チャレンジャー

 二年次の《マギガンスクール》が始まるまでの期間は、ゲーム内でも訓練とエキシビジョン、さらに《マギガンレディー》との好感度アップに費やされる。


 三つの項目を、選択して《マギガンレディー》を育成していく。


「クソご主人様。これでいいのか?」

「ああ、ウルはスナイパーであると同時に動けるから、それを活かせる方がいい。ただ、魔力と体力があまりにも弱い。そこで今の期間では魔力と体力、そして俊敏をあげてくれ」

「わかったっての」


 ウルは口こそ悪いが、これまでまともな指導を受けたことがないので、素直にこちらのいう通りに訓練をしてくれる。

 いや、他のやり方を知らないといった方が正しいかもしれない。


 だが、私のいう通りに訓練してくれるなら、絶対にウルを強くしてあげたいと思える。


「それとさ、あいらに色々買ってもらって悪いな」

「彼女たちのことですか? 彼女たちも未来を担う存在ですから健やかに育ってほしいと思うだけですよ」

「ふん。おっさんかよ」


 ウルは孤児たちのことを常に気にかけていて、彼女たちのお姉さんであることは間違いない。

 なので、本孤児である未来の《マギガンレディー》たちを大切にしてあげると好感度が上がっていく。


 幼女に好かれ、ウルの好感度が上がるので一石二鳥だ。


「ルビナはどうだい?」

「体力、魔力は十分です。俊敏は、これ以上上がり難くなってきました」


 どうしても不得意なところは能力ゲージの割り振りも悪くなる。

 ダーク君の体でモーニングルーティンや美容関係をしているが、魅力:Cを超えてから魅力値が上がりにくい。

 孤児を助けたことで人望:Bまで上がってくれているので、会話は随分と私らしく話ができるようになった。


「ルビナは命中率と魔力強化を維持していこう。俊敏性は上がったらラッキーぐらいで」

「はい!」


 ルビナはマスターとして慕ってくれている雰囲気を出している。

 たまに買い物に出かけるときは荷物を持つためについてきてくれる。


「マスターは私たちよりも弱いのですから、荷物は私が持ちます」

「ありがとう。ルビナは優しいな」


 他にも孤児だった子達のお菓子なども買って帰ると喜んでもらえる。

 ルビナは何かと手伝いをしてくれるようになったので、好感度としては普通ぐらいにはなってくれている実感が持ててきた。


「ふん、どうしてあなたのいうことを聞かないといけませんの?」


 一人だけ、今までの訓練を続けるマリアは、私のいうことを聞きません。

 最初の指摘は、身に染みているようなので、俊敏だけの訓練を続けているわけではなく、魔力や体力を意識してあげているようではあるが、自分の長所を生かすことも忘れていない。


 今まで通り俊敏の訓練を続けながら、体力作りを頑張っているようだ。


 好感度に関してはまだまだ最低に近い。

 

 カイザー王太子を想っている気持ちを拭いされておらず、ダーク君のことを蔑んでいる状態では仕方ないですね。


 これに関しては魅力をなんとかBぐらいまではあげなければ、相手にもされないのでしょうね。


 マリア嬢はプライドが高い上にカイザー王太子という幻影を追いかけてしまっているので、きっかけがなければ厳しいでしょうね。


「さて、それではエキシビションを行います。前回はルビナの一撃で終わってしまいました。ですから、今回はルビナは後衛で二人に戦ってもらいます」

「マスターの指示に従います」

「へっ! やってやんよ」

「ふん、私一人で十分ですわ」


 前回よりも料金を上乗せして、ランクをあげた《マギガングランプリ》の選手にエキシビジョンを依頼した。

 あそこまで弱いとは思っていなかったので、今回は期待したい。


「やぁ君たちだね。私たちに胸を借りたいというのは?」


 普通のおじさんがやってきた。

 変の変哲もない普通の人。

 そして、ダーク君たちの倍は歳を重ねていそうな女子たち。


「はい。よろしくお願いします」

「はは、気楽にしてくれ。我々も肩慣らしのつもりだからね」

「よろしくお願いします」

「うむ。君はモニターで見ていた映像とは違って礼儀正しいね」


 どうやらダーク君のことを知っているようだ。

 それでも受けてくれたので、悪い人ではないのかもしれない。


「とにかく今日はお願いするよ」

「はい!」


 早速フィールド六人がスタンバイする。

 相手の三人は、特徴もないのでどんな戦い方をするのかわからない。


「マリア」

「わかっていますわ!」


 回避と動きの鋭い。マリアを先方として向かわせる。


「おお! 素晴らしい動きだ!」


 マリアの速度についていけていない。

 三人が三人ともマリアを追いかけようとして、見当違いのところばかりに視線を向けている。


「ウル、狙い撃て」

「いいのかよ?」

「ああ」

「わかった」


 ボクが指示を出すと三人はあっさりと射撃されて終わってしまった。


「アメージング!」


 オジサンは絶望しているが、これが《マギガングランプリ》の実力なのだ。


 十一英雄と言われるようになるクラスメイトたちが、いかにまともなレベルなのか理解できた。


 もう一度だけエキシビジョンをして、あとは訓練の方がいいかもしれないな。

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