第4話 放課後は突然に

 入学式は..........塩ラーメンみたいにあっさりしていた。校長、生徒会長、主席のバトンパスはオリンピックを見ている様だった。


「クラス一緒だと良いな」

「ふん」


 クラス分けは体育館に一年生だけ残って、受験番号を担任が呼んで担任の前に列を作っていく形式らしい。雪奈は僕の受験番号と自分の受験番号を交互に高速で見ていた。


「ではまず1組から.....受験番号1、5、20...」


 担任の声が体育館に響き渡り、僕達生徒は素早く列を作った。そして1組から順に体育館を出た。




「私が君達の担任であり、君達の女神である....新山先生だ」


「「「「「おーーー」」」」


 男子は歓声、女子は苦笑い、僕は眠たい、そして........雪奈は迷子の子供、


「余興はこれくらいにして本題に入るが、今日は配布資料を渡して解散」


「「「「「「おーーーーー」」」」」」


 クラスメイト全員が歓喜していた。明日からの未知の高校生活を送る為に今日はゆっくりしたい。僕はそう思っていた。


「それでは前から送っていく」


 一ノ瀬は小学校から苗字的にいつも前に居た。そして今回も、


「惚れたか?惚れるなよ、一ノ瀬」

「惚れる理由がありません」

「......」


 先生は不機嫌に配布プリントを渡して次に行った。隣の男子にさっき僕にした様にやっていて、反応が良かったのか上機嫌で配布プリント渡していた。



「配布プリントも全員に配れたし.......解散」

「「「「「「はい」」」」」」


 生徒達は近い者同士で群れ合い、集団が形成されていた。僕は後ろに居た男子と少し話して教室を出た。


「ふーーー、帰るか」


 歩き慣れていない廊下をゆっくり歩き、下駄箱の前まで着いた。中学校の下駄箱と違って二倍くらい大きい事に感動したのは、今日で2回目だ。


「要らない配布プリントを.......」

「置いて行くなんて........消すよ」


 配布プリントがスルスル入っていく事に感動していると、さっきまで教室の中で迷子状態になっていたギャルが横に立っていた。


「雪奈も帰るのか?」

「そうよ。クラスの大半は何とか会をするらしいけど」

「そっか.....帰りますか?」

「そうね」


 僕達は数少ない早期帰宅部となり、日が明るい内に学校を出た。目的地は少し歩けば、すぐ着けるが、


「........ね?」

「はい」


 僕達は自宅と反対方向に歩く事になった。


「.....2000円ですね」

「良かったね。2人で食べれるよ」

「雪奈さんだけで良いですよ」

「ん」

「マスカットのクレープとかないかな」

「私はチョコが良いかな」


 半強制的にクレープを一緒に食べる事になったが、正念場はまだ会っていない。そう...1番安いクレープ屋を探す事が、明日の僕を救う一手だった。


「........あの、あっちとかどうですか?」

「こっち」


 雪奈の指した先には、看板に大きく「全て1000円クレープ」と書かれていた。


「雪奈さん.......財布が寂しがってまして」

「今日の朝......寒かったな」

「どれにします?」



「チョコクレープ」


 


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