第二十二話「力試し」
「大丈夫だ、ジャガイモを好む者に悪人はいない!」
「その説唱えてるのフラッド様だけなんですが……」
【まぁ、仕方ないな。主決めたのだから受け入れるまでよ】
「……ですね」
リンドウはフラッドからジャガイモの誤解を解く話を聞き終えるとエトナとディー見た。
「従者のエトナです。よろしくお願いします」
「リンドウだ! よろしく頼むエトナ殿!」
【使い魔のディーだ】
「おおっ喋る魔獣とはなんと
【よろしく。と、言いたいところだが、使い魔の身としては、お前が主の護衛を任せられる実力があるのか? それを確かめままでは受け入れられん】
リンドウが頷く。
「
【なるほど。では、確かめさせてもらっても構わぬな?】
「無論――」
張り詰める空気にフラッドが困惑する。
「えっ? どういうこと……?」
「しっ、フラッド様、空気読んでくださいっ」
「えっ? ああ、ごめん……?」
【この姿を見ても、余裕を浮かべていられるか?】
ボシュッ――!!
ディーが変身を解き、本来の姿である巨体が現れる。
「おお……っ! なんと雄々しく美しい……!」
リンドウは脅えるどころか、言葉どおりの本心からの称賛をディーにかける。
【では、始めようか――?】
「応よ――」
ディーが構え、リンドウも太刀を抜き
【ふっ、いい度胸だ。死なないよう加減はしてやる!!】
「こちらも同じく!!」
【シャァ!!】
「むん!!」
ガギィ――ッ!!
ディーの鋼鉄すら引き裂き、巨木をなぎ倒す威力と鋭さを持った爪の一撃を真正面から太刀で受け止めるリンドウ。
その衝撃の凄さは一瞬で地中に埋まったリンドウの足首から先が物語っている。
【あえて
「そちらも誇るだけのことはある重い一撃だ!! 次はこちらの番だ、行くぞっ!!」
ディーの右前足を弾いたリンドウが攻撃に転じる。
「むん――っ!」
【甘い――っ!】
甲高い金属音と共にリンドウの太刀とディーの爪が火花を散らす。
「……すごいな、まさかディーと対等に戦える人間がいようとは……」
「同意見ですけど、一応フラッド様はディーに勝ってますからね?」
「ありがとうエトナ。おかげでますます自分の魔法が信じられなくなってきた」
「……私の言葉でもですか?」
「バカな。俺がエトナの言葉を信じなかったからなにを信じるというんだ? 信じる。自分は信じられないが、エトナが言う俺を信じる」
「まぁ、ならいいんですけどね……?」
少し頬を赤らめるエトナ。
「それにしても、リンドウの強さは予想外だな……確かに護衛が欲しいと言ったが、ここまで強いとは……」
「人助けはするものですね」
「だな……そんな下心はなかったんだが……」
「これも巡り合わせというものでしょう。神は信じていないですけど、信じかけそうになりますね」
「そうだな。だが、サク=シャに感謝するのはなんか不快だから、純白の女神に感謝しよう。俺は純白の女神は好きなんだ」
「ですね」
フラッドとエトナが話していると、ディーとリンドウの試合も佳境となっていた。
【ゴアッ――!!】
「
ディーの爪とリンドウの太刀が互いの首寸前で止まる。
「そこまでっ! 申し分のない実力だったリンドウ! ディーも、もういいだろう?」
フラッドが止めに入り、ディーとリンドウは爪と太刀を納める。
【そうだな。小娘……いや、リンドウ。見事な実力だ。私の体毛を斬り飛ばすとは、その武技に得物、尋常ではないな】
「ディー殿こそ、巨体に
ディーとリンドウは戦いを通して互いを知り、その技量に対し尊敬の念が芽生えていた。
「うん! なんか上手くまとまったな! 日も落ちてきたし、とりあえず帰るか!」
そうしてリンドウを追加した三人と一匹はベルクラントへと戻った。
宮殿に入る前、フラッドがダメもとでリンドウを護衛にしたことを説明したら《邪念を持っているか判別できる》魔法を持つ神官が現れ、リンドウを判別し、邪念も嘘も無いと判断し、リンドウは無事フラッド一行として宮殿内でも共に行動できるようになったのだった。
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