第18話 水棲の魔物
さて、
それは、諸悪の根源である裏山の
しかし、そう、問題はその、
海が魔物に占領されていて海外との交流が途切れているという話は既出だと思う。そして
水は、他の物質と比べて冗談のように魔力との親和性が高い。空気に対する魔力の親和度が一であるとするならば、水に対する親和度は百であるとも千であるとも言われる。その特異な性質の原因が何であるのかは、未だに判明していないらしいのだが。
そして、その魔力との高い親和性は、更にもう一つの性質を示す。それは、取り込んだ魔力の拡散。
水に取り込まれた魔力は、その水分全体に拡散され、均等に広がって行く。そのお陰で、水全体の魔力の濃度は一定に保たれる。魔力が水場に影響されやすいのも、この拡散が関わってのことらしい。
ところで、この水中の魔力濃度が全体で一定に保たれるという性質。これが一つ、通常では発生しない事態を引き起こす。
それは、魔物の同時多発的な発生だ。本来空気中であれば魔力濃度に偏りがあり、その魔力がある臨界密度を超えると、そこに魔物が発生する。したがって、
しかし水中であれば、その均等な濃度のお陰で、水全体で一度に臨界密度を超えることとなる。
魔力濃度が徐々に高まって行き、全体の濃度が臨界点を超えた瞬間に、大量の魔物が同時に発生する。そして魔物の創造のために失われた魔力を回復するために、また魔力を急激に吸収し始める。
何度も繰り返して行われるこの魔物の大量発生は、過去に被害に遭った先人によって、『波』と名付けられた。
海中に突如大量の魔物が発生したことが判明し、それを駆除するために乗り出した者達が、この『波』によってどれだけ被害を受けたのかは、計り知れない。
水棲の魔物は陸棲の魔物と異なり、凶暴で、攻撃的だ。常に闘争を求め、獲物を求めて、水中を漂っている。
その凶暴性が海中での魔物の数を減らす原因となり、そのお陰で陸上の人類の危険が微減しているというのは皮肉な話だが。
そしてその、水棲の魔物が、件の
完全に自分の不注意だった。
ただ、良く考えてみれば、
事態が発覚したのは昨日の夜。そう言えば、と思って
水棲の魔物は、蜥蜴や蛇────つまり爬虫類のような見た目をしている魔物が多い。水棲と名に関しているだけあって陸上での活動時間は短いらしいが、それでも陸に上がれない訳ではない。それも、
もし、何も知らない人が不用意に川に近づいたら? 命の危険がある森の中にのこのこと入ってくるような勇者がいるとは思えないが、それでも可能性はゼロではない。
現に俺も、危険地帯にのこのこと入って来た一般男子高校生であることだし。いや、本当に馬鹿。軽率に命を危険に晒しまくってるのは
ということはつまり、自分も間違って襲われて大怪我を負いかねないということ。正直とても怖いので止めて欲しいのだが。
まぁ取り敢えず、何か対応を考えねば、ってね。
と言っても本当に何も思いついてなくてですねー。何を考えようにも机上の空論過ぎて…………。
水中とかどうしようもなくない? 私泳げないし、蜥蜴ちょっと見た目苦手だし、泳げないし、水中で戦うのキツそうだし、泳げないし。
とまぁ、この問題に関しては先送りにするしかないような気もしている。取り敢えず水辺で戦えそうな場合は成る丈数を減らそうとは思っているが、前述の通り水棲の魔物は
しっかし、やらなければならないことが多いね。
将来の方向性を見つけたとはいえ、
裏手の
まぁ、何もすることが見つからないよりも、楽しく生きて行けるような気はするが。
どうせ適当に生きてるのだし、少しぐらい何か目的意識を持って生きてみるのも良いだろう。
水棲の魔物と闘ってみるのも楽しそうだし、コアの破壊についても魔物と闘うだけだから気楽だし。
結局、魔物を殺すことが主目的であるのには変わらないのだ。それが、自分の将来についても利益があると分かっただけ。実際自分のすることが大幅に変わるわけではない。
週末に
……………危ない危ない。
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