サイド ー 悪役令嬢
《sideマリア・シリウス》
幼い頃から、わたくしには大好きな婚約者様がおりますの。
シリウス公爵家の長女として生まれた私は、双子の妹であるアンナと共に勉学に励む日々は互いに切磋琢磨して成長してきました。
それは婚約者様に相応しい素晴らしいレディーになるための日々でした。
必要なことだと思えば全く苦労になりませんの。
礼儀作法や貴族教育、何よりも婚約者であるカイザー様に恥ずかしくない女性になりたくて頑張ってきました。
そして、いよいよカイザー様が《マギガンスクール》に通い出して、私たちの出番がやってきました。
カイザー様の婚約者として、《マギガンレディー》として、お助けするのです。
本来の《マギガンレディー》たちは、王都の外。
人外種たちの魔の手から王都を守るためにいる戦士ですの。
ですが、若く戦いに赴くための力量が不足している《マギガンレディー》たちを鍛えるために開かれる《マギガングランプリ》で優勝することこそが私たちの目標になりますの。
だからこそ、幼い頃から礼儀作法の教育と同じく。
王都に降りかかる未曾有の危機に対して立ち向かうため、厳しい訓練にも耐え抜きましたの。
これはカイザー様の婚約者として、そして王族の仲間入りするものたとして先頭で戦う力を持つため。
全てはカイザー様の隣に立って戦うためです。
ですが、どこでも頑張っている人の行動を嘲り笑う最低な人間は存在するものですの。
ダーク・ネクスト。
見た目は平凡よりも醜く、初めて見た時は身だしなみもなっていない汚らしい人でしたの。
《マギガンスクールランキング》が開始される前から、少しはマシになったと思って見ておりましたの。
ですが、結局は卑怯で、意地汚い戦いばかり。
相手の体力ロストを待ったり、まともに戦い方をしない。
果ては騙し討ちで、相手の負かして。
とうとうカイザー様の前に現れましたの。
公園で私たちが英気を養っているのところへ現れましたの。
「うん? あら? あなたダーク・ネクストではなくて?」
私が呼びかけると、とても不機嫌そうにこちらを見ましたの。
なんて失礼な人なんでしょう。
せっかく、上流貴族の私が声をかけてあげたというのに。
「何か?」
「まさか、こんなところで会うなど、もしかして偵察かしら?」
「そんなわけないだろ」
「ふん、あなたのような卑怯な手段でしか、勝利しない人の言うことなど信じられませんわ!」
卑怯な手ばかりを使っているのですから、絶対に偵察ですの。
「そもそも、あなたがカイザー様に挑戦することが間違っているのです。あなたがカイザー様に勝てるはずがないでしょうに!」
カイザー様は完璧ですの!
ダーク・ネクストなんて相手になるはずがないんですの。
「やめろ! マリア」
「なっ! なんで、カイザー様が怒るんですの? 私が何かいたしましたの?」
「うるさい。黙れ」
「ヒゥ!」
いつも優しいカイザー様に怒られましたの。
これも全てダーク・ネクストのせいですの。
その後も二人で何かやりとりをしている間、私は黙って我慢しておりましたの。そして、二人の会話が終わり決勝戦へ赴く作戦会議した際に私は立候補しましたの。
「わたくしが決勝戦に出たいですわ!」
「マリア? だけど、マリアはダーク・ネクストとの相性が悪い。ここはアンナか、アーデルの方が相性がいいんだ。控えてくれないか?」
「ですが、あのような卑怯者をわたくしは倒したいのです!」
カイザー様の言葉を遮って、私は自分の主張をしました。
あの公園で恥をかかされたこと、絶対に許しませんわ。
「そう……、なら、マリアで行こうか。その代わり作戦は私がいう通りに動いてもらうよ」
「もちろんですわ!」
「うん。それと、もしも負けることがあれば、私は君への興味を失うかもしれない。それでもいいのかい?」
「負けるはずがありませんわ」
「そうか……。わかった。二人もそれでいいかい?」
「いい。お姉様に任せる」
「はい。カイザー様に従います」
二人の同意も得られて、私は決勝戦へと出場が叶いました。
ですが結果は……。
目を覚ました私は白い天井が見える医務室にいましたの。
「マリア姉様、起きた?」
「アンナですの?」
私は首を動かして声をかけてきた相手を見ましたの。
そこにはいつもながら気怠い雰囲気を出しながらも完璧になんでもできてしまう妹がいましたの。
「わたくしは負けたんですの?」
「うん。負けたね。カイザー様は、姉様に一瞥もくれないでスタジアムを去ったよ」
「そう……ですね」
「いいの? 姉様はカイザー様が好きなんでしょ?」
「これは貴族としての約束ですわ。カイザー様へ無理を通したのはわたくしです。今更撤回して欲しいとはいえませんわ」
「そう、なら家からの通達を伝えるね。シリウス公爵家を破門する。敗北者に価値などない。上流貴族は負けてはならない。負けるぐらいならば戦いを避けなければならない。貴様は死んだ。今後は家の力を借りることなく生きていけ」
アンナがいつもよりも流暢な口調で言葉を発する。
「……そうですのね」
「うん。本当は私がそうなっていたのかもしれない。ありがとう姉様。それとさようなら」
「アンナ!」
「何?」
「頑張りなさいですの」
「うん。さようなら。姉様だった人」
アンナは振り返ることなく、医務室を出て行きましたの。
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