第10話 新しい発見
グラウンドでは、体育祭級の熱気が僕でも感じ取れるくらいに盛り上がっていた。唯一違うとすれば歓喜する男子を女子は、蔑んだ目で見ている割合が少なからず目に映った。
「では、君達1年生がこのイベントの内容をより理解できる様に上級生に登場してもらう」
九條先輩の呼びかけに数人の男女がゆっくりと僕達1年生の前に向かって来た。少し違和感があったのは、数組のペアで手を繋いで歩いて来ているという点だった。
「では、まずはこの先輩方の説明からします。ここに居る君達の先輩方は、去年君達と同じ様に恋シュミの説明を受けて、晴れてカップルになった方達です」
1年の男子は先輩女子を見て歓喜、1年女子は先輩男子を見て、さっきまでの痛い視線は限りなく無くなっていた。
「君達もこの様な青春を送れる事は、この学校に合格した時から決定しています」
「「「「うぉぉぉぉぉ」」」」
「「「「わぁぁぁぁぁ」」」」
男子と女子の歓喜を耳にして少し場違い感を感じていたが、隣に居る江藤君が周り以上の歓喜を行動で示していたので、僕も周りに合わせてポーズをとっていると、
「あれ?何か冷たい視線をダブルで感じるな」
僕は、取り敢えず歓喜ポーズを素早く止めると、冷たい視線は一つは消えた。しかしもう一つの視線は何故か近づいて来ている。
..........グキ、
あ......この殺気99%のパンチは、
「青春だね.......涼君?」
後ろを振り返れば、優しく微笑んでいる雪奈が居た。当然背中の痛みで少し視野が薄れていたが、当然雪奈だと分かっていた。
「....雪奈も青春頑張れよ」
「そうだね。これから宜しくね」
雪奈はそう言って去って行った。少し嬉しそうだったのは、僕の勘違いだと思って忘れる事にした。
「では、これにて説明を終わりにする。君達は、午後の授業がこれで終わりなので解散だね」
九條先輩の声に気づいて前を見ると説明が終わっており、僕は江藤君から説明を受けようと横を見ると、
「どうしたのその頬」
「何でも無いよ何でも.......無いよ?」
江藤君の頬は少し赤くなっており、何故?を聞いて欲しくしていたので、
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。少し浮かれて横の女子にプチ告白したら、この様な結果になりました」
あぁ........友達辞めよっかな。
「冷たい視線を君からも感じて少し性癖が歪みそうだよ」
「江藤君って少し変わってるね」
「そんな褒めるなよ」
江藤君は違う意味で頬を赤くしていたが、僕にはその様な趣味はないので、丁寧に無視する事にした。そうだ......雪奈に聞こっかな。
僕は周りの生徒がグラウンドから出るのに連れて一緒に歩いて行った。その足音は人によって違う物だった。
「涼..........家に帰ったら楽しみだね」
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