第2話
「あっおねえちゃーん!」
「おかえりー」
玄関で待っていた妹は、のっそりと部屋から出てきた私とは対照的に素早く片腕を挙げた。高校生の時には持ってなかった白いブラウスが目立つ服だ。部屋着のシャツ一枚の私とは女子大生としてのクオリティの差が激しすぎる。
「うえー」
「ちょっとー。久しぶりに妹を見た直後の一言がそれなの?」
「いやだってさ。私の知らない間に妹がイケイケ女子大生になってたんだもん。今までのメッセの内容からして予想はしていたけどね……」
太陽とまではいかないけど、明るいタイプの性格だったんだ。でも今は太陽というかクラブの天井でぐるぐる回ってるめっちゃ眩しいボール状のアレみたいだ……思い出したミラーボールだ! ギラギラした人工物で陽キャのオーラで私を容赦なく照らして来てる!
「イケイケって……せっかく頑張って選んだ服なのにぃ。まあいいや。入るよー」
「あんたの実家なんだから勝手に入ってくれば良いのに」
「あはは、そうだよねっ」
妹は靴を脱いでそろえた。こいつ、靴も陽キャみたいなイケイケの物を履いてやがるっ。吐きそうだよ。陽キャのオーラに当てられて吐きそうだよ。だめだ、直視すると私のライフポイントがどんどん減っていく!
「何で後ろ向いてんの?」
「何でって……うぇっ!?」
素早く私の前に回り込んできた妹は、そのまま私に抱き着いてきた。
「えへへー……お姉ちゃんだー……」
「う、うん。私だよっ」
この子ってこんなスキンシップを取ってくるようなタイプだったっけ? いや確かに抱き着いてきたことはあったけど、今してるのは何か、重みがあるというか、今までとは違う雰囲気があるんだけど……あっこいつっ。匂いまで良くなってやがる! どれだけ姉を超えてくるんだこの妹はっ! よし落ち着けよ私? 姉らしくどっしりと構えて姉の威厳くらいは保っておかねばね! いいだろこれくらいは!
「あんたにこうやってべったりされるのも久しぶり……ていうか懐かしいというか色々と良いよね。うん。だから……」
「ふふふっ……お姉ちゃん成分に生き返るなーっ」
私よりも少しだけ背の低いこの子は、私を離さないまま見上げてきた。か、顔が良い……
「ほっほら! 荷物重かったでしょ!? 自分の部屋に放り込んできなよっ」
「はいはーいっ! それじゃついでにシャワーも浴びてくるから部屋で待っててね。お姉ちゃんっ」
あの子は軽快な足取りで背負っていたバッグを置きに自分の部屋に向かって行った。おかしい、高校を卒業してからほんの数か月しか経っていないのにこの変わり様はどう考えてもおかしいよ。もしかして、あれが大学デビューに成功したってやつか!? くっ悔しい……いつも私に甘えてさ、私にべったりだったあいつの姿はもうないってか……へっ姉として誇らしいぜ。
「はぁ。部屋でゴロゴロしよ……」
布団に戻ってスマホを弄ろう。布団とスマホだけだよ、変わらないでいてくれるのは……!
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