泥棒

長万部 三郎太

わたしは毎日

わたしは泥棒。

白昼堂々と仕事をやってのける大胆不敵な盗人だ。



泥棒だが、ご近所付き合いは欠かさない。

何故ならこの辺りは皆揃って金持ちばかりだから。


「あら、奥様。聞きました? あそこのご主人の話」

「さっきちょうど聞いたところよ。ホント羨ましいわねぇ……」


お金持ちの噂話は商売のタネでありネタだ。

井戸端会議に溶け込むと、耳を欹て一攫千金の情報を狙う。



五丁目の頑固親父が3台目のベントレーを買っただの、

お寺向かいの奥様が投資向けのマンションを買っただの、

楽しい話が出るわ出るわ。


朝は私立学校の門の側で数時間。

昼はお洒落なカフェで数時間。

夜は進学塾の駐車場で数時間。


良いネタを仕入れるための労力は惜しまない。

わたしは毎日顔見知りを見かけると、得意の話術で捕まえるのだ。

次から次へと話題を振り、相手の反応をうかがう。


今日もまたご近所さん相手に、のべ半日以上も話し込んでしまった……。



わたしは泥棒。

専ら『人の時間』を盗んで生計を立てている。





(それで食べていけるのか?シリーズ『泥棒』 おわり)

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泥棒 長万部 三郎太 @Myslee_Noface

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