6月、7月


6/28

今日もあの路地裏へ向かった。


先輩はいなかった。


けど、先輩に体育祭が終わる日は伝えて無かったし、7月に入ったらまた会えるかもしれない。


だから、会えるまで通うようにしよう。







6/29



今日も、先輩はいなかった。


まあ、6月中は会えないくらいの覚悟だったし、仕方ないかな。









7/1



7月に入ったけど、先輩はいなかった。



少しずつ、不安が積もっていくのを感じる。



けど、急に先輩に会った時のためにも、笑顔でいておこう。







7/7



7月に入って一週間が経ったけど、一度も先輩は見ていない。



自販機の横の空き缶がただ増えただけ。



ここまで会えないと、何か怪我とか、病気とかしてないか心配になってくる。



そろそろ先輩の顔が見たい。











7/14



あっという間に二週間が経った。



最早、先輩がいない路地裏にも慣れつつある。










◆◆◆










7/28





今日もこの路地裏に足を運んだ。


もう、先輩が来ないことは分かってるつもりだ。



けど、今日こそはいるんじゃないかと、



いつもみたいに胡座をかいて俺の事を待っている先輩がいるんじゃないかと、





思ってしまう。






目の前に投げ捨てられた空き缶がゆらゆらと歪んだ。



あっという間に視界全てが歪み、ポタポタと雫がこぼれ落ちた。




「先輩…」




俺は自分でも情けなくなる程震えた声で、そう呟いていた。






「伊地知くん…」










―その声は、一ヶ月半ぶりに聞く声だった。



その声の方に顔を向けるとそこには、



胡座をかき、目を真っ赤にしている先輩がいた。






「先輩…なんで…」







「ええと…君には説明しないといけない事がたくさんあるな…」



先輩は、安心したような笑顔でポリポリと頭を掻いた。








◆◆◆








「涙は落ち着いた?」



自分も直前まで泣いていたはずなのに、先輩は俺の頭を撫でて、落ち着かせてくれている。





でも、その手にはすごく、違和感がある。




「先輩…この手…」






「えへへ、びっくりしちゃった?」




先輩の手は、俺の頭をすり抜け、腕が俺の顔を貫通している。




簡単に言うと、幽霊みたいなイメージだ。





「じゃあまずこれから説明しちゃおうかな。」








先輩は、ゆっくりと話し始めた。

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