第17話
「兄,紙」
木に片手で書きながら押さえつけて,
別な手を兄に差し出す.
もっと白樺みたいなの選べばよかったのに,
欅を選んでしまったみたいだ.
無駄に,がった型.
「ねぇよ.」
としか返ってこなくて,片手ががっくりする.
「持てるだけ持ってこいって言ったよな」
と更なる追撃に,ぐぬぬ.
その間に,低い姿勢の先生が息継ぎは何処でするんだっ
よっの勢いで説明を続ける.
持てるだけ持って来たさ.
だけど上回る想定外の説明量.
こんなの描き切れる訳無いし,
分かり切る訳ねぇんだ.
図鑑でも作るつもりか.
俺も俺の文字を読解できるのか…
不明だよっ.
あぁっ…
もうっ…
破裂しそう…
「ちょいっ待って!
それさぁ,
さっき,
同じ様なの見た気がするんだけどっ」
適当に喋って無いか?
あっちが良くて,こっちが悪いって?
ちょっと前のさっきのと何が違うんだ!
よっ!
「よく気が付いたね.」
今まで黙って草が喋くりまくるのを聞いてたくせに.
長が口を開いた.
「それ味わうとね他が味わえないんだ.」
とにやにやしながら言った.
「それだけ旨いのか」
と尋ねると嬉しそうに
「生でどうぞ」
と返って来た.
こういう時は何かあるんだよな.
何処まで乗るべき?
視線を兄に送ると,鼻を掻いた.
どんな意味だよそれ.
はぁ…
「きのこは素人には難しい.
から俺は今食べない.
食べるべきではない.
だから,この話には乗らない.」
首を少し傾けて,
「ふぅん」
と長は言った.
「はい,続きを」
「だからっ」
俺は鼻息荒く言いかけて,長は説明の続きを促してた.
この人は,いつもこんな感じみたいだ.
自分の調子で動く.
物事を辺縁から持ち上げてきて.
毒なんて俺に使っても無いのに,
使ったかのような体で話しを進めてた.
無駄に慌てた俺が馬鹿みてぇじゃん.
何かを見られて確認されていたとすれば…
あまり俺は良い人間ではないのかもしれない.
あの体を見て恐怖を感じないような肝は持ち合わせてなかった.
「同じですね」
「ほら」
なっと顔をしたら,
「これは基本です」
と言われてしまった.
目を少し閉じて,うんざりした顔を作った.
「騙すのは無し」
「食べてみないと分からないのですよ」
と返って来た.
「味わったら最期」
兄も知ってたんか.
「本当に必要な時に」
と長も笑うので,
「絶対に逝きたい時?」
尋ねた.俺ら死んでるんだけどね.
「もしくは,それしか食べ物が無い時」
草先生が言うので,
「そんな場合あるんすかね」
俺は,こんなこと絶対に書きとめない.
もう,こんな所うんざりだ.
察したのか頃合いだったのか
「移動しましょう」
と草が言った.
少し遠くに両手をつき,体感を引っ張るように引き摺って移動する.
「く…
先生,負ぶいましょうか.」
あんだけ喋って動いて疲れないのかと.
「有難いけど,体が怠けるので.」
そう言って断られた.
断られたんだ.
雲隠れの 食連星 @kakumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。雲隠れのの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます