孤児院

 私はダーク君以外のマギガンサポーターを攻略しました。


 そして、カイザー王太子に至っては、裏ルートとしてマギガンレディーを攻略するハーレムルートが存在する。


 そのハーレムルートに登場するウルという少女の記憶がある。


 ウルはダーク君と同じく両親を失っており、孤児院で育てられておりカイザーとして出会うのは、《マギガンスクール》を卒業した後だ。


 それもウルはスラム街の女ボスとして育っており、カイザーが王になる前にスラム街を一掃するというイベントに出会う女ボスなのだ。


「チッ、見てんじゃねぇよ」


 猫獣人であるウルは自分のセンスだけで、《マギガンレディー》の能力を磨いて、裏ルートからマギガンを入手してスラム街で孤児達の世話をしながら生きていた。


 そこへ、スラム街を一掃するカイザーが現れて恋に落ちるというエピソードがある。その時は美人猫獣人と、美少年王子のラブロマンスとして美しくはあったが、現在の平凡ダーク君と、美人ボスになる前のウルとの出会いがありえたとは、これも私の課金アイテムの影響でしょうか?


 ですが、このままいうことを聞いてくれないと問題があります。


「まずは、メイドとして契約した仕事はしてくれるんでしょうか?」

「あぁ? なんで私が仕事をしないといけないんだよ! テメェでしろよ」


 毒舌というよりも不良少女ですね。


 ルビナの時も真心アンドロイドではなく、ゴミ扱いしてくる辛辣アンドロイドでした。


 どうやら、ある一定の好感度まではダーク君が頑張らなくては、本来の属性にたどり着けないようです。


「わかりました。とりあえずは、食事をとってください。あなたを解雇するつもりはありません。ルビナ、彼女と仲良くしてあげてください」

「マスター」

「大丈夫です」


 両親が亡くなってから、ダーク君は塞ぎ込んだままです。

 できれば、《マギガンスクール》が始まるまでに、精神を取り戻してほしいと思っています。


 現状、ウルに何を言っても難しいと思います。


 ですから、私の知識を活かして行動することにしましょう。


 ウルがなぜスラム街の女ボスにならなければいけなかったのか? その現状として、孤児達の生活にあります。

 彼女はあのような言い方をされる方ですが、心はとても優しくて、孤児達の生活を改善するために強くならなければいけなかったのです。


「さて、ここですか?」


 私はウルがいたという孤児院にやってきました。


 王都に孤児達を救済するシステムは確かに存在します。

 ですが、それは平民区や貴族区にある孤児院であって、スラム街にある孤児院にまで救済システムが行き届いているかと言えばそんなことはない。


 結局、貴族の位も侵略者に対して功績を出した者に与えられる称号のようなもので、土地を所有したりするわけではない。


 男爵位をもらえれば、国から給与が発生するようになり、生活の安定化が見込めるのだ。


 だが、位を失った子供や元々侵略者に対する戦う力を持たない弱者は次第に落ちぶれスラムに落ちていく。

 

「失礼します」


 私が孤児院の中に入ると、凄い匂いがしています。

 掃除もされていない上にお風呂にも入っていないのかもしれません。

 

 扉を開くと痩せほそった獣人の女性が床に寝転んでいます。


 死んでいるのかと思いましたが、どうやら息があるようで無事ですね。


 中へ入っていくと数名の子供たちが玄関に倒れている獣人と同じように床に寝転んでいます。


「えっと、大人は限界の人だけですね」


 仕方ないので、私はバケットからパンを出して、限界に倒れていた獣人さんの鼻へ当てました。


「うん? んんん!!! これは!」


 目を開いたガリガリの女性は差し出されたパンへ牙を立てます。

 凄い勢いでパンを食べ尽くしてしまいました。


「牛乳もありますよ」


 私は瓶に入った牛乳を差し出してあげると一気に飲み干して、物悲しい顔をした獣人の女性の焦点が定まりました。


「はっ! 私は一体なにを!」

「私が差し出したパンを食べてました」

「あっ、あなたが私を救ってくださったのですか?! 命の恩人です!」

「まぁ他の孤児たちも助けたいので、手伝って抱けますか?」

「えっ?! 救っていただけるのですか?」

「はい。そのためにきましたので」


 ウルがどうして我家の前で倒れていたのかと、私はストーリーの設定でしか知りませんでしたが、過去に孤児院で餓死者を出すというトラウマを持つからです。


 つまり、今回のウルは餓死者を出した当初のウルであり、助けを求めに行ったが誰も助けてくれなくて強く生きていくのを決意をするという話が出来上がるわけです。

 

 ですが、せっかく彼女がやってきて孤児を助ける方法を私が知っているなら、助けてあげようと思います。


 パンのような固形物は、まだ元気な人にあげて、本当に弱っている子には暖かいスープと消化の良いオートミールを食べさせていきます。


「何から何までありがとうございました!!!」

「「「「「「ありがとうございました!!!!!」」」」」」


 孤児を運営していたのは熊の獣人女性さんはベポさん。

 そして、六人の子供たちが孤児として養われていた。


「いえいえ、全然いいですよ。それに実はご相談がありまして」

「ご相談?」


 私はベポさんにあるお願いをすることにしました。

 


 

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