試験 終

 カイザー王太子ルートを選んだ際に、婚約者として二人の内一人を選ぶことになる。


・高飛車ながらもカイザー王太子を最初から大好きだったマリア。

・恋愛など興味がないと雰囲気を出しながらも、次第に惹かれ合うアンナ。


 どっちもカイザールートでは魅力的なヒロインではあるが、どっちも選ぶことはできない。

 もちろん、ハーレムルートまで進行させることができれば、両方を選べるのだが、ここでの世界線では二人の内、一人を選ばなければいけないはずだ。


 そのため本来は最強であるはずのメイドではなく、二人のヒロインを《マギガンレディー》として成長させながら好感度を高める必要がある。


 だから、一年次で出てくるのはどちらかだと思っていた。


 そして、可能性が高いのはマリアであることも予想はできていた。


 彼女の方が現時点では好感度が高くて、カイザーの能力を発揮する条件が揃っている。

 アンナの能力は高くはあるが、行かんせん好感度が現時点では低い。


「予想ができるなら、対策もできる」


 近接回避型マギガンレディーマリア・シリウス。


 彼女は俊敏:Sでさらに能力で近接回避を持っていることもあり、不用意に近づいてくるので、アンナのように遠距離から命中させてくる相手よりも戦いやすい。


「舐めてもらっては困りますわ!」


 ルビナの自爆技が、届かない範囲から低出力マギガンで攻撃を仕掛けてくるが、体力だけはこちらが有利が上に防御が入らないので、近づいて行けばいい。


「フルリフレッシュ!」


 ルビナの体力が三分の一まで削られたところで、ダーク君が全回復させる。

 確かにマリア・シリウスは素晴らしい性能を持っている。


 スピードはトップクラス。

 近接回避も他のキャラを注目させて囮にするには最高のタンクだ。


 だが、それはあくまで仲間がいてこそ意味がある。


 一人ではタンクとして、性能が高いだけで攻略できないほどではない。


 その一つがマギガンに必要な魔力だ。


 動きも早い。体力もある。命中も悪くない。


 だが、どれだけ動き回っても体力を削られなければ勝利はない。

 では、その体力を削るためには魔力を使ってマギガンを撃たなければいけない。


「ハァハァハァ、どうなっていますの?!」


 魔力が減少して息を切らせている。


「あなたはペース配分を間違えただけです」

「あなたには聴いていませんわ!」


 マリアが指示を仰ぐためにカイザーを見る。

 だが、カイザーができることは限られている。

 すでに、戦いが始まった際にパーフェクトラブは発動している。


 そして、この戦いが始まる前にルビナとの戦い方も指示されているはずだ。

 それもカイザーの話を聴いていなかったのか、それとも俺とルビナを舐めているのか、戦い方が力押しのお粗末な者だ。


「マリア! 私を愛しているのならば、勝て。すでに戦い方は指示を出した。今の戦い方は私の指示通りなのか?」

「そうでしたわ! 申し訳ありません。カイザー様、相手の卑怯な手に意表をつかれましたわ」


 魔力を半分切っているマリアだが、低出力マギガンを捨てた。


「体力自慢のノロマさん。チマチマとした攻撃で倒れていればよかったのに、手間をかけさせてくれますわ」

「ルビナ!」

「はい。マスター」


 ダーク君が、ルビナに危険を知らせるために叫び声を上げます。


 マリアは中出力のマギガンに魔力を注いで、マギガンを放った。


「くっ!」


 右太ももを撃ち抜かれたルビナが膝を折る。

 体力ゲージが一撃で三分の一も減らされる。


「私を逃げるだけの女だと思ったのかしら? 一点に集中させたレーザーをあなたはどれだけ耐えられて?」


 中距離から、一定の距離を保って、数を打つのではなく一撃に魔力を込める方法に切り替えたマリアの攻撃が一方的にルビナを襲う。


「くっ!」

「ルビナ!」

「大丈夫です。マスター」

「しかし!」

「おまかせください!」

「くっ……」

「あーはっはっはっ! もう終わりですの? 先ほどまでの威勢が嘘のようですの?! さぁ地に這いつくばって許しを乞いなさい! 止めを刺されるか、それとも降参するのか決めるのです!」


 体力ゲージは三割を切り、あと二発攻撃を受ければ、ルビナが負ける。


「わっ、私は負けません」

「ふん、往生際が悪いですの! ならば、止めを指してあげますの!」


 すでにマリアの方も魔力が尽きかけているはずだ。


 ルビナの体力が続くのか、マリアの魔力が続くのか……。


「なんてね」

「えっ?!」

「フルリフレッシュ!」

「なっ!」

「誰が、フルリフレッシュが一度しか使えないって言った? 能力は魔力が続く限り使えるんだ。お前の方の王子様もずっとお前を強化するために魔力を送り続けているだろうが?! こっちだってフルリフレッシュを使う魔力を貯めてきたんだ。奥の手は最後までとっておくもんだぞ! ルビナ!」

「はい。マスター」


 先ほどまで傷つき、地面に伏していたルビナが立ち上がる。

 逆に、先ほどまで勝ち誇っていたマリアの顔が絶望に染まってカイザーを見る。


 だが、カイザーは顔を背けた。


「避けきれますか? 一斉射撃!」


 高出力マギガンによる全方位一斉射撃がマリアを襲う。


「ケチャーーーーーーーーーーーーク!!!!!!!!」


 実況の声と共にランキング戦の終わりを告げる。


「勝者! ダーク・ネクスト選手&ルビナ嬢!!!! 第一回、ランキング戦を制したのはこの二人だ!!!」


 モニターにダーク君とルビナの顔が大きく映し出される。


 残されたマリアはダメージの蓄積と疲労で意識を失い。


 カイザー王太子は、マリアに一瞥もくれないで立ち去っていった。


「マスター!」


 そう言ってダーク君にはルビナが抱きついた。

 アンドロイドとは思えない柔らかな感触が伝わってくる。


「やりましたね!」

「ああ、全てルビナのおかげだ」

「マスターの戦略のおかげです!」


 互いに喜びを分かち合って、二人はスタジアムを後にした。




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