試験 6


 ダーク君とルビナは、自分たちの寮に戻るまでじっと何も発することなく、互いに目も合わせませんでした。

 

 外ではダーク君は悪者。

 

 貧乏騎士イサークは、悪者の罠にハマって可哀想な美少年。

 そんな扱いを受けていることを二人は理解していたからです。

 自室に入って扉を閉めました。


「よっしゃーーーーー!!!!!! ルビナ! よくやった! ありがとう!!!」


 ダーク君にしては珍しく気持ちを爆発させて喜んだ。

 それは、これまでの二ヶ月の訓練が実を結んだ瞬間だった。


「そんなに喜ぶとは、相変わらずマスターは……、まぁ今日ぐらいは許してあげます。戦闘力1000になった甲斐がありましたね」


 出会った頃は戦闘能力2とか言われてゴミ扱いされたが、やっと人並みになってマスターと呼んでくれるルビナは多少なりとも彼のことを認めてくれているのでしょう。


「ですが、これは始まりです。マスターは誰にも負けるつもりはないのでしょ?」

「もちろんだ。ボクは《マギガンスクール》を無敗で卒業する」

「一年次では、《マギガンレディー》は一人でも大丈夫です。ですが、二年次になったなら、《マギガンレディー》は三人います。心当たりはあるのですか? マスターは全くモテません」

「ぐっ!」


 そうなんですよね。

 ダーク君の人望はF、魅力はEになりました。

 ですが、嫌われ者の称号を持っている以上は普通の出会い方をしても女性の方がダークくんを選んではくれません。


「それはなんとかする。とにかく次の戦いも頼むぞ」

「もちろんです。ただ、向こうも体力は私と同じA評価だと認識できます。体力では同格。動きや命中精度は彼方が上です。つまりは私の上位互換にあたり《マギガンレディー》ということになります。どういった作戦を取るつもりですか?」


 試験中は三人までランキング戦を行うことができる。

 イサークを倒したことで、白星スタートできたことはダーク君にとって喜ばしいことです。


 ですが、次の戦いは一週間後で、訓練を積む時間はありません。

 そして、ダーク君たちが次に戦う相手は、ランキング成績七位。

 イサーク・マルコよりも遥かに格上であることは間違いありません。


 初期ステータス


 名前:ケイン・バンデット

 年齢:十八歳

 性別:男性

 称号:ハンター、カウボーイ

 固有能力:ランナーズハイ

 状態:体力値:5000/5000、魔力量:1000/1000


 育成可能能力


 体力:A 1/100

 魔力:D 1/100

 魅力:B 1/100

 人望:D 1/100

 戦術:D 1/100

 運力:C 1/100


 全能値が、イサークやダーク君に比べて高く、一番低くてもD判定です。

 体力は《マギガンレディー》たちと比べても遜色がないほどにあり、長期戦を得意としている。


 さらに、ランナーズハイという能力は、戦闘が長引けば長引くほどに脳内麻薬が放出されて、《マギガンレディー》の力を強めていく。


「長期戦を得意とする奴に、長期戦を仕掛ける」

「大丈夫ですか? 明らかに体力はあちらが上です。命中精度も」


 初期ステータス


 名前:キャロライン

 年齢:十八歳

 性別:女性

 称号:ダイナマイトバディー、モデル

 能力:スパンコール

 状態:体力値5000/5000、魔力量500/500


 育成可能能力


 体力:A 1/100

 魔力:C 1/100

 俊敏:D 1/100

 命中:C 1/100

 知能:D 1/100

 魅力:A 1/100


 ケインの相方を務める《マギガンレディー》、キャロラインは、タイプ的にパワータイプと呼ばれる体力と魔力が高いタイプだ。


 さらに、観客からの注目を集めることで能力を向上させるスパンコールと言われるパッシブスキルだ。


 エイミのように体力を減少させることはなく、むしろ体力が尽きることなく攻め立ててくる。


 体力も同じ、魔力も同格。


 だけど、勝てないかと聞かれれば、そうでもない。


「どんな相手にも勝ちへの道筋は用意されている。ルビナ。ボクの作戦に乗るか?」

「もちろんです。私はマスターの《アンドロイドマギガンレディー》ですから」

「なら大丈夫だ。ボクの作戦があれば絶対に勝てる」

「マスター不思議ですね」

「うん? 何が?」

「どうして、ここまで知識を持ったの。効率のよい訓練方法を持っているのに、今まで戦闘力がゴミだったのでしょうか?」


 それは私がダーク君に指示を出すようになったからです。


 これまでのダーク君は戦略に極振りした生活をしていたので、S評価ですが、これまでのダーク君はゴミ部屋に住んで自分のことも他人のことも顧みない子だったからです。


「うるさい。勝つために必要なかったからだ」

「勝つために? 今は必要ということですか?」

「そうだ。お前はボクの戦闘力をゴミといった」

「はい。私の認識は間違っていません」

「ああ、俺もそう思う。魔力をあげて、能力を使った方が勝てる。コミュニケーションをとれた方が作戦が伝えやすい。魅力を上げることで人間関係のトラブルが減った。ボクは全てを捨てて戦略だけを強くしたけど、それだけじゃ勝てない。それをルビナが教えてくれた」


 ダーク君。あなたはずっと普通に生きたかったのかもしれませんね。

 だけど、自分の性格と、あなたと共に歩んでくれる人がいなかった。


「ありがとう」


 ダーク君が改めてルビナにお礼を伝えて手を差し出しました。

 最初なら気持ち悪いから触られたくないとルビナも言っていいたでしょう。


「よろしくお願いします。マスター、まだまだ我々は未熟ですが、あなたと共に成長したいと思います」

「ああ、ありがとう」


 これで本当にヒロインとして、スタートできるんですね。 

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