チームプレイ

 私は自分が死ぬ前に、課金した六十万が損ではなかったと涙が出そうになります。自分の死が無駄にならなかった。そして、ダークくんを幸せにする準備はできました。


 ダーク君の元に三人の《マギガンレディー》が揃ったのです。


 ここからは彼女たちと訓練して、さらにチームプレイや強化をしていけば絶対に負けるはずがありません。


「「「絶対に嫌です」」」


 え〜!!!


「どうして私がこの二人と連携を取らなければいけませんの?」

「はっ、気に入らねぇな。クソご主人様の言うことを承諾したが、このお嬢様と協力するなんてごめんだね」

「私もこの二人と連携をとるのは無理というか嫌です。マスターの指示には従いますが、それぞれ戦った方が効率が良いと思います」


 三者三様の意見に私は頭を悩ませる。

 ダーク君の頭を禿げさせたいのでしょうか? まだ若くてフサフサで手入れをしたらサラサラヘアーになるので、大丈夫だと思いますが、悩まされて円形脱毛症とか嫌ですよ。


「わかった。しばらくはそれぞれ個人の訓練を優先しましょう。それぞれの課題はわかっていますか?」

「そんなものはありません。私はこれまで通りの訓練を続けるだけです」

「はっ! 課題も何も私は訓練をしたことがねぇよ」

「私は今まで通りマスターの指示に従います」


 見事にバラバラの答えを返してくる彼女たちに頭を抱えたくなる。

 

 マリアは、お嬢様として訓練を受けてきた実績があり。

 ウルは、孤児として訓練など受けたこともない。

 ルビナは、私の言うことを聞いて訓練をする。


 ルビナが言うことを聞いてくれるなら問題はない。

 ウルも下地がない方が、こちらの指示に従って動きやすいから、訓練を教えていけばいい。


 ただ、一番の問題はマリアだ。


 これまでの経験値があるので、ある程度戦い方ができてしまっている。

 それは私の指示を聞かない恐れがあり、また戦いの際にはこれまでの戦い方が癖として出てしまうので、弱点になりやすい。


 ですから、私はサポーターとして嫌な役目を負うしかありませんね。


「マリア嬢」

「なっ、なんですの?」

「あなたはバカですか?」

「ハァ!!! わっ、私をバカなんて!」

「実際にあなたはルビナに敗北しているのではありませんか? それにあなたがここに来たのはカイザー王太子に捨てられて、からでしょ?」


 ルビナが胸を張って嬉しそうにしている。

 ウルは何が起きているのかわからない顔をしていた。


「ウグっ!」


 涙目で奥歯を噛み締めるマリア嬢。


「私は勝ちにこだわっているんです。負けるような訓練をしたいなら他を当たってくれませんか?」

「……わっ、わかったわ。あなたは私を勝たせてくれるのでしょうね?」

「ええ。もちろんです。ただ、これからは個人では勝てません」


 今度は他の二人にも意識を向ける。


「ウル。戦った経験もないあなたは先輩である二人と戦って実践を経験してもらいます」

「やってやろうじゃねぇか! クソご主人様」

「ルビナ。個人で勝てないことはあなたが一番経験していますね」

「……私はマスターに従います」

「うん。なら、これから模擬戦を行う」


 シミュレーション場にやってきて、三人の総当たり戦をしてもらう。


 一回戦目はなんの指示も出さないで戦いを始めれば、


 マリア2勝

 ウル2敗

 ルビナ1勝1敗


「ふふん! 結局私が一番強いじゃない!」

「なら、次は敗北者側に私が作戦を伝えます。二回戦目を始めます」


 私はウルに指示を出しました。


「えっ? そんなことでいいのか?」

「はい」


 まずは、ウル対マリア戦。


 接近して攻撃するマリア。

 遠距離攻撃を狙うウル。


 だが、ウルの必中と動きの速さがあれば、遠距離だけにこだわる必要はない。


 近距離回避を持つマリアを近づかせない、中距離を支配できればウルは最強だ。


「なっ!」


 回避ができるのか微妙な距離に近づいたマリアを中距離マギガンで必中させる。


「バランスを崩したところに」


 素早さが高いものはまずは足を狙う。

 そして、遅くなったところで距離を取る。


「自分の距離で狙い撃つ!」


 能力をフルに使った命中率向上ができるウルは、近づかなければ回避能力を使えないマリアよりも強い。


「きゃー!!!」


 マリアの体力が消滅する。


「シミュレーションだからダメージはないですが、どうですか? ウル」

「ふん。クソご主人様の言う通りだった」

「はい。次はルビナが相手です」

「私は負けません」

「そうだな。相性的にはルビナの方が倒すのが大変だ」

「やってやんよ!」

「ちょっと待ちなさい! 私の敗北について説明を!」

「それは全員の戦いが終わった後」


 二回戦の結果は……。


 ルビナ2勝

 ウル1勝1敗

 マリア2敗


「ルビナは流石だな。一度目のマリア戦の敗北もちゃんと学んでいる」

「ありがとうございます。マスター」

「ちょっと! どうして私が負けるのよ!」

「それはあたしも知りたい」


 いい感じで三人の刺激ができたようだ。


 意外に三人の相性は良いかもしれない。


 戦い方の個性が違うが、それがまた面白い。


「まずは反省会からして、チーム戦の大事さを伝えます。ミーティングをしましょう」


 少しずつでもいいので、彼女たちには二年次の《マギガンスクール》が始まる前に仕上げておきたい。


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