第13話
すぱーんと障子開け放したら外すかと思った.
「おいっ」
って意気込みながら.
俺のたがが外れたように.
いやもうたがが外れてた.
あ…
里長が目に入る.
「っじ…じじぃいいぃぃっ,よくも俺を殺してくれたなっ!」
言うはずじゃないことを言う羽目になって,どもる.
怒る訳でも無く,かかかかっっと笑った.
仁王立ちで立つ俺を置きっぱなしにして,
里長と門長は,また盤に目を落とした.
門長が抑え込まれてる.
劣勢だ.
一番低い位を動かす.
低い位なのに,あれはおかしな動きをする.
友が父と指し合ってるという話を羨ましく聞いた.
友との暮らしの中で決まりや手を覚えていった.
数が物を言うのか大概勝てなかった.
良い思い出は数少ない.
父に教わった思い出なんて勿論無い.
下手糞に教わらなくて良かったな.
「出せるのか」
そう里長が言った.
「まだ.もう少し」
門長が言う.
顔を上げては
「何だ」
と言った.
こちらに向けての一瞥.
「俺の所属門っ」
何処だよ!無いんだよ!
宙ぶらりんなんだよ!!!
知らない奴から言われっぱなしじゃ困るんだよ!
「あぁ」
と声が漏れたので,
ふんふんしながら待つ.
待ってる甲斐も無く,
「しんは無くていい.」
戻って来た.
「良い訳ねーって!
訊く前に言えって言われたんだって.」
「訊くな.」
「はぁっ!?
名前もねぇ所属もしてねぇって
一体全体どういうことだよ!」
「そのまんまだろう.
今のお前には何もない.」
むしゃくしゃしてきて,盤を蹴り上げた.駒が宙を舞う.
その中から一つだけ,里長が握った.
盤は門長が舞った空中から引き抜いて,粗方駒を掬い受ける.
一瞬の出来事だった.
余りの鮮やかな顛末に,詫びとか入れたくなかった.
「次は自然門から学べ.」
と門長が言う.
「嫌だと言ったら?」
「学ぶように.」
他にお前は出来ることが無いんだって顔が悔し過ぎた.
糞っ.
舌打ちして足をだんだんと踏んで…
出来ることは,それ位だった.
返事なんてするもんか.
黙って出て行こうとしたら,頭にすこんと当たった.
振り向くと,わざわざ手を振り抜いた姿の里長が目に入る.
笑顔だった.
「何投げやがる」
視線を遣ると,門長がすっと盤上に出した駒だった.
「出撃出来るかな」
糞じじぃが言うもんで
「出来ねーよっ」
応えたら,またかかかっと笑うにとどめやがった.
次やったらぶっ殺すからなって声出しても,
どうかなりそうだなーっ.俺が.
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