第115話 火葬
さて、食事も終わって、色々と考えなくてはならないことが出てきた訳だが。取り敢えず、この巨大な死体をここに置いて帰って良いのかという疑問はある。普段も森の中にいた魔物は放置してたけども、流石にこの
まぁ、こんな場所に来る人間なんて殆どいないだろうし、気にしなくても良いのでしょうが。
そう思って少しの間考えたのだが、俺の見てないところでこの龍の死体が腐って行くというのも何となく気持ちが悪いので、取り敢えず火葬だけでもしようかな、と。幸い龍の死んだ場所は森の中でもない岩場だし、ここで火を付けたとしてもどこかに火が移るなんていうこともなさそう。
ということで、死体の下やら周りやらに折り倒して来た木材の類を敷き詰めて、先程肉を焼くのに使った火種で火を付ける。乾燥すらしてない木に火が付くわけがないとは思っていたのだが、火付け部分の周囲には枯れ木を纏めて置いておいたからか、想像以上に勢いよく火が回って行った。
ぼんやりと、炎が龍の死体を包んで行くのを見る。「人格人らしく死人に罪なしの精神を全うするぜ!」と主張するつもりは毛頭ないが、だからと言って生まれ育った環境での価値観を捨てられる訳ではない。自分の周囲の人間には人の心を持った人間が多かったもので。
故に、つい、こういう場面では謎の情に訴えかけられる。なにせ、数週間の付き合いだ。龍に無駄に人間味があったのが良くなかったのだろう。恐らく。
結局、一時間程眺めていたのだろうか。燃え尽きる訳がないとは思っていたが、不思議と龍の体は灰と化して消え去っていた。あの巨体が単に燃え尽きたとは思えないから、また何かしらの変な作用が働いたのだろう。こんな細かい場面では何も気になりはしないが。
さぁ、話を戻そう。
取り敢えず掲げていた目標は達成したわけだが、まぁ総本山をどうにかできたわけではないのは確かで。龍の挙動を見る限り、明らかに魔物を作り出していないどころか、所々他者からの介入を感じるような動きをしていた。自我があったのかどうかは分からないが、誰も近くにいないときのあの無表情は流石に何かしらの理由があるのだろう。それ以外にも色々と感じることはあったが。
ごちゃごちゃ言ったが、つまりは、龍に干渉できるだけの存在がどこかにいると思っているという訳だ。
まぁ、非常に心当たりのある存在が一つだけあるのだが。
…………勿体ぶるのはよそう。例の視線だ。決戦の時に感じていた───あの時の自分の心の内の台詞を思い出すと左手に包帯を巻いた少年のようで色々と恥ずかしいのだが、それは忘れるとして───例の。別に、特段何かしらの確信があった訳ではなかったし、ただ単に自分の感触でしかなかったためにあまり気にしていなかったが、最近ではあの気色の悪い感覚が強くなっていた。
常日頃から見られている訳ではない。恐らく、一日に数度と言った程度だろう。それでも、それだけ
そしてその感覚も、龍を殺した時点から感じなくなった。昨日の夜から気味の悪い感触は一度もしていない。
ただ、だからといって、その視線の主の手がかりが一つもなくなったわけではなかった。というのも、また話は龍に戻るが、龍の死体に纏わりついていた魔力だ。
先程の「それ以外にも色々と感じることはあったが」の一つで、一応
以前は持っていなかった感覚のせいで上手くは説明できないが、魔力は謎に粘着質で、五年程度放置された水槽と同程度の気持ち悪さを放っていた。
まぁ、だからこそ気が付かなかったのだろう。魔力は、龍の表皮────というより、恐らくは体内にまで浸透していた。そしてその上に龍の圧倒的な魔力濃度。ポッカレモンのボトルで刺身一枚の生臭さを消されるようなもの。てかもうそれポッカレモン刺身添えだろって言いたくなるレベル。分かる訳がない。
ともかく、この魔力についてだが。実は何かしらの帰巣本能的なものを持っているらしく、固定しようとすると微妙な抵抗力があって、上空の、一点に向かって進み続けようとする。そのせいで龍を火葬している最中色々と苦労したのだが、その話は割愛するとして、言いたいのは、この魔力を追って行けば、総本山とは言わないまでも龍の主程度には会えるのではないかということ。
…………自分の許へと帰って来るような魔力を軽々しく外界に放って所在地が露見するような存在が
そして、上空に向かう方法についてだが、ご期待通り例の魔力化だ。非常に不安が付き纏うのでね、色々と実験してからにしてみようとは思いますが。
いやぁ、空飛べるってなったら色々と便利なんだけどね。もれなく自分がこの世から物理的に霧散するかもしれないっていう
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