試験 1

 ルビナを起動させて一ヶ月が経とうとしています。

 

 魅力アップ、魔力アップを続けて訓練を行ったことで成果が出ました。


 魔力領 100/300


 魔力:E 68/100

 魅力:F 54/100


 やっと他のキャラの初期値ぐらいには経験を積むことができました。


 目の下にあったクマは一ヶ月かけて薄くなり、ボサボサで伸び放題だった髪は毎日研いでいるのでサラサラヘアーになりました。

 切れよと言われるかもしれませんが、その時間があったら魔力強化をしたいと思って切りに行っていません。


 ルビナは、命中と俊敏を高める訓練をしているが相変わらず伸び悩んでいます。


 俊敏:F 54/100

 命中:E 88/100


 一ヶ月かけて一つもランクが上がっていません。

 

 低ランクの間は、経験値反映も多くなるのに、これでは試験が難しくなります。


「戦闘力20、ちょっとマシなゴミ?」

「ゴミは変わらないのかよ! とにかくそろそろ入学して三ヶ月になるところで、全員がパートナーである《マギガンレディー》と協力して挑む試験があるんだ。お前にも出てもらうからな」


 ダーク君はもう少し言い方を考えた方がいいですね。


 次の一ヶ月は魅力アップを続けながら、魔力ではなく人望を回復させる方がいいかもしれません。

 そうしなければ、いつまで経っても人から嫌われてしまいます。


 それよりも試験ですが、これは《マギガンスクール》で、三ヶ月に一度行われるランキング戦です。

 十二名にはランキングがつけられていて、成績が最下位であるダーク君は、この戦いに勝たなければ評価すらもらえません。

 

 普通ならば、授業やテストの成績が考慮されるのですが、先生にすら嫌われているので、一切評価されないのがダークルートです。

 

《マギガンサポーター》には、卒業後に与えられるランクが存在しています。

 

 一番上のランクを最強位として。


 ・最強位。

 ・最上位。

 ・上位。

 ・中位。

 ・下位。

 ・最下位。


 これによって、《マギガングランプリ》の参加ランクが決まってくるのです。

 

 最下位からスタートしてしまうと、ランクを上げることが大変になるので、できれば中位、もしくは上位から始められると《マギガンクイーン》を決める最強位に参加できるようになるのです。


「どうせ負けるのですから参加を辞退されては?」

「なんで負けるんだよ! ボクは天才なんだ! お前がいう通りに動けば負けるはずがないだろ!」


 いえ、ダーク君はここからどれだけやっても勝利した光景を私は見たことがありません。

 先生たちの指導を受けて、それぞれの育て方をさせる《マギガンサポーター》たちは甘くはありません。


「多少見た目はマシになりましたが、その幼稚な言動が続いている限りは、私はマスターの言うことを聞きたくありません」

「なっ、なんだと!」


 それはそうですね。

 ダーク君は怒っていますが、私もルビナさんがいうことが正しいと思います。


「もういい! 訓練していろ!」

「……」


 ルピナさんは、無言で部屋を出ていかれました。


 唯一の《マギガンレディー》なので、大切にしなければいけないのに、ダーク君はダメですね。


 私は早速次の日から人望の訓練を始めようと思いましたが、魅力よりもハードルが高いのです。


 人望力をあげる訓練は……。


 1、他の人に挨拶をする。

 2、他の人と約束をして守る。

 3、自己犠牲の精神で相手の願いを叶える。

 4、悪口、陰口を言わない。

 5、明るく笑顔を絶やさない。

 6、自分の目標を宣言する。

 7、チームで行動して協調性を養う。


 さて、友人がいないダークくんができる人望育成方法はどれでしょうか?


 挨拶をすれば……。 「ボクが挨拶をしてやる!」

 おはようぐらいは言いましょうと突っ込みたくなります。

 

 約束する人がいません。


 自己犠牲もしているのを見たことがありません。

 

 陰口は言いませんが、相手がいると口が悪くなります。

 

 笑顔は死神と怖がられ、目標は「何をしても勝てばいい」なので相手からドン引きされます。チームは組めるはずもありませんね。


「動いてくれるのかわかりませんが、できることはこれだけですね」


 仕方なく、ダーク君に提案する人望力強化の方法はボランティア活動です。


 それも誰も見ていないところでやるという手段です。

 ダーク君は、人が見ているといい格好をしようとして空回りした挙句に、暴言を吐いてしまいます。

 

 ですから、提案としてボランティア活動以外に、暴言禁止を心に決めました。

 

 現在は、G:10/100です。


 最初よりも人望があるのは、ルビナさんのおかげです。

 

 彼女と暮らしだして、多少は会話をするようになったことで、経験を積むことができました。

 

 ですが、普通の生活している程度の伸び方なので、意味がありません。

 むしろ、大切に扱っていないので人望を失っている部分も大きいです。

 

 そこで、私はダーク君が不眠不休で動けることを利用して、夜は早く寝て、朝早くに起きて、誰もいない時間を狙ってゴミ拾いや清掃をすることにしました。

 

 学園では自動ロボットが清掃をしているのですが、その手伝いをします。

 共同で使われる花壇の世話や、花の水やり、トイレの掃除など。

 人が嫌がることを手伝うようにしました。


「ダーク君ありがとう!」


 自動掃除ロボットからお礼を言われる。


「ベッ、別に自分のためだし」


 ロボットにも強がるので、残念な子です。

 ですが、ロボットには笑うことができるのですね。 

 お礼を言われて恥ずかしそうに照れ笑いをしています。


「とにかく、今日もよろしくな。おはよう」

「はい! 頑張りましょう」


 ロボットには挨拶もできてしまいます。


 意外だったのは、一週間ほどボランティア活動と自動掃除ロボットへ挨拶と会話を続けていると、人望の経験値が稼げました。


 人望:G 50/100


 元々が人望が低いので、経験値を稼ぐと一気に経験値が伸びました。


 教室に入る時も、話すと暴言を言ってしまいそうなので、無言で一礼してから教室に入ることにしました。

 頭がおかしい人物に見えるかもしれませんが、これも人望の経験値を稼ぐためだと思うとやる気が湧いてきます。


「ねぇ」

「えっ?」


 二週間ほど続けていると、灰色の髪を目が隠れるまで伸ばした薄幸の美少年、極貧騎士イサーク・マルコに声をかけられた。


 これは挨拶の成果が出たのでしょうか?


 人望:F 1/100


 Fになったばかりだからこれは嬉しい。


「いい加減にしてくれない? 毎日毎日教室に入るたびにボクへ向かって頭を下げるの、気持ち悪いんだよ!」


 いきなり怒鳴られて唖然としてしまう。


 ダーク君が反論しなかっただけマシです。


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