第8話
俺ら迷ってるんじゃ
って言いたくなるほど景色が変わらない.
これは…
「なぁ俺ら時間無いんだよね?
そろそろ森の散歩も飽きて来ない?
同じ所ぐるぐると」
「分かる」
お?
おぉ?
「招かれざる」
「客?」
あ?
あぁ?
無視?
い!?今?後ろ?いる?
「俺らっつけられてるから?
だから、到着しないふり?」
声を落として敢えて振り向いたりしないけど、神経を四方八方にばら撒く。
確かになっ秘密兵器は狙いたいし狙われやすい.
「違う」
「じゃあ何」
なんなんだ。
山歩き訓練かと思っても見たけど、あいつから何か学べる気がしない。
身体的能力が追いつけるのかって。
ひたすら疑問。
「あっ兄」
じゃなかった.
途中で何かそんな気になってたなんて.
「たぬ」
でもなかった.
なくないけど,呼んでいいのか.
「そっち!」
そっちでいいや.
「急に寡黙で,さっきまで饒舌で.」
「札切れ」
「え?」
「生物門が集結」
「え?」
「変」
「え?
観客用意されてるんだ…
じゃあ…」
帰りたい.張り切らねーとななんて言えない.
「話付いてるはず」
誰に言う訳でもない感じで,たぬきが呟いた.
「合同訓練?」
「聞いてない」
「戻って確認する?
それが一番…」
「出たら任務が完了するまで戻れない.」
「え?
でもさぁそれって不可抗力な事態って起こるしさぁ
どーすんのっ?」
「それでも」
「それでも?」
「だ」
「だっ!?」
急に獣道から逸れると,後に続き,視野が開ける.
湖面が眩しく光り,一瞬で明るくなった.
確かに人が立ってる.
ひーふーみーよーいつむーななやーとう.
あれ全部相手にしたら軽く死ねそう.
ざっと見た感じでも皆,土色してて,肩幅がある.
「本日は,湖面を特殊門が借り受けると」
たぬきが響き渡る声で辺りに振りまく.
俺を背にしながら…
庇われてるのかって思ったら,何ともまぁ…
俺が,この場で出来る事なんて何も無い.
何も無いから場を荒立てないように動かない動きをするしかない.
真ん中で立つ大柄の男が前に出て,
「生物門もそのように承っておる」
負けじと同じような野太い声で受けた.
「存分に.」
湖面を指さしながら笑った.
笑った?何だ.
なんの違和感だ.
「さぁ道を開けてさしあげろ」
と号令で横に退く.生物門が一斉に.
表情が空気がおかしい.時間を割いて俺の訓練を見に来るのか.
「これは」
俺だけに聞こえる声で,たぬきが言う.
「成果」
成果?
「駄目だったらやれ」
「やれって?」
俺の味方は,完全なる…かは分かんないけど味方は今たぬきだけ.
小声で訊くくらいしておかないと.
下っ端上官の指示くらい聴かないと.
それより下だからな俺様ってば.
「息の根止めろ」
ぅはぁぁぁああ?!
あー今の嫌な予感が当たってたら,あー多分嫌な事になるー.
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