試験 9

 カイザー王太子との決戦に向けて、ダーク君は最終調整に入ることにしました。


 目標は最初から、ランキング一位です。


 ですが、初期ステータスといってもカイザー王太子のステータスは他のキャラと一線を画しています。


 名前:カイザー・フォルクス・ド・マルセウス

 年齢:十八歳

 性別:男性

 称号:マルセウス王国王子、カリスマ

 固有能力:パーフェクトラブ

 状態:体力値:3000/3000、魔力量:3000/3000


 育成可能能力


 体力:B 10/100

 魔力:B 10/100

 魅力:S 10/100

 人望:S 30/100

 戦術:A 10/100

 運力:A 10/100


 得意訓練


 ・最高設備室内訓練

 ・マンツーマン訓練

 ・シミュレーション訓練


 これがカイザー王太子の初期ステータスです。


 初期ですよ。初期! あり得ませんよ。


 まぁプレイヤーだった時は、カイザーを選んで全員を倒す爽快感を楽しめるので、そりゃ人気ランキングも一位になれますよ。


 ですが、他のキャラになった時の絶望感が半端ないんです。


 初心者なら、誰もがカイザー王太子を主人公に選ぶのも当たり前ですよ。


 しかも、訓練できる方法も潤沢な資金があるので、最高設備に、超お高いシミュレーションの機械。もう最初はそれがデフォルトにあるものだと思っていたのが、他のキャラならどれも使えないって差ができるのは当たり前です。


 しかもルックスよし、頭よし、能力も高くて、マンツーマンレッスンなんてした日にはカイザー王太子に惚れない女性はいないぐらいです。


 そして、一応カイザー王太子にも三人のメインヒロインが存在します。


 しかもこれも初期からです。


 ズルくない? いや、他のキャラをした時に女性を口説く楽しみとかもあるので、まぁそれはそれなのかもしれませんが、三人とも揃っているので探すことなく永遠に三人を鍛え、己を高めていけば結構な確率で最強になれます。


 ただ、一つだけ問題が二年次の終わりぐらいに起きてヒロインの一人が欠けることになるので、女性を口説いておく必要もあるんです。

 

 カイザー王太子のことを考えるだけで、チートキャラであることがすぐにわかります。

 

 こんな存在に勝つ方法があるのか? もちろん、あります。

 

 先ほど話した三人のヒロインの登場はランダムなのです。

 

 三人は誰が出てきても確かに強くはあるのですが、それぞれの得意があるので、カイザー王太子に弱点はなくても《マギガンレディー》たちが成長する前なのでつけいる隙が存在するのです。

 

 そこで、ダーク君にはそれぞれの能力調査と、誰が出てくるかの予想を立てる必要があります。


「カイザー王太子との戦闘は二週間後です。今後はどのような訓練をなさいますか?」

「変わらないさ。魔力と命中だけを訓練していてくれ。この間までの続きをした方がランクも上がって効率もいいだろう」

「わかりました。マスターは、何をなさるのですか?」

「ボクも自主訓練を続けながら、偵察をするつもりだ。カイザー王太子が誰を出してくるのかよって、勝率が変わるからな」

「誰を出してくるか?」

「ああ、すでに三人の《マギガンレディー》を連れていて、相手によって変えているんだ」

「なるほど」


 ルビナは随分と柔らかくなりました。


 ケビン戦でも、ダーク君の言葉を信じているようなことを言っていましたし、心を開きつつあるのかもしれません。


 アンドロイドではありますが、ちゃんとしたヒロインなので恋愛対象です。

 二人の仲では、そこまでの気持ちは芽生えていませんが、私は彼女がダーク君を愛してくれるようになってくれれば嬉しいです。


 それだけでも私がダーク君の手助けをして、彼を幸せにしたいと思う気持ちが報われますから。


「それでは訓練に行ってきます」

「ああ、頼んだ」


 ルビナさんと別れたダークくんは、カイザー王太子の偵察に向かいました。

 真っ先に向かったのは、これまでの過去の戦いが見れる映像室です。


 ここまでの二戦をカイザー王太子が戦ったのか?


 一戦目で登場したのは、シリウス公爵家姉妹の妹の方でした。

 シリウス公爵家は双子の姉妹で、二人とも《マギガンレディー》の能力に目覚め、王太子の婚約者に幼い頃から決められていた。


 本来は一人でだけである婚約者を、この《マギガンスクール》が終わるまでに決めるというシナリオだ。これが二年次最後に行われ、婚約者ではなくなった方の元からカイザーは去っていってしまう。


 妹は万能型で、どんな場面でもどんな銃でも使うことができるようだ。

 一回戦では低出力マギガンと、遠距離高出力マギガンを携えて、スナイパーとして相手を遠距離から撃ち抜いた。


「さすがは命中:Aの能力はやばいな」


 高出力マギガンを遠距離から、正確に当てられてしまうと対抗する手段がほとんどない。なので、シリウス妹が出てくるとかなり分が悪い。


「二回戦は、姉の方か」


 姉の方は近接戦闘タイプで、低出力と中出力を使い分けて、敵を撹乱して撃ち倒した。


 エイミの上位互換のような能力で、俊敏:A、体力:Bは、近距離でもマギガンを避けながら相手を一方的に倒してしまう。


 妹が遠距離から、姉が近距離から、二人の姉妹の連携はかなり強力で、倒すのは至難の技になる。


 最後の三人目は、カイザー王太子の専属メイドで黒髪メガネの女性だが、彼女の戦うシーンはなかった。


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