第87話 通知、電話
昼食を食べ終わったので、そろそろスマホに対応しなければならない時が来た。非常に乗り気でないが、仕方なし。
日和と隣り合ってソファに座り込み、充電コードを繋いだ状態で、恐る恐るスマホを開ける。想像通り大量のオシラセが届いている訳だが、通知バーから確認しようにも何も追いつかないので、取り敢えずそれぞれのアプリから確認しようと思う。
まずはメール。こちらに関してはあまり使っているものでもないので、届いているメッセージは十数個だった。その内の二つは見知らぬ人からの詐欺メールで、残りは登録しているアプリごとの宣伝が殆ど。このご時世アプリで稼ぐというのも難しいような気がしなくもないのだが、こうした広告は割と律儀に届いている。
恐らく殆ど日の目を見ていないであろう広告メールに取り敢えず合掌。態々画像まで添付してあるのだから、それ相応の努力がなされているのでしょうが。………全削除します。はい。
そしてその他諸々のアプリ類を確認した後、最後の砦。メッセージアプリ。既に赤いマークがアプリアイコンの上で存在を主張していて圧が凄かった。
意を決して開く。交換している者は殆どいないとはいえ、この前に研究所に行ったときにそこの面々のグループに突っ込まれてしまったために、そこの通知が大量に届いている。そこから更に個人チャットに飛んで他の内容を送信してくる者も珍しくはなく、前回武器を貰った彼からも何かが届いていた。
一番上から確認して行く。研究対象としての催促、武器の調子、魔物の様子、森の環境についての質問、
返事も帰って来ない相手に二十以上メッセージを送り続けるのはただの狂気だと思うのだが、どうなのでしょう。口調もフレンドリーさの欠片もなく完全に事務的ですし。大量の文章を遠目に見た時点で既にかなり恐怖を感じるのですが。
そして、大本の研究所グループ。百以上の通知が残されている訳だが、取り敢えず適当に既読を付ける。大抵の話の内容はどうせ大したこともないでしょうから。研究所でコーヒーが切れたことをこちらに連絡されても困るのですよ。
と、思ったのだが。
『都市部で大規模攻勢計画。以前の話の続きをしたい。一読次第連絡するように』
どうやらこちらに向けた連絡があった様子。橘さんとのトークを確認すれば、詳細を説明する内容が送られてきていた。
「…………淳介、橘さんのやつ見た?」
「今丁度確認してるとこ」
「おっけー」
どうやら日和は先に読み終わったらしく、落ち着かなそうな様子でスマホと向かい合い始めた。
一旦飲み物を口に運んでから、一息ついて自分も読み始める。
『政府が
なるほど。…………なるほど?
どの程度まで進行するつもりでいるかにも依るだろうが、確かに危険は危険だろう。ただ、今まで活動してきた上で問題がなかったのであれば、そこまでの規模ではないように思えるが。
加えて、半年も活動してきたのであれば、都市部と森の境界付近は既に『掃除』済みなのだろう。であれば、魔物が少し多く発生したところで被害が大きく出る訳でもない。となれば、そこまで焦って対応する必用もないだろうに。
「読み終わった?」
「あぁ、まぁ。でも、大して気にしなくても良さそうだけど…………。どう思う?」
「橘さんがここまで焦ってる感じなのも珍しいし、少し話は聞いた方が良いような気がする。前に報告行った時も、一応色々細かい説明はしたはずだから、そんなむやみやたらと騒ぎ立ててるようにも思えないし」
「…………まぁ、確かに。今日が────四月十五だから、後半月位は時間残ってる」
「二週間と少しって思ったら割と直ぐだけどね」
少し二人で相談した後、結局橘さんに電話することにした。文章越しでは伝わりにくいこともあるだろうし、この際話してしまった方が速いような気もする。
あまり待たないうちに、『もしもし』という橘さんの声が電話の向こうから聞こえて来た。
「佐藤淳介です。今連絡を見て、手っ取り早く電話しようかと思って」
『なるほど、行動が早いな。まぁ良い。端的に言って、日に日に不安材料が積み重なっている状況でね、もしよかったら意見が欲しい』
「と言っても、規模はどのぐらいなんです? 俺の目にはあんまり焦る必要があるようにも思えなかったんですが」
『…………あぁ、確かに送った文面だけではちょっと分かりにくいかもしれないね。ただ、如何せん時間が足りなくてね。可能であれば、都心の方に向かって欲しい。一応電話上で説明はするつもりだけどね』
日和に視線を向ければ、聞こえているのか、親指を立てられる。
確かに、今から都会にいく上で困ることは別にないのだが。
『少しだけ言っておけば、リゲイナーズ───討伐隊のことだけど、が凄い人気が出てきて。必要以上に
…………想像以上に大事かもしれない。
まぁ、取り敢えず向こうに行ってから色々と詳しい話は聞こう。こうして電話越しに聞いていてもあまり良く分からない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます