第6話 鈍感
歩行距離4km、手持ち500円、横は内弁慶、
「春って涼しいよね」
「ある意味全て涼しいです」
「........よっこら」
........ドス、
腹筋を鍛えるには負荷が必要であると、どっかの有名トレーナーが言っていた。
「雪奈さんのおかげで筋トレが捗ります」
「良いじゃん」
お金+腹痛が僕の思考を歪めて雪奈のお腹にダイレクトパンチを喰らわそうという愉快な発想になっていた。
「エッチ」
「何故?」
「私の体見てた」
右手に力が全集中したが、雪奈はボディーを固めて守りに入っていたので、今回は右手を急速冷凍で冷ました。
「それより、クレープ美味しかったね。ありがとう、付き合ってくれて」
「.....どういたしまして」
西条雪奈の憎めない部分は、感謝を素直に言える所だったりする。一言で全てが変わる友人関係において、雪奈は僕の扱い方が兄貴並みに上手だったりする。
「明日も行くから」
「大丈夫ですよ」
「クレープ美味しかったね」
「明日は家を8時に出ます」
「了解」
僕達は分かれてそれぞれの自宅に入った。
「ただいま」
例え家に誰も居なくても言ってしまうのは、家族関係が良い証拠だと思っている。決して家族が居ない事を忘れていた訳ではない。
「ふぅ.....取り敢えず服を脱いで」
洗面所に向かい手を洗って制服を脱ぎ、自室に行き着替えて、リビングに到着した。
「何か......これかな」
テレビは見たい番組が無くても満足できる至高物だったりする。兄貴や父さんからは不評だが、僕は折れない。
「お、再放送のアニメ.......ラッキー」
現在夕方の4時、早期帰宅の特典再放送アニメは僕の少し沈んだ感情を一気に押し上げた。
「良かった」
「良かったんだ?」
「何回見ても良いよ」
「そうなんだ」
僕は聞かれたので返答したが......ん?
後ろを見ると兄貴が立っていた。何故か僕が座っているソファーの上部を握り締めている。
「良かったんだ。放課後」
「.......最悪でした」
僕の一言に兄貴は戸惑っていたが、経緯を説明すると、
「そっか、それは災難だったね」
「そうなんだよ」
「なら雪奈ちゃんとは少し距離を置いたら?」
兄貴の提案に少し考えたが、
「それは大丈夫。雪奈は友達だから」
「そっか」
兄貴はリビングから出て多分自室に行った。あの感じはご機嫌斜めであり、触れては火傷する可能性があるので、放置が最善だったりする。
私の部屋はシンプル。弟に疑われたくないので女性物は絶対に見れる場所には置かない。でも、今日雪奈ちゃんと居るのを考えたら、私の秘密がバレるより他の女性と涼が一緒に居る方が精神的にもっとも辛い。
「隠してるから何も感じないもんね....涼」
私は制服を脱ぎTシャツ、ズボンに切り替えて鏡で微調整をして、リビングに戻る事にした。
「あ、兄貴ゲームしない?」
「.......良いよ」
この笑顔に私は何も抵抗できなかった。どんな感情を持っていても、私は弟を嫌いになれなかった。
「何するの?」
「アクションゲーム」
「好きだね」
私達はコントローラーを持ってテレビの画面に集中した。弟は100%テレビを見ているが、私は半々だった。
「まっいっか」
「何が?」
「何でもないです」
「そっか.....油断大敵だよ。兄貴」
「やるな」
僕は兄貴の顔を見て、機嫌が治っていたので、ゲームに誘って本当に良かったと、ゲームに感謝した。ありがとうございます。
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