試験 4
戦闘スタイルへと移行した姿はまさしく近未来を思わせるバトルコスチュームを身に纏うことになる。
ピッタリとした体に張り付いたようなバトルコスチュームは、十二人のカラーに合わせて、カイザーならゴールド。セバスチャンならシルバーのように用意されている。
イサークのコスチュームは灰色と言えばいいのか、グレーといえばいいのか、とにかく地味だ。そして、ダークくんのイメージは黒。
どっちもパッとしない二組のコスチュームに注目度も低い。
最下位争いをする者たちの試合をわざわざ見にくる物好きはいないと思っていたが、意外な人物が客席に腰掛けていた。
カイザー王太子だ。
ダーク君に負けたことが余程悔しいのでしょうね。
警戒しているようです。
《マギガンスクール》のランキング戦は娯楽として提供されている。
王都中で放送されていて、十二名の誰が二年次を終えた時点で優勝するのかなども予想される。
その中でカイザー王太子は不動の一位なのは言うまでもない。
またダーク君がカイザーに勝利したのは、あくまでシミュレーションゲームであって、本番ではないため既存の記録には残されていない。
つまりは、見ている者たちも他に戦う十名の前哨戦。
もしくは、見るまでもない一戦だと思われている。
だが、それでいい。
注目など集めてもいいことなどないのだから。
カイザー以外にも、エイミ親衛隊を名乗っていた二人組と同じ姿を人たちが数名観客席に陣取っている。
「君は誰にも選ばれなかったんだね。《アンドロイドマギガンレディー》を連れてくるなんて哀れだな」
ルビナを見たイサークの言葉に、私は反論してやりたい気持ちになりました。
ですが、ダーク君は何も言わずにイサークを見ます。
「イサーク君、ダメだよ。そういう言い方をしちゃ! えっと、ダーク君って言うんだよね。私はエイミって言います。よろしくお願いします」
エイミは健気なバイト少女で性格もとてもいい。
イサークが困っているからという理由で、《マギガンレディー》になることを受けた。
「ああ、よろしく頼む。バグドルドでは世話になっている」
「えっ? お客様なんだ。ふふ、よろしくお願いします」
「エイミ先輩に馴れ馴れしくするな! エイミ先輩は僕のパートナーだぞ」
「そんなことはコスチュームを見れば誰でもわかることだろ? いちいち突っかかってくるな。童貞なのがバレるぞ」
「なっ!」
ダーク君、あなたも童貞ですよ。
「ゆっ、許さないからな。エイミさんの前で恥をかかせやがって! すぐに終わらせてお前にも恥をかかせてやる」
「いいだろう。やれるものならやってみろ」
互いに距離を取り、バトルスタジアム内にルビナとエイミだけが入っていく。
バトルスタジアム内は、科学と魔法によって防護障壁が作られ、外部に魔導銃【マギガン】の力が被害を出さないようになっている。
また、互いが死なないように体力ゲージが表示されてカウントされるようになっている。
ルビナの体力ゲージの三分の一ほどしかエイミの体力ゲージは表示されない。
「なっ! そのゲージは正常なのか?」
「ああ、ルビナの体力はA判定だからな」
「くっ! エイミさんだって俊敏はA判定だ」
どうやらスピードに極振りしている《マギガンレディー》としての認識は間違っていないようだ。
「ならば、体力か速さ。どちらが有利なのかという話だな」
「ふん。体力なんていくらあっても捉えられなければ、何の意味もない。スピードの方が強いに決まっている」
イサークの言葉になど左右されないダーク君は、スタジアム内をみる。
スタジアム内では、ステージが廃ビルが立ち並ぶ街の中へと景色が様変わりしていた。どうやら今回のフィールドも決まったようだ。
互いのサポーター能力は、サポーター自身の魔力が尽きるまでは使っても構わない。自分の魔力が尽きれば、使えなくなる。
そのためサポーター自身を鍛える意味があるというものだ。
「さて、ここからは私が実況をさせていただきます。毎年二年に一度様々な年代が集まり十二人のサポーターが発掘される《マギガンスクールランキング戦》今年もいよいよ始まろうとしている。その第一戦を飾るのは、《マギガンスクールランキング》第十二位のダーク・ネクスト。そして第十一位のイサーク・マルコの二人だ」
試合の際は、実況が入る。
一年次の時は実況だけだが、注目カードや二年次になると解説役なども増えるのでお祭り騒ぎとして盛り上がる。
毎年の第一試合だからという理由で注目をしている人間や、試合を楽しみにしている者もいるので、一応の実況ということになる。
「資料によると、ダーク・ネクスト君は素行が悪く、他の生徒との対立が絶えないとか。不良はいけませんね。対するイサーク君は騎士の家系に生まれながら大家族のお兄ちゃん。頑張り屋さんでバイトをしながら《マギガンスクール》に通っています。健気ですね。私実況ですが、もう応援する相手を決めてしまったかもしれません」
おいおい、実況が片方に気持ちを寄せてどうするんですか。
「今年はカイザー様がいるので、一位は決まったような者ですが、健気な青年は応援したくなります! 頑張れイサーク! 負けるなイサーク!」
完全にこちらが悪者扱いですね。
観客やお茶の間で見ている人たちも実況と同じようにダーク君を悪く思うでしょう。
アウェイとして、ここでもハードモードを余儀なくされるわけですね。
「それでは、《マギガンスクールランキング戦》第一試合を開始します」
実況の声によって開始のブザーが鳴り響く。
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