試験 7

 一週間で、ダーク君が行ったことは、ルビナの魔力強化へのアドバイスとこれまでと同じく自己強化。そして、キャロラインとケインの調査だ。


 キャロラインはモデルとして華々しい舞台に立っている。


 ファッションの最前線で生きる彼女は、ケインの幼馴染であり、二人が出会ったのは孤児院だった。


 ケビンは元々マギガンサポーターをしている父と《マギガンレディー》の母を持つ少年だった。王都を襲った大戦によって両親は命を落としてしまったのだ。


 孤児院に入ったケビンはそこで、キャロラインと出会った。

 一目惚れして、彼女を幼い頃から口説き、成長するにつれて互いに能力が開花した。

 キャロラインは、己の美貌を生かしてモデル業をしながら、ジムなので体力作りに勤しみ。それを支えていたのがケインだ。


 ケインが《マギガンスクール》に入る前日まで、二人はトレーニングをしていた。

 このルートでは最初からメインヒロインがいる状態で、ゲームがスタートする。

 心強いと感じるかもしれないが、キャロラインは重度の嫉妬魔なので、二人目三人目を仲間にする必要がある《マギガンスクール》では、他のヒロインを落とそうとすると、何かとキャロラインが邪魔をしてくる。


「ケイン! 浮気よ!」

「ちょっと待ってくれキャロライン! 《マギガンスクール》の試験で必要なんだ!」


 と言った会話が繰り広げられることになる。

 コメディー要素が多いルートになるが、その都度、キャロラインとの連携は強力で、長年のパートナーとして鍛えている分、能力値も高い。


「だが、ケインは重度の女好きなんだ」

「女好き? ゲスですね」

「まっ、まぁそうだな」


 ゴミの次はゲス! 本当に真心アンドロイドなのでしょうか?


「とにかく、ボクはこの一週間のケインの行動と、キャロラインの行動を監視して二人の弱点を探るから、ルビナは魔法強化の訓練を頼む」

「命中率ではないのですか?」

「ああ、エイミほどの速さはないから、当てることは難しくない。どうやって長期戦になった際に体力を削るのかが焦点になるんだ」

「体力の削り合いですか?」

「そして、それ以外の要因を作っておかなければ、こちらに勝ち目はない」

「わかりました。マスターに従います」

「ああ、頼む」


 ルビナに作戦の一部を話し、私はダークくんにいつものメニューを伝えていきます。


 一週間の朝晩は美容に当て、授業中は魔力強化。


 放課後は、ケインとキャロルの素行調査を、専用の追跡機を使って行っていく。 

 一応無粋なことはしたくないので、遠隔ミニミニドローンで撮影する。

 着替えやトイレ、お風呂などセクシーショット以外は全て撮影した。

 これがボクにとっての一週間の成果だ。


「準備はいいか?」

「ランクは上がりませんでしたが、十分です」

「ああ、次の試験の時には上がるさ」


 ダーク君もルビナさんとしっかりと話すようになり、F→Eへ人望を成長していた。

これは互いに尊重した会話をするようになった効果ですね。


 ルビナさんの好感度が普通ぐらいまでは上がってくれているのが窺い知れます。


「さぁ、行こうか」

「はい!」


 スタジアムを進んでいけば、フィールドは荒野の演出がされており、カウボーイハットを被ったキャロラインとケインが待ち構えていた。


「よく逃げずにきたじゃねぇか!」

「逃げる必要がないからな」

「ふん、今回はどんな卑怯な手を使うのか知らないが、どんな手を使おうと俺たちベストパートナーを倒せると思わないことだ」


 よく回る口だ。


「御託はいいさ。始めよう」

「いいぜ」


 互いにフィールドを出てサポーターの位置へ向かう。

 代わりに、ルビナとキャロラインがフィールドに進む。


「さて、この一週間でランキングが大きく変動したぞ! 勝利した者は上へ、敗北者は下位へと落ちた。そして、今回の二週目では勝者同士の戦いを見られるぞ。ランキング最下位から六位へ駆け上がった。ダーク・ネクスト! 対するは、ランキング五位ケイン・バンデット!」


 実況の声が鳴り響いて、スタジアムが戦闘準備に入る。


「前回は、ダーク選手は一撃必殺の逆転劇を決めて勝利を収めました。ですが、今回のキャロライン嬢は一撃で倒せるほど甘くはない。体力は一級品。見た目の魅力も一級品。《マギガンレディー》としての実力はトップクラスであることは証明されています!」


 実況の言う通り、全ての能力がルビナよりも高い。

 対抗できるのは体力だけだ。


「HAYHAY! かかってきなさい!」

「それでは失礼します」

「それでは開始だ!」


 ――――プオ〜!


 《マギガンレディー》が扱う魔導銃マギガンにはいくつか種類が存在する。

 魔法を発動するための出力になっているので、所謂魔法の杖と言うことだが、出力によって威力が異なり、重量や使い道が変わってくる。


「ヒュー、軽いですね」


 そして、試験中は二丁までしか所持することは許されていない。

 前回のルビナは高出力マギガンを一丁だけで、もっとも重い魔導銃マギガンを所持していた。


 そして、前回の対戦者であるエイミは、もっとも軽い銃を二丁を使ってルビナの体力を削りにきた。


 だが、今回のキャロラインは……。


「マグナムリボルバー、ぶっ放すです!」


 中出力のマギガンで、一撃に威力を込めるタイプだ。

 命中精度は落ちるのだが、攻撃力を上げてくれる。

 ルビナには避けさせながら、低出力マギガンを所持させて命中精度を高めて削っている。


「セコイ攻撃しかできない雑魚が!」

「好きに言え。これも戦略だ」


 ケインの叫びに、ダークくんは冷静に返します。

 ですが、じれたのはケインだけでなくキャロラインも、距離を詰めようとしてきます。

 荒野のフィールドは、障害物になり得るのは岩ぐらいで、距離を詰めれば攻撃命中率はグッと上昇する。


「行くです!」

「きなさい!」


 美女たちが肉薄する。

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