第8話 疲労感によるグロッキー

 昨日は迷宮ダンジョンに遊びに行った訳ですが。普段外に出て運動しないような人が、急に死力を尽くして動くようなことがあれば、そりゃあ満身創痍になるよねという話で。

 まぁ、確かに筋トレやら体力トレーニングやらはちゃんと続けてますよ? ただ普段の運動では、自分の限界を超えて動くようなことはなくてですね………。


 筋トレなんかについて調べるとたまに出てくるのが「限界を超えてからが勝負」という言葉だが、これはただの熱血なるお方々の名言ではなくて、純粋に「辛いと思ってから更に続けないと体に負荷がかからず、筋トレの効果があまりでない」ということらしいのを、最近になって実感した。なあなあで済ませてしまえるような強度の運動では正直殆ど影響がない。

 そのため、普段の自分の運動では翌日に疲労が及ぶこともなければ、筋肉痛────レベルアップの影響らしいもどきの方ではなく────やら何やらに苦しめられることもない。だからこそ長いこと続けられてたんだけどね。


 つまり、昨日体力も使い切って、全身を酷使したよねってことでありまして。そんなこんなで全身を襲う疲労感と、筋肉痛とのせいで完全にグロッキーです。


 ただ正直、まさかここまで翌日に影響するとは思ってもいなかった。それこそ普段の筋トレがかなり無害だったからね。まぁ、昨日は確実にアドレナリンどばどばの状態で戦ってたから、自分の疲労に気がついてなかったってのはあるだろうけどね。帰ってからもずっとハイテンションだったし。夜寝るまで誤魔化されていた可能性は多分にある。


 そういえば、昨日の血塗れの服は特に問題なく解決した。父親がまだ仕事で帰ってきてなかったからね。………なんか普通に忘れてたよね、父親が仕事してること。

 ということで、衣服の類は軽く洗って、ベランダに干した。完全に匂いが取れたわけではないが、まぁ、森の方に出かける時用の服として扱えば特に問題はないだろう。


 こういった訳で、昨日の迷宮ダンジョン散策はそれなりに色々な影響を及ぼした訳ですが。

 やはり一番の影響は、あの衝動がなくなったことだ。良い感じに体を動かした後の気持ち良さもあったのだろうが、昨日の夜から開放感が凄い。

 これは今後も迷宮ダンジョンに通うことになりそうですね。仕方ないよね、実生活に影響が出ないようにするためですもの。


 いやその前に裏山の迷宮ダンジョンどうにかしろよってことになるんでしょうけど、そう簡単な話でもなくてですね…………。

 昨日一応裏山の池の様子を見に行ったのだが、もうどうしようもなかった。川の流れを止めたところで、迷宮ダンジョン内の水が瞬時に無くなる訳ではない。もう既に水で満たされている部分全てから水が蒸発するまで待つとなると、それこそ数十年単位の時間がかかるだろう。

 高低差利用してホースで水汲み出すとかも考えたけど、迷宮ダンジョンって結局下に伸びてる訳だからね。高低差で言ったら明らかにそちらの方が下だ。


 ついでに言うと、結局あの迷宮ダンジョンが自由になるのはそれなりに困る。自分の家の周囲に国の管轄地があるというのも落ち着かないし、そもそも現在進行形で見捨てられつつあるこの地の管理に国が乗り出すかという不安もある。もしあそこの迷宮ダンジョンが手付かずで放棄されるようなことになれば、その直ぐ側に住む自分たちはどうしようもない危険に晒される訳で。

 今もなおそのサイズを巨大化させ続けているらしい迷宮ダンジョンの水を今更抜き、そこから更に対応を考えるとなると、どれだけ時間がかかるか分からない。その間に溢れ出した魔物によってどれだけの危険がもたらされるか。

 長期間放棄されたままのそれなりの大きさの迷宮ダンジョンがどのようになるのかは、今回の散策と、あの大量の魔物との遭遇で良く学んだ。それこそ一般人である父親が一人で戦えるようにも思えなかった。もちろん、レベルアップする前の自分であっても。


 そう考えると、本当にあのタイミングで迷宮ダンジョンを発見して対処できたというのは、それだけ幸運だったということなのだろう。そうした幸運の産物なのであれば、その副産物としてたとえ少し自らの性格が歪められようが、受け入れるしかないような気もする。


 まぁ、こんなことに思いを馳せていても結局現状は変わらんのですがね。だってどうしようもないわけだし。

 ご都合主義というか、場当たり的というか、とりあえず適当な人生を今までは送ってきたのだから、今更そのスタイルを変える気にもなれない。実際裏庭の迷宮ダンジョンも結局大きな問題もなく誤魔化せているのだから、今後もなんとかなるでしょうという願望。


 魔物と戦うのも、純粋にストレス発散にもなるし、体を動かすという面でも前よりは健康になっている気がする。

 前に行ったように日常生活で疲労感を感じることはあまりないため、久しぶりの疲労感だが、常日頃に襲われているわけでなければ、気分も悪くはならない。どちらかというと微妙な達成感を感じるほどだ。


 とりあえず今の所は何も問題が発生していないのだから、自分の体に起きている異常が誰かにバレないよう気を付けていればそれで良いだろう。

 急な身体能力の変化とはいえども、まだ一応常識の範囲内ではある………と信じたい。流石に「魔物殺してます」とかいうのが世間一般にバレると色々と面倒そうではあるので、少しぐらい気を付けた方が良いんでしょうねぇ。知らんけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る