第14話

朝っぱらから山歩き.

はぁ…

ねみぃ.

「迷子になるぞ」

「ふぁい」

「気合が足りん」

あぁ兄と一緒だからってのもある.

「今から現地集合って…

拠点から一緒行けば」

「もう向こうは動いてるんだ.

こちらの動きの方が遅い」

「へっ!?」

まだ日も登ってないのに?

「朝日を浴びた瞬間溶ける素材もあるらしい」

「鬼か何かっすかね」

「さぁ」

さぁねぇ.一緒に首捻りながら.

「9120この辺りなんだが」

「人っ子一人いない」

と思ったけど何だろ違和感.

「いるいる」

兄の視線は低い.

地面近くを視てる.

擬態してる.

地面と草が動いた.

「こいつら実戦向きじゃない」

らだから複数いる空間に.

だけど俺は動き1つしか確認できていない.

何処だ.

何処だ.

上か.

「音もなく近づくな」

兄の方が早かった.

首裏の空気が動いた.

背中の肉が騒ぐ.

前へ跳び退きながら,体を向き直す.

「あぁ!!!」

声が反響する.

「でかい声を出すな.

むやみに」

「だって!」

「阿保.」

兄の蹴りを前腕で受けながら,視線は…

視線は!

「食堂の可愛い子っ」

顔を土で塗ってるけど,これは絶対そう.

薄暗くても見間違えらんねぇ.

「お前っ

避けろっ!」

兄もでっけぇ声出しやがって人に言われんじゃんとかって.

泥のようなものが顔横をかすめる.

すげぇ変な臭いがする.

「止めっ.

一時休戦で.

我々,教えを請いに来た.

こいつは,まだ何も知らぬ.」

一時休戦って?

何?

今俺?攻撃受けてたの?

「え?

振り返ってみても何が悪いのか分かんない.」

「いいから.ほらっ

すいませんしたっして.ほら.

しろって」

はぁ…

ぐぐぐって頭押さえつけられて.

したくない詫びを入れてる.入れられてる.

何?

何で?

俺滅茶苦茶肯定的なことしか言ってない.

足首おかしい.

何?

泥が足首握ってる.両方.

草が…

「どうする?」

って俺じゃない方に向かって喋ってる.

あわわ…

わわわわ…

「こいつの任務は日が無い.

終われば煮るなり焼くなり,どうとでも」

「どうとでも…?」

良くないだろ!!!

「耐性も無い.

早目に解毒を.」

解毒を?

「兄ぃ…何ぃ…?

俺,泥団子避けてたよな?」

「足首.

直にきてる.」

「草はぁ?

そいつだって触って付けてきてんじゃん…」

草が笑ってる.

それに,あの子も一緒に笑って.

ころころって耳を惹いた.

「防毒.」

「防毒?」

「してないと皮膚から,じわじわ血中に取り込まれる」

「えぇぇっ!?

今っ!?今っ!!??

えっ!?俺は!?今っ俺は?」

足を上にあげたいのに.

びくともしない.全部を集中しているのに,

何故足が動かない?

体重ののせ方がおかしい.

「してないだろ」

って可愛い子が笑った.

花が咲いたかのような感じで.

だけど…

命を懸けてまで,あんましたくない.





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