第3話
「あーお姉ちゃん。やっぱりお布団だしっぱにしてるー!」
「んぇ? もうシャワー終わったの?」
「うん。早く済ませてきちゃった」
妹は指でVサインを作って私に満面の笑みを向けた。服も着替えてきたみたいで、見慣れた高校時代に来ていた部屋着だ。それでもあの頃とはかなり雰囲気が違う。これが陽キャオーラか……! その陽キャは腕を組んでうんうんと頷いていた。なんだそれは、陽キャから達人にクラスチェンジか? お前に師匠キャラは似合わないぞ? お前の姉の私だってムリなんだからな?
「うんうん。それでこそお姉ちゃんだよねっ」
「な、何が?」
妹は、布団で寝ころんだままの私をビシっと指さして、笑顔のまま
「お姉ちゃん。ニートみたいでだらしない」
「ぅぐわはぁっっ!」
「あははっ! すごいリアクションっ! お姉ちゃんっっ……あははははっ!!」
「わっ笑いすぎだって! 私は女子大生なんだからなっ?」
こいつめ、さては姉をバカにしているな? よし、一度ここで姉妹の立場の違いを思い知らせてあげねばなるまいな! 私はお腹を抱えて笑う不届きな妹をこらしめようと布団から立ち上がった。今度はさっきと違ってよっこいしょって言わなかった。えらいぞ私。夏バテには勝ったな。
「このぉ! 人のことを笑いやがってぇ!」
「ゴメンゴメンっ! 体揺らさないでぇっ」
さっきの抱き着きは不意打ちだったから何もできなかったけど、もう違う。私はあの一瞬でレベルアップしたんだ。今度は私からスキンシップしてやるぅ!
私と妹はしばらくの間じゃれ合った後。妹は肩で息をする私をさしおいて私の布団に倒れこんだ。おいそこは私の布団だぞ! 私の癒しの場所なんだぞぉ!
「ほらお姉ちゃん。おいでおいで」
「布団取るなよぉ」
勝手知ったる他人の布団。妹は寝ころんだまま私に向かって手招きをしている。おかしい、この子は今日実家に帰ってくるためにわざわざ都会から電車やバスに乗ってきたはずだ。私よりも疲れているはずなのになんで私よりもピンピンしてるんだよ。
「私が言えたことじゃないけどさ、休むなら自分の部屋に行きなよぉ……あんたの布団とかはそのままにしてあるからさ」
「はぁ。何で気付かないかなぁ。お姉ちゃんの将来が心配だよ……まぁいっか、それはもう気にする必要はないし」
「おいおいすごい失礼なことを言うじゃないか。まだまだ私のお仕置きが足りないんじゃうひゃっ!?」
妹に布団に押し倒された。おかしい、布団は私の癒しの場所だったはずなのに今は恐怖しか感じない! 一瞬の油断が命取りになる。そんな言葉があるけど流石に現代日本で、ましてや女子大生が気にすることってそんなにないと思うんだ。でもそれは甘かったみたい。畜生ここは実家なんだぞ!? 歴戦の戦士だって自分の家なら私と同じくらいダラダラしてるって!
「お姉ちゃん」
「な、何……?」
妹は布団に倒れた私の上に覆いかぶさってきた。こ、こいつ、やっぱり顔が良い……
「目をつぶって?」
「嫌ですぅ!」
こんな状況で目をつぶったりなんかしたらどんなイタズラをされるか分かったものじゃない! 流石にさっきのじゃれあいで疲れたのにさらにくすぐりとかされたらもたないよ! 現代女子大生の体力舐めんなよ!?
「いいからっとりあえずお姉ちゃん、目ぇーつぶろ? ほらほらっ! お姉ちゃん優秀! インフルエンサー! バズりの女!」
「そう言っておけば流されると思うなよ? 私はそんな軽い女じゃないんだよ」
なんとか逃れようとジタバタするも全然逃げられない。ギブアップのサインとして私の逃げ道を塞いでいる妹の腕をペシペシと叩いても全く動いてくれない。後この子大きい……私も負けてないけどね! Gあるし! どうだ私は勝ったぞ!
「へっへへー、強敵だね。じゃあこのまましちゃおーかなっ」
「何を……って!?」
「お姉ちゃん……」
私の顔に妹の顔が迫ってくる。さっきまでの軽いノリは消えている。なっ!? えっ!?
「っ……」
「……っ!?」
私の唇に妹の唇が重なった。これキスじゃん……! 私は何もできずにただ固まっていた。ただこの子の唇の感触は柔らかかったです。
「んー……」
「……」
やっと唇を離してくれたかと思うと、妹の顔は私から離れようとはしなかった。
私をじっと見つめていて、目には少し真剣さが混じっている
「お姉ちゃん」
「は、はい……」
私の耳元にささやくように、妹は私を呼んで、そして熱い吐息交じりに言った。
「好きだよ」
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