第16話
「足に興味は無いよ.」
と草が言った.
「俺は姿勢が低いから足が狙いやすいだけだ.」
聞いて溜め息しか出なかった.
自分の弱さに汚さに.
「取り乱して悪かった.」
とだけ呟く.
何出しても良い訳で保身で伝えられないと思った.
「長の一撃が当たったらいいなとだけ思ったんだ.」
言いながら草が笑ったら,自然門の長も笑って,
兄も一緒に笑いだして,俺だけ笑えなかった.
長が
「もう一回行け.」
と指をくいっと示すので,
「勘弁.」
と言いながら,俺は横跳びをした.
「んで?
僕はどんな話をするつもりなの?」
言いながら兄を見ていた.
さっきまで可愛いだけだった人が一瞬で長になって,
何故か遠い人.
「この人は毒の…」
「毒の…」
反復しながらごくっと空のみをする.
「変態おやじ」
「へんたい…おやじ…」
え…
「足抑えとけ」
うぅえ?
「せ…専門家だ」
「あぁうん.
専門家だねっ!!!
だよねっ!!!」
「心の声出た」
兄っ!兄ぃ!!!
それ俺と2人の時に言えるやつだよぉぉぉぉ.
「足を」
「先生!!!」
俺死にかかってんのに,何でどんな気遣いを…
させやがるんだ.
「まぁまぁここはっ
そろそろ俺の解毒を1つ…」
お願い!します!!!
まじで!まぁじぃでぇ!!!
揉み手ってしちゃうんだな.
この卑しい恰好.
巻き戻して見たくはないな.
兄が,
「こう見えて随分上の方だ」
と真面目な顔をして言った.
「自身の身体で試すので二次性徴が止まっている.
色が白いのも色素が巧く働いていない.
可愛いという言葉は禁句.」
「あぁ道理で」
嫌な気持ちにさせたんだなと理解すれば,
「大変失礼な真似をしました.」
頭を下げられた.自然と.
視線を外されながら
「いいよ.」
と言われる.ちょっとこれじゃ本当に良いのか分かんない.
「食堂で新種の毒を試してみたかったんだ.
手を握ってくれたら良かったのに.」
と笑いながら言った.視線は合うので,これは言いたい事だ多分.
「はぁ…そうですか…」
俺は引き金を引いて引かせて.知らずに知らずのうちに自ら.
あいつにもお礼を言っとかなきゃなと浮かんだ.
あいつも説明してくれりゃ良かったのにと思って.
いや,これを本人の目の前で了解なしに話せって.
いや先ずもって無理かもしれない.
俺も名乗れなかったけど,あいつも名乗らなかった.
から,どの門の奴か分からない.
のそっと思っていた俺に長が
「解毒は必要ないよ」
と言った.
「え…俺もう手遅れなんすか」
呑気に身の上話とか聞かなけりゃ良かった.
最期にしては,あんま納得出来ない.
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