第9話 学校方針

 初めての授業、空気感、先生、全てが新鮮だった。授業中、よく江藤君が背中を突っついてきたが、後半は無視を決め込んでいた。


「それでは授業を終わります。午後からは“あれ”があるので校庭に集合してください」


「「「はい」」」


 あれとは..........この高校の伝統であり、僕がこの高校を合格した後に後悔したお古い現象だったりする。



「ふぅ....慣れないな」

「お疲れだね」

「まあね、江藤君はある意味高校生しているね」

「そうかな、でも....午後からは楽しみかな」


 その言葉に僕は、あ...少し考え方が違うと密かに思っていた。僕達の考え方が違うのでは無く僕が周りと違うと改めて教室内を見て思い知った。


「おい、始まるぞ」

「だな、これから俺たちのユートピアが始まるんだな」

「俺たちじゃ無くて俺のな」


「「「お前は無い」」」


 男子達は大騒ぎ、女子達は軽蔑の目線、僕は女子寄りの思いを持って教室を出る事にした。すると、


「待ってよ」



 ん?全然動かない。この強い力は、もしかして、


「雪奈か」

「その.........友達作れて良かったね」


 

 トス..........、


 雪奈は僕の腹にいつもと真逆なパンチをして教室出て行った。



 あれ?僕って友達居たかな.....あ、江藤君か




 



 昼食を食堂で食べ、僕はグラウンドに向かって重い足を一歩ずつ前に動かしていた。


「一ノ瀬君大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「もしかして緊張してる?」

「ある意味ね」

「僕も緊張はあるかな。今から起こる事に」

「......」



 僕達は違う感情を持ちながらグラウンド内に入り、クラスメイトが並んでいる後方に行った。




「テステス......入っているな。では生徒も大半揃っているので今から始めたいと思う」


「「「「「「おおおおおお」」」」」」


「「「「「「...................」」」」」」



 男子プラス、女子マイナス、僕ゼロ



「ではまず、みんなも知っていると思うが、今から始まるイベントの説明を司会担当の九條咲が行う」


 少し遠くに居る上級生九條咲さんは、第一印象としてボーイッシュ女子だと感じた。黒髪ショートカットに遠くでハッキリとは見えないが、少し兄貴と似ている雰囲気があり、少し安心感芽生えた。



「では、恋愛シュミレーションの説明をします。恋愛シュミレーション通称恋シュミは、女子との絆を深めるイベントです」



 以上かよ


 声には出していないが、みんなが思った事を僕も感じる事になった。僕がこの学校に入った最大の失敗でもある恋シュミは、


1.勉学は異性と行う方が効率が良い

2.男子は清楚に女子はお淑やかに

3.誰にでも恋人を


0.無いなら強制的に増やす。機会は降ってくる

 


 僕がこの高校に合格して家に送られて来た封筒内の紙にデカデカと書いてあった正直、少し気持ち悪い風習だ。



「ではまず、このイベントの資料を前から送っていくので目を通してくれ」


 

 僕は江藤君からプリントを貰い、目を通すと、



_________________________________________


     恋愛シュミレーション


本校の教育理念は、恋愛・勉学・貢献


概要 

一年生は、一週間以内に異性の友達を作る事

強制はしないが、半強制だと考えて欲しい

異性の友達を作る条件として、


1.基本は被らない様にする事

2.外見も大切ではあるが、中身も重要

3.学生である事を忘れない

4.異性の友達は上級生でもOK


5.異性の友達が作れない場合は、????


_________________________________________



 

 僕はプリントに目を通して前に居る江藤君に向かって、


「この学校はラブコメ学校かな?」


 江藤君は僕の方を向いて笑顔で、


「勿論その為に入ったんだよね」

「.......うぅん」



 僕はふと、兄貴の顔が浮かんだ。

 兄貴もこんな気持ちだったのかな。









       

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