第2話 ようこそ異世界へ

 俺は櫻井颯太という名前の35歳のサラリーマンだ。独身である。

 だったというのも、なぜか突然キャンピングカーになってしまったからだ。どういうことか分からない。誰かに捨てられたように、森の中のどこかに放置されている。

 こんなことってあるのか?これは夢なのか?それとも、神様のいたずらなのか?

 それだけを自分に言い聞かせて、俺は森の中で暇を潰していた。一動不動のまま、何日も放置されていた。

 俺は自分がキャンピングカーになってしまったことに困惑していた。どうしてこんなことになったのか、理由も分からない。

 自分の身体を動かそうとしたが、何も反応しなかった。エンジンもかからないし、ドアも開かないし、窓も開閉できない。

 助けを呼ぼうにも、声も出せない。人間の姿に戻れる方法も分からない。

 これから一体どうすればいいのだろうか。

 俺はただ、鳥や動物が飛んだり走ったりするのを眺めているくらいしかすることがなかった。しかし、その動物たちも、地球で見たことのない奇妙な姿をしていた。

 例えば、緑色の毛に覆われた四本足の獣や、赤い羽根を持つ二足歩行の鳥や、水色の鱗に覆われた六本足の爬虫類などだ。

 これらの動物たちが何なのか、どこから来たのか、気になっていた。

 残念ながら、俺は聞けないし、彼らも答えてくれない。

 そして、ある日、自分が地球ではない場所にいることに気づいた。

 それは、空を見上げた時だった。

 昼間は、空に二つの太陽が輝いていた。それらは同じ黄色で大きさもほぼ同じだったが、角度や位置が違っていた。

 夜間は、空に五つの月が浮かんでいた。それらは同じ白色で形もほぼ同じだったが、大きさや軌道が違っていた。

 俺はこれらの光景を見て、驚愕した。これは明らかに地球ではない。これは異世界だ。

 俺は自分が異世界に転移したことにショックを受けた。どうしてこんなことになったのか、理由も分からない。

 異世界と言えば、あれやこれやと想像するものだ。

 俺は興味がなかったけど、話題になったりアニメや映画になったりしたものは知ってる。異世界っていうのは、そんな感じなんだろうと思ってた。まさか自分が本当に来ることになるとはな。

 この世界で生きていけるのだろうか。この世界には人間がいるのだろうか。この世界には敵がいるのだろうか。

 元の世界に戻れる?

 でもさ、俺は死んじゃったんだよ。キャンピングカーになって元の世界に戻っても、何の意味もないよ。

 俺は不安や恐怖に押しつぶされそうになった。

 キャンピングカーになっちゃったのに、数日間食べ物や飲み物がなくても空腹を感じないで生きていけるんだ。それにしても、何日かは生きられるよ、運がましだと思うよ。

 そんな俺の状況が変わったのは、転生してから数日後のことだった。

 その日も、森の中で暇を潰していた。鳥や動物が飛んだり走ったりするのを眺めているくらいしかすることがなかった。そんな時、突然、森から小さな声が聞こえてきた。


「Woenl KannNanGonl NewJuosDosl NawShewShonsMol」

「BunZheeDainAel DannShenl HaiwDanAel NansDainShenl BaiwWunMasl」

「YowXuwBael NanKuaenDeanwl QunNasEel BunYainl Rangnl RonnHosRonsl FaeXeannl」


 声の主は、森から現れた三人の小人だった。

 緑色の肌と髪の彼らは、小学生ほどの背丈だった。彼らは俺のところにやってきて、目玉のない黒い目で俺を見渡した。目玉が見えなくても、見つめているのが感じられた。

 キャンピングカーになってしまった俺は、彼らに親切に挨拶したいのに、まったく声を出せなかった。


「Wael HaiwBaesDol XeangeZewAel WoesShinsMol ZhonMoDanl」

「NanGon BunZheeDainl ZingwZheel Xeanl NasQunBae YiuwLeaowl ZhonGonl DanJoael DueHuel GailXengeDal Bael」


 彼らはチューチューとしゃべりながら、俺の周りにずっと騒いでいる。

 知らない言葉を話す知性生物は、異世界ならではだろう。

 もし彼らが緑色の肌を震わせているのと全裸でないのとが逆だったら、原始人みたいと思うだろう。


「ShenAel NanMol ZonwMol BaneYunnNol」

「ShiuwXeanel Bawl ZhonGonl NingnHuaenl KannKannBael」


 彼らはそう言ったかと思うと、手に持っていた短い棒を勢いよく振り上げた。

 その棒は鉄で作られていて、先端がとがっていた。彼らは俺のタイヤやミラーや車体などをねらって、棒を無慈悲に振り下ろした。


「やめろ!」


 俺は心の中で叫んだが、やはり声は出せなかった。自分の身体を動かそうとしたが、やはり反応しなかった。彼らの攻撃を受けるしかなかった。

 その時、森の中から矢が飛んできた。矢は小人の一人の背中に命中した。小人は悲鳴を上げて倒れた。


「Oeel ZhonShenl ShonsMol」

「GingeJeannShiuwl KuaenTaisl KuaenTaisl」


 残りの二人の小人は慌てて逃げ出した。しかし、彼らの背後からも矢が飛んできた。矢は小人の二人とも的確に射抜いた。


「ぎょえええ――」


 人は殺されれば死ぬんだ。

 それは異世界の緑の小人たちも同じだった。彼らは矢に射抜かれて、濃い緑色の血を流した。恐怖よりも、吐き気がするほど気持ち悪かった。

 ところで、誰が矢を放ったんだろう?

 矢の飛んできた方向を見ると、遠くの茂みから少女が出てきた。

 彼女は金髪碧眼で、頭には小さな花飾りをつけていた。森の精霊のような雰囲気が漂っている。

 上着は軽くて丈夫な革製のベストで、胸元は少し開いている。彼女の魅力的な谷間がちらりと見える。下は緑色のスカートで、膝上までしか届かない。スカートの下には黒いタイツを履いており、足元はブーツだ。

 可愛い顔をしているけど、なんだか生意気そうな感じもする。

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