第3話 入学式の朝

 綺麗なブレザー、シャツ、ズボンに新しいリュック、そして新しい教科書。僕は今日から高校生になる。兄貴と一緒の高校だ。


「涼......先に行ってるな」

「うん」


 兄貴は入学式の準備があるので先に家を出た。僕はまだ支度を整えていなかったので、一緒に行きたい気持ちを押し潰して兄貴に手を振った。


「ふぅーー、準備はできたな」

「おぉ、中々様になってるな」

「ありがとう父さん」


 父さんは会社に行く時のスーツと少し違うスーツを着ていて、理由を聞いたら「気持ちの入れようが違うからな」と、笑顔で言ってくれたのが嬉しかった。


「父さんは昼から来るんでしょ?」

「そうだな。去年と同じだな」

「うん。僕はもう行くから玄関行こっか」

「はいよ」


 去年も兄貴と父さんが家の前で写真を撮っていたので、今年は僕が父さんの横に立つ。カメラを持ってワクワクしている父さんと共に家を出た。


「三脚良し、カメラ良し.....涼撮るぞ」

「..うん」


 時間差で撮るのは少し緊張したが、父さんの笑顔に少し笑ってしまい、結果的には良い結果になった。


「もうすぐだな」

「うん、もうちょっとで行くよ」

「そうか.....伊月にも宜しくな」

「うん?」


 僕達は家に戻って僕はリュックを背負って、また玄関前に立ち自分の姿を鏡で確認して、


「行ってきます」

「行ってこい」


 僕はドアを開けて家を出た。何も変わらない朝に.......少し違うブレザーを着た女子、雲が一切ない青空、


「良い天気だな」

「そうだね」

「兄貴も今頃頑張っているのかな」

「伊月さんも居るもんね」

「行くか」

「.......」


 いつも歩いている歩道が狭く感じる。新品の制服を擦りたくないので少しスピードを上げたが......何も変わらないので、


「すいませんでした。雪奈さん」

「.....何が?」

「朝、待っていてくれたのに無視して」

「.....」

「綺麗すぎて雪奈さんと思わなかった」

「嬉しさ5割、怒り3割、あと2割は...ね?」


 ..........


「今日の放課後、駅前のクレープとかどうですか?」

「いいの?」

「嫌だけど....」

「ん?」

「行きたいです」

「うんうん.......行こっか、学校に」

「はい」


 中学二年生から隣に引っ越して来た西条雪奈は僕の天敵だった。まず言いたいのは彼女は高校生デビューで髪を金色に染めており、綺麗以上に誰か分からなかった。金髪ロングも似合っているけど......怖い。


「雪奈はどうして......つたんか」


 ドス...............


「......雪奈の髪綺麗だね」

「そうなのかな。でも良いよね?」

「チンピラのかの」


 ドス..............


「......海外の女優みたいだよ」

「褒めすぎだよ」


 出会って2年経つが、友好関係は悪くないと思うが、いつもお腹が痛くなる。そんな日頃の痛みを思い出していると、


「あ、見えた」

「うん。見えたね」


 僕達が今日から通う雪島高校が見えてきた。自宅から徒歩10分ぐらいと革命的に近く、偏差値も僕に丁度良いので即決だった。


「「「おはようございます」」」


「おはようございます」

「......」


 上級生が挨拶してくれたので、僕も挨拶をした。でも、隣のちょいヤンは違った。僕の後ろに隠れて、僕の背中が揺れていた。


「雪奈さん?」

「.....」

「入ろっか?」

「うん」


 雪奈は一般的に言えば内弁慶であり、僕に対しては強いが、他人には極度の人見知りが発動するので、雪奈とは中学時代もずっと一緒に居た。女子より話しやすかったし、何より人見知り状態の雪奈はカワ面白い。


「体育館は.......あそこかな」

「行くよ」


 本調子に戻った雪奈に腕を掴まれて僕達は体育館に向かった。




「.......また一緒なんだね」






 


 





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