サイド ー 真心アンドロイド少女

《sideルビナ》


 私の名前はルビナ、マスターがつけてくれた名前です。


 《アンドロイドマギガンレディー》として作られた存在です。

 《アンドロイドマギガンレディー》は人口減少に伴う戦士の不足に対応するために作られましたが、王都に迫る脅威に対して現在の《アンドロイドマギガンレディー》たちは力不足でした。

 

 その対応策として発案されたのが、《マギガンサポーター》によって、量産型としての《アンドロイドマギガンレディー》ではなく、教育した《アンドロイドマギガンレディー》を育成するAIシステムの導入です。

 私たちを唯一無二の存在として成長させてもらうという方法でした。

 

 そして、私が目を覚まして見た人物は、暗い雰囲気をした醜男です。

 醜男として判断したのは、データ上で参照した結果でした。

 さらにステータスを計測して愕然とします。


「戦闘力2。ゴミですね」


 データと照らし合わせて判断する基準値の最低ランクを叩き出しました。

 こんな《マギガンサポーター》がいるのかと思うほど、ガッカリした気持ちが否めません。


 私は強くなるために生まれてきたのに、マスターが弱くては私は強くなれません。


 ですが、アンドロイドである私は一度マスターとして定められた相手に逆らうこともできません。

 

 それからは辛い日々が続きます。

 適当な指示を出されて、命中と俊敏だけをあげろと言われました。

 大雑把な指示に辟易としてしまう。


 だけど、二週間が過ぎた頃。

 マスターは自分磨きを始め、見た目や話し方に変化が訪れた。

 

 さらに、一ヶ月が過ぎた頃には見た目は醜男から平凡な様相に変わっていきました。

 今までは髪の毛や顔などに不潔感があっただけだったようです。

 綺麗に清潔感を意識するようになったマスターは嫌な要素が大分マシになりました。

 しかも魔力値も高くなり、今まで能力が使えなかったはずなのに使えるようになっていました。

 話し方も最初よりも柔らかくなり、戦闘力が100を超えています。

 

 マスターが、《マギガンスクール》に入学して、三ヶ月が経ちランキング戦と言われる試験が行われるそうです。

 他の《マギガンレディー》と対戦することを、不安に思う私に初めてマスターから指示が来ました。


「なら、一つだけ提案がある」

「提案?」


 マスターからは命令ではなく、提案という言葉に私も歩み寄りやすかったです。


「そうだ。一発一発を打つ前に必ずルーティンを決めて狙いを定めてみろ」

「ルーティンを決めて狙いを定める?」


 まともな意見に、私はマスターの言葉を素直に聞く気になりました。


「ああ、そうだ。目を閉じるとか、相手の位置を確認するとか簡単なものでいい。それならスピードは関係ない。それに一発に込めることで集中力が増すから、命中率を上げることができる。ルビナは体力があるから練習でも集中して練習を効率も上がるだろ?」


 マスターが優しい言葉で話しかけてくれるようになって、私も話を聞く気になりました。


「わかりました。今まで一番まともな指導ですね」

「またバカにするのか?!」


 マスターが怒った顔をしてこちらを見ますが、私は内心で笑っていました。


「いいえ、いつもそのようにしていただける方がありがたいです」

「えっ?」

「それでは訓練に行って参ります。偵察をよろしくお願いします」

「あっ、ああ」


 戸惑うマスターを見て、おかしいと思います。

 それでも訓練所に入って、マスターの言う通りに決めれた流れを作って命中訓練をすると命中訓練成果が上がりました。


「これは凄いですね。今までは一発も命中しませんでしたが、十発中一発が的に当たりました」


 その日からマスターに教えていただいた訓練を続けると試験までに三発まで当たるようになりました。


 試験前日には、マスターから対戦相手であるエイミさんとの戦い方として作戦を伝えられました。


 その内容を聞いて、私は驚きと笑顔になります。


 私のマスターは本当に勝つために全てのことを考えて行動しているんだ。


 私は見る目がありませんでした。人は、データでは計れません。

 見た目も、口調も、魔力も、私のマスターはまだまだ発展途上で訓練ができる人です。


 《アンドロイドマギガンレディー》は、人である《マギガンレディー》よりも劣ると言われ続けていました。


 それを覆すように、マスターは最高ランクの《マギガンレディー》である、マリア・シリウスさんですら倒す方法を持っていたのです。


 この一つについていけば、私は最強の《アンドロイドマギガンレディー》になれるかもしれない。


 まだ、ハッキリと伝えるのは恥ずかしいですが、私はマスターのことを好意的に見るようになりました。


 最初はゴミだと言ったことを謝りたいですが、今はまだ頑張るマスターの後をついて行っていつか謝りましょう。


「ルビナ?」


 マスターが私の名前を呼んでくださいます。


 それだけで今は幸せですから。

 


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