嫌われ者

《マギガンスクール》のダーク・ネクストを選択してゲームを始めると。


 地面に倒れ、全身をボコボコにされたシーンから始まります。


 ダーク君を見下ろして睨みつけるカイザー王太子。

 そして、メインストーリーで十一人の英雄と言われるクラスメイトたち。

 

 本来は存在していた十二番目の英雄、ダーク・ネクスト。


 だけど、彼の始まりは全員から嫌われる魅力Gの少年でした。


 どうしてこんなにも睨まれているのか? 

 それはカイザールートをやっている者ならば誰でも知っていることです。


 ゲームの開始して一ヶ月が経った頃。シミュレーションプレイとして、模擬戦を行うのです。

 それぞれが《マギガンサポーター》として、《マギガンレディー》に指示を出して戦うのです。

 その戦いにおいて、カイザールートでは、どうやってもダーク君に勝てません。


 もうあれです。最初はバグかと思うほどにどうやっても勝てないシステムになっています。


 その手段が卑怯な手なので、敗北感よりも苛立ちの方が強くなります。

 やられたときは本当に腹が立ちましたが、カイザー王太子に対して、ダーク君が勝利するには、その方法しかないのだと今なら理解できます。


 能力が高くライバルキャラのイケメン。

 敵にするとここまで嫌な奴はいません。

 チートキャラであるカイザーを倒すためには卑怯な手段しかないのです。

 ただ、イケメンでもないダーク君がこれをすると、他のキャラからのヘイトを集めてしまうんです。

 

 ダーク君になって初めてわかるのは、陰キャラが故に話すのが苦手で、少しでも好印象を持ってもらうために笑顔を作ろうとして、笑った顔が死神のように不気味で気持ち悪いということです。


 会話も、内心と発してしまう言葉に差があり。


「ボクは能力があり」は、みんなに劣るけど頑張っているんだ。認めてよ。

「ボクは天才なんだ」は、努力だけはしているけど、みんなみたいに天才になれない。


 というダーク君特有の思いがあります。


 可哀想です!!! まるで自分のことのように可哀想なのです!!!


 しかも、その見た目と態度が災いして、攻略対象女性四十名のうち三十九名から嫌われています。


 最後の一人は、ダークくんの専用ヒロインで、無感情なアンドロイド少女です。

 両親が、ダーク君は誰とも仲良くなれないだろうと用意してくれたものです。


 両親大正解です。 


 スタートから、全員に嫌われているとか、ダーク・ネクストルートはハードモードすぎませんか? おまけに指示通りにしか動かないアンドロイド少女だけが味方です。

 

 本来は、《マギガンスクール》中に三人の女性を口説かなければいけません。

 ですが、アンドロイド少女一人が確保できても、あと二人が全く見向きもしてくれません。 

 チーム戦に出ることすらできません。


 つまり、ゲームオーバーです。


 こんなものどうやって攻略しろというのですか?


 私はレビューと攻略サイトを開けて愕然としました。


「えっ? ダークはバグ?」


 レビューには誰もダーク君を攻略できていないのです。ですから、バグ扱いされています。

 攻略サイトでも、ダーク君は攻略不可と記されています。公式サイトにとんでも、ダーク君の攻略に関しては何も書かれていません。

 

 これは酷すぎませんか? 私が、彼を救わねばならないのです。


 課金しましょう!


 課金とは、ゲームを攻略しやすくするためのアイテムを購入します。

 お金を生み出す魔法のカードによって手に入れるのです。


「なになに? 買える物はっと」


 私はボーナスが入ったばかりなので、最悪ボーナスを全て注ぎ込んでもいいと思うほどにダーク君にのめり込んでいました。


 ダーク・ネクスト専用と記された課金アイテムが異常に高いです!


「おかしいでしょ! ダウンロードソフトが八千円ぐらいなんですよ!」


 拡張パック的な物なのでしょうが、それにしても酷すぎる値段設定です。

 

 ダーク専用裏ルート美少女パック


 追加パックアンドロイド真心美少女パート     五万。

 

 追加パック毒舌従順猫耳メイド美少女パート    十万。

 

 限定追加パック元王太子の無知な悪役令嬢美少女パート 三十万。


 マル秘拡張アイテムパック


 梅セット 三万(食料確保)。

 竹セット 五万(住居+施設確保)。

 松セット 十万(魔法銃+スキル+マル秘)


 全てを購入するのに六十三万の出費です。

 ボーナス三回分です!

 それでも私は、ダーク君に幸せになってほしいのです。


「えいや!」


 購入ボタンを押した瞬間、私はめまいを覚えました。

 興奮して、お金を使って、一気に気持ちが昂ったせいでしょうか?あっ、そういえばお盆に入ってから一歩も外に出ないで、食事も取っていません。一週間ほど寝てもいませんね。


 これ、ヤバいやつですね。


 そうして、私は意識を失い。


 一人暮らしの家では誰も助けてくれないまま、最期を迎えました


 せめて、ダーク君の幸せな姿を見たかった。


 私は無念な気持ちを残したまま亡くなってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


作者のイコです。


他の作品もあるので、この作品は、明日から一話投稿でやっていきます(^◇^;)

まぁ、のんびり読んでいただけると嬉しいです(๑>◡<๑)

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