第11話 兄貴の違和感

 教室は異様な盛り上がりに包まれていた。さっきまで冷たい目で男子達を見ていた女子達も男子同様に盛り上がっていた。


「静かに、マセガキは..........上級生から嫌われるぞ」


 担任の新山先生から放たれた波動は一瞬でクラスを包んで.........静かになった。


「では明日から本格的に授業が始まる。気を引き締めて頑張るように」

「「「「「「はい」」」」」」

「では、解散」


 先生の言葉で異様な盛り上がりは、また再熱した。男子達は、上級生と友達になる為に、女子達はさっき見た上級生の話、


 僕の後ろは、


「やっぱり狙うなら先輩だよな」

「そうだね」


 江藤君は学習しない人間と今日一緒に居て再度理解できた。


「ん?」


 学校に居て偶に遭遇する冷たい視線を近く感じ取ったので、そっちを見ると、


「雪奈か」


 クラスが盛り上がっていても雪奈は僕を鋭い眼差しで見ていた。理由は......浮かれるなって所かな。僕はこれ以上ここに居たくないので、


「江藤君、また明日」

「おう、また明日」


 僕は静かに教室を出た。当然同じ考え方の雪奈も後ろに居たので、


「帰る?」

「勿論」


 僕達は活気だっている廊下を無心で歩いた。





 静かな道、学校を出て夕暮れに近い空を見ながらこんな日常を送りたいと天に願う。


「あ.......今日買い物頼まれてた。それじゃあまた明日」

「おう」


 雪葉は一瞬で消えた。何故なら僕は家にすぐ帰る必要があったから、何故なら兄貴から恋愛シュミレーションの説明を聞き終わった後に連絡がきて、


[涼今日はすぐ帰ってきて]

[何で?]

[帰ってきて]

[了解]


 久しぶりに脅迫じみた連絡を貰った。前は中学卒業時にクラスで焼肉屋に行こうとしたら、今日と同じ様な連絡を貰ったが、僕は行きたかったので、無視してたら目的の焼肉屋に兄貴が仏像の様に立っていた。


「兄貴って結構寂しがり屋だな」


 そんな寂しがり屋な兄貴が面白いと思った僕は早歩きしながら家に帰る事にした。




 ピンポーン.......、


 いつもは鍵を持っているけど今日は偶々忘れて居たので、兄貴に開けて貰う事にした。



 ガチャ、


「ただいま兄貴」

「おかえり涼..........入って」

「???」


 至近距離に居る兄貴は僕が知る限りでは1番怒っていた。当然僕に原因がある事は連絡事項で察した。


「それじゃあ.......お邪魔します」

「違うよ。僕達は........家族なんだから」


 兄貴の目はいつも少し蒼くて綺麗だが、今は何故か少しずつ黒くなっていた。


「少し待っていて」

「兄貴どこ行くの?」


 リビングに着いた途端兄貴は自室に行った。少し違和感を感じたけど今は.....ゲームをする事にした。






 自分でも可笑しいと思うくらいに目がやばかった。玄関にある鏡で見た自分は少し怖かった。


 でも、今回の事で分かった。今のままでは涼は私の物にならない。時間が経つごとに他のメスが涼を食いにくる。それだけは絶対に無理。少し前まで涼が私以外の女と居るだけで夜中枕が浸水していた。


「まだ言う時ではないけど、自分の立場を理解する事は大切だよね」


 私は愛しの涼が待つリビングにゆっくりと向かう事にした。

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