6月12日

5月中、俺は先輩とほぼ毎日会って、色んな話をした。

けどまだ、踏み込めずにいる。


先輩の不安と焦りの元を、まだ見つけられない。







◆◆◆







「冬海先輩、俺6月中は体育祭の練習で中々来れそうに無いんですよね…」


俺の高校は6月27日に体育祭がある。

俺は友達に誘われて応援団に入ったから、放課後はほぼ毎日練習がある。




「そうなのか…頑張ってな!」

先輩は、また不安な顔になった。



「でも、できるだけ来るようにはしますよ!」




「…本当か!?」


…びっくりする程感情の動きが分かりやすい。




「本当です。でも、予定が分からないので6月中に会えるのは今日で最後、くらいの気持ちでいて下さいね?」



「分かった!」







◆◆◆







―そういえば、先輩っていつも制服着てるな。




「前から気になってたんですけど、冬海先輩って制服以外の服着ないんですか?」




…俺はそう口にしてすぐ、自分の言い放った言葉に後悔をした。




先輩はこっちが不安になるような顔はしなかったし、声のトーンもいつも通りだった。




けど





「それは秘密かなー!まあそのうち君にも教えてあげるよ。」



言葉の選び方と、彼女の視線、彼女の雰囲気全てから






距離を感じた。







「い、言いたくないんなら良いんですよ!冬海先輩すぐ嘘つかんだから!」



「誰が嘘つきだって?」



「そこまで言ってないですよ!」



「あはは。でも、ありがとね。無理はしてないよ。」





寒気がする程離れた先輩との距離は、すぐに元に戻った。





あの寒気をもう一度感じるのは嫌だけど





先輩の事を知るためには、これからもう少し、踏み込む必要があるかも知れない。





  



◆◆◆









「じゃあ、俺もう時間なんで帰りますね。体育祭終わったらまた来るんで、楽しみにしておいて下さいね!」





「うん、待ってるよ。」







先輩の不安については、まだ何も分かっていない。





でも、今日は何かに近づけた気がする。






体育祭が終わったら、もっと






仲良くなりたい。

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