第四章【14】 激励
§§§
「………………終わったか」
二体の
《カーミルラ》をふたりの
専用の機体が万全でない自分が参戦したところで、意味がないと判断してのことだった。
《
あえて参戦する理由はない。
というのは建前で、《快楽主義》なエンヴァー・クスウェルは単に同胞を
「よう。元気してるかよ、横恋慕くん?」
『…………』
エンヴァーの呼びかけに、黒髪黒眼の
〝帯〟の外に広がる虚空、《
だが、聞こえていないわけではないのだ。
ならば、こちらは一方的にまくし立てるだけだ。
「気づかなかったぜ。まさかオメーが、アリムラックに恋愛感情を抱いてたなんてなあ」
『──……』
好き勝手に話し続けるエンヴァーに対して、黒髪黒眼の
たしかに、こうして見ればわかりやすいぐらいだった。
ラルゴによる指摘を考慮してみたのなら、アルカルド・クオドフスクという
なにもかもが極端なのだ。
意識してしまったものからは、明解なほど距離を取ろうとする。
本当にどうでもいいのであれば、エンヴァーの方を見ても問題はないはずだ。
あらぬ方角を見る必要などない。
《
自分が乗り込んでは直接《 第一位真祖》と戦えなくなってしまうから、
そんなふうにして、この
自分の感情からも、アリムラック・ヴラムスタインという想い人からも。
「いや、やっぱりおかしいのはあのヤロウだな。気づけるかよ普通?」
直接的な判断材料はなかったはずだ。
アルカルド・クオドフスクがアリムラック・ヴラムスタインを想っていると判断するための情報は、皆無といっても過言ではなかった。
それをただ一度、対面しただけで見抜くあの
その点に関しては同情してしまうぐらいだった。
《
しかし、同情はしても容赦をするつもりは今のエンヴァーにはなかった。
弱点を知ってしまった以上、攻め立てずにはいられない。
その相手が同胞であるのなら、なおのことである。
「いつまで悩んでるつもりだよ。
『……』
「とっくに結論は出てるんだろうが。だったら、さっさと踏み出しやがれ」
『……』
反応はない。
自分の言葉が相手に響いているかどうかの感触すらない。
だが相手の急所を突いていると確信して、エンヴァー・クスウェルはアルカルド・クオドフスクに語り続ける。
「多少は変わったところで変わらねーよ、おれ様も、オメーだってな。結局、おれ様たちはどこまで行っても
その言葉に、毒舌を装った同胞からの激励のメッセージに、黒眼黒髪の
『──、──』
「……っは、バカやろう」
思念を通じて相手が零した弱音におかしくなって、エンヴァーはその不安を笑い飛ばす。
「心配すんな。あいつの物好きは、今に始まったことじゃねーよ」
そう言って、金髪金眼の
仲間を回収する役割は、自分以外にできそうにもなかった。
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