試験 8

 接近するキャロラインを迎え撃つルビナ。


 中出力の魔導銃マギガンタイプ、マグナムリボルバー。

 六発の弾丸を装填できるマギガンで、一発の装填弾を含めた七発の中出力の魔法を放つことができる。

 命中率は下がるが、接近して使うことで命中率が上がってルビナのダメージが大きくなる。


「HAYHAY、行きますよ!」


 二丁のマグナムリボルバーを取り出したキャロライン、彼女のとっておきだ。

 長期戦を得意としているくせに、長期戦ではなく短期決戦で決着をつけにきた。


 こちらの意表をついてきたつもりなのだろう。


 近接中出力マグナムリボルバーを、ルビナに向けて構える。


「ルビナ」

「マスターの命令がありました。今より能力を全開放します」


 ルビナは低出力マギガンから、高出力マギガンに持ち変える。


「遅いのです!」

「いいえ、遅くはありません」


 マグナムリボルバーは威力が高くなる分、弾丸は速度よりも出力をメインにしている。同じく高出力マギガンは発射までに時間が遅くなる。


 ルビナの一斉射撃は能力であり、高出力マギガンの発射を早めてくれる。

 キャロラインの能力スパンコールは、注目を集めることで能力を向上させる。

 つまり、ここでは互いに能力が一番高まるタイミングということになる。

 互いの能力がぶつかりあう真っ向勝負。

 これでいい。


「キャロライン! カモーン!」

「OKっ! 行くわよ!」


 打ち出される二丁のマグナムリボルバーが強力な出力を放出する。

 それから遅れてルビナの高出力一斉射撃が発射される。

 魔力の消費はルビナの方が激しい。

 だが、そのタイミングで放たれる手数は圧倒的にルビナが多い。


「キャロラインを舐めるなよ!」


 マグナムリボルバーから放たれた二発の弾丸はルビナの両足を打ち抜き、ルビナから放たれた高出力マギガンは、キャロラインの全身を捉える。

 それでもキャロラインは、マグナムリボルバーを打ち続けた。


 その都度、ルビナに全て命中した。


 互いに弾丸を打ち尽くして、満身創痍で立っているのもやっとな状態に陥る。

 体力ゲージは互いに瀕死状態。


「キャロライン! 今のお前は輝いているぜ」

「OK、ダーリン! みんなの注目は私のものよ!」


 ボロボロになりながらも美しく人々の注目を集めるキャロラインは戦士であり、強い《マギガンレディー》に間違いない。


 だが、相手がダーク君だったことが敗因ですね。


「フルリフレッシュ」


 ダーク君の能力フルリフレッシュは、消費する魔力×5倍の《マギガンレディー》が消費した体力を回復することができる。


「ふぅ、ありがとうございます。マスター」

「さぁ、長期戦を始めよう。君たちがボクらに付き合えるならね」


 ダーク君の発言に、ケイトは驚き、キャロラインは獰猛な顔を見せる。


「そっ、そんなの卑怯だ!!!」

「能力を使って、何が卑怯なんだ?」

「いいわ! 最高よ。短期で決めるつもりだったけど、ここまでダメージを受けてハイになっているからやりましょうよ!」


 マグナムリボルバーを弾を詰め直すキャロライン。

 そんな無防備なキャロラインを、低出力マギガンに持ち替えたルビナが撃った。


「なっ! ちょっ!」

「正々堂々戦う意味がわかりません。どうして、あなたに合わせる必要があるんですか? マスターは言いました。勝つためには手段を選んではいけないと、私もそう思います。あなたたちはテンションに任せて攻撃をしているだけです。勝つ為の準備を怠った」


 ルビナには珍しく感情的な物言いをして、キャロラインの体力ゲージを消滅させる。


「ノー!」


「おおっと、これはまたしても大番狂せだ。ダーク・ネクストの能力を利用したカウンター攻撃による防御を捨てた《マギガンレディー》への配慮にかける作戦だと思いますが、勝利は勝利!!! 勝者はダーク・ネクスト&ルビナコンビだ!!! これにより、ダーク選手は、ランキングが三位に急浮上するぞ。最下位からスタートしたダーク選手の活躍にこれからは注目を集めるかもしれないな」


 実況の言葉を聞きながら、二人はスタジアムを後にしようとした。


「この卑怯者が! お前は《マギガンレディー》をなんだと思っているんだ! そんな捨て身の作戦が許されると思っているのか?!」

「お前だって、彼女を突撃させていたじゃないか。勝つためには相手を傷つけるんだ卑怯も何もない。お前がボクに負け犬の遠吠えをしている前に、彼女を医務室に連れて行ってあげたらどうだ? いくら体力を魔法の防御壁が分散してくれていても体力がなくなれば、彼女の傷は彼女自身に反映する」

「くっ!」


 ダーク君の指摘によって、ケインは気を失った彼女を抱き上げて退出していく。


「お優しいのですね」

「そうか?」


 ルビナは嬉しそうに、そして私はダークのそっけなくも相手を気遣えるようになった成長にちょっとだけ感動してしまいます。


 スタジアムを退出する廊下には、カイザー王太子が通り過ぎていく。

 別に何も語ることはない。

 ただ、ランキング一位は、ちらりとダークを一瞥してスタジアムへと向かっていった。


「次はあいつだな」


 ダーク君の発言に、ルビナも覚悟を決めてカイザー王太子の後ろ姿を見た。




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