第3話 体調の変化
異変が起こり始めたのは数か月後の事だった。正直数か月も経つと自分が
基本的に、レベルアップというのは体感できるものではない。
強くなる、というのは男たるもの至上命題として掲げなくてはならないものだと思う。俺も例に漏れず強さを求める一般男子高校生だったので、レベルアップについては色々と調べたことがあった。
しかし実情としては厳しいもので、魔物を数匹倒しただけでは体が強化されることは殆ど無い。
そもそもレベルアップがなぜ起こるかということについてだが。
魔物が強くなればなるほどその身に宿す魔力の量も増え、若干は身体の強化の割合が増えるらしいが、それも大した変化ではない。その上、強力な魔物が倒せるということは、それだけ身体も強化された後だということ。その程度の微量な変化では実感すらも出来ず、気にする者はいなかった。体力やら筋力やらが向上するのはありがたいことだが、それよりも自分の戦い方を洗練させた方が良いと、
いやまぁ、こんなこと言われたら諦めちゃうよね。
魔物も体が強いだけの動物らしいけど、そもそもただの野生動物にも立ち向かえないってのにどうすりゃええねんって話だし。
ということで、永らく忘れていた魔物を殺すことによるレベルアップ。
それを最近になって授業で習った。授業で習うことと言えば基本的にはネットで調べて出てくること程度なので「テスト勉強しなくてええやん、やったぁ」ぐらいにしか思っていなかったのだが。
なんか最近体軽いのこれじゃん。
ちょっと不思議には思っていた。死ぬ程体調良いし、色んな感覚が鋭くなってるのか辛いの食べられなくなったし、昨日間違って飲んでる途中のペットボトル握りつぶしてコーラ顔面にかかったし。
あぁ、顔面コーラ思い出して泣きたくなって来た………。
まぁそれはそれとして。体の調子が良いというよりも、体力に満ち溢れている。夜中いつもより寝る時間を遅くするなんていう無理をしても翌日に響くことが少なくなったし、登校の後の授業も気が楽。何なら集中力が上がってるのか、授業も真面目に話を聞いてると割と直ぐに終わる。
ふふふ、これは我が春が来たということではありませぬか。
疲労感がないということが此処まで幸福だとは知らなかった。基本的に日本人と言うのは染み込んだ奴隷根性のせいで疲労に塗れて生きていると思うのだが、男子高校生も例に漏れず常に疲れていることが多い。
確かに大騒ぎすることも少なくはないんですけれども。基本的に省エネで生きてくのがモットーなので。勉強とか諸々で疲れてるし。
別に進学校じゃなくても、例え就職組でも色々と勉強しなきゃならないんですよ。資格とかあるし、通ってるの私立だから謎の卒業試験的なやつもあるし。公立もあるんか知らんけど。
だというのに、寝てなくても疲れない。少しの睡眠時間でも死ぬ程体力が回復する。目が良くなってるのかコンタクトもいらなくなったし、筋力も上がってるっぽいし。
未だ体はひょろっひょろだけどな!
親譲りの不摂生で子供の頃から損ばかりしているってやつですよ。おい父親ァ! 微妙な遺伝子授けやがってェ!
あ、父親の方がまだ外出てるって? お前の性格が問題なんだって? いやその通りなんですけれどもが………。
にしても、レベルアップで力が付いても体付きが変わらないのは少し驚きだった。
まぁ、
いつか見た写真のおっちゃんたちには憧れるものがある。いや痩せ型が悪いとは言ってませんけどね? やっぱり男たるものってやつがありましてね。
………筋トレする? いやでも普通に面倒じゃね?
ただ、今はレベルアップのお陰か、体力は有り余っている。少しぐらい運動しても、この体力が失われるようには思えなかった。
別に、実際試してみて疲れたらやめれば良い。適当に数キロ走る程度だったら別にそこまで疲れないだろ、とか言ってみる。
もやしっ子ですけどね、私。ランニングウェアで外に出た瞬間社会的重圧で崩れ落ちる自信がある。
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