだけど気のせいだろうか、

そんなことを考えている間に彼女はベッドに近づいてくると話しかけてきたんだ、

「お目覚めですか、朝食の準備が出来ておりますがどうなさいますか?」

その声を聞いてようやく思い出したぜ、この声は昨日出会った女の声だ。

という事はここはあの女の家って事なのか、

しかし何でこんなところにいるんだ?

というかここはどこなんだ。

「なあ、ここどこなんだよ」

俺は彼女に聞いてみることにしたんだが、返ってきた答えは意外なものだったんだ。

どうやらここは彼女の家ではなく、宿屋の一室を借りているだけらしいのだが、

それならどうしてこんな事になっているんだろうか、不思議に思っていると彼女が答えてくれたんだよ、

何でも昨日のお礼がしたいということらしいんだが、別に気にしなくても良いと言ったんだけどな聞いてくれなくてさ。

「なら、明日、コンビ組んでくれよ」

と言うと喜んでくれたみたいだったので良かったぜ、

これで少しは恩返しができたかもな、

そう思いながら眠りについたんだが翌朝になると早速出かけようという話になってな、

「どれ受ける」

ギルドの依頼掲示板を見ていると、彼女が何かを思い出したように声を上げたのだ。

どうしたんだろうと思って尋ねてみると彼女は恥ずかしそうにしながらこう言ったんだよ、

「受けっぱなしの依頼が溜まってしまっていますので消化を手伝っていただけないでしょうか?」

そう言われたので引き受けることにしたんだが、どんな依頼なんだろうと思っていると渡された紙にはこう書かれていたんだ、

『ゴブリン退治』と書かれているのを見て思わず顔をしかめてしまったんだが、それを見た彼女は申し訳なさそうに謝ってきたんだぜ。

それでも困っている人がいる以上放っておくわけにはいかないと思い依頼を受けることにして出発したわけだが、

森の中に入ってしばらくすると魔物が現れたんだ。

しかもかなりの数で囲まれてしまっているようだったから戦うしかなかったんだが、

何とか倒すことができたもののかなり苦戦してしまったため怪我を負ってしまったんだよ。

そのせいで動けなくなってしまったところを襲われそうになった時に助けてくれたのが彼女だったんだ、

それからというもの彼女と行動を共にするようになったんだが、ある日のこと、

「私と一緒に冒険しない?」

と言われたので即答したね、

断る理由もないしなにより一緒にいたかったからさ、

そうして俺たちはパーティを組むことになったんだ。

それ以来ずっと二人で行動してきたんだが最近ちょっと悩みがあって困っているのでした。

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