第十四話「今後の方針」
「よしっ! とりあえずなんとか上手くいったぞ! 疲れた!」
「そうですね」
【よくやったぞ主】
夜更け、
「これで自由に外出できるし、理由が無くても教皇の側にいられる口実もできたぞ!」
謁見の間や歓迎パーティーで一部始終を見ていたエトナとディーがフラッドを褒める。
「めっちゃファインプレーでしたよフラッド様」
【主は本当に口が回る男だな】
「はっはっはっ! そう褒めるなエトナ、ディー!」
フラッドがマスコット状態のディーの喉を撫でる。
【……おい、私は猫ではないぞ】
「ゴロゴロ言ってくれないのか……?」
【……ゴロゴロ】
仕方なく喉を鳴らすディー。
「お前かわいいな……っ!」
【なんだろう……そんなに悪い気がせんのは……】
「はいフラッド様、チャイが入りましたよ」
「ありがとう、うん、甘くて美味い!」
「なにか食べますか?」
フラッドはパーティーの最中、上手く立ち回ることに必死だったため食べ物にはほとんど手を付けていなかった。
「こんな時間に作ってもらうのも気がひけるから、部屋にあるものでいいよ」
フラッドたちに与えられた迎賓室には呼び鈴があり、鳴らせば何時であろうが使用人がやってきて要望に応えてくれるようになっていた。
「そうですね……クッキーとか甘いものが多いですね。きっとフラッド様が甘党だという情報を聞いて、用意してくれていたんでしょう」
「おおっ、それはいいな。エトナもディーもなにも食べていないだろう? 皆で食べよう」
「では遠慮なく」
【うむうむ】
座ってくつろぎつつ、食べ飲みを始めるフラッドたち。
「くぅ……疲れた頭に糖分が沁みる……っ」
チョコチップクッキーの上へ別に用意されていたチョコを乗せて頬張るフラッド。
「お疲れ様です。予知夢よりも猊下や神官たちのフラッド様への印象がかなりよくなってましたし、上々な滑りだしですね」
砕いて一口大にした醤油煎餅をポリポリと食べるエトナ。
「だろう? まぁ、でも俺じゃなくてディーのおかげなんだけどな。あの巡礼者たちを助けられたことが大きかったよ。野盗倒したのも全部ディーだし」
【いや、三人は主が倒したのだぞ?】
「ほんとにぃ?」
未だにフラッドは自分の魔法を疑っていた。
【まぁ、それはそれとして、巡礼者を助けたことを上手く活かしたのは主だ。教皇や大司教との受け答え、実に見事だったぞ】
「いや、ははっ、そんなに褒めるな……褒められ慣れていないんだから、どう反応していいか分からないじゃないかっ」
ニヨニヨするフラッド。
「けど、これで全部成功したつもりになって調子に乗っちゃいけませんよ?」
【うむ、むしろここからが本番だからな】
アーモンドを齧るディー。
「もちろん分かってるさ。とりあえずは教皇が暗殺されないことを第一にして、教皇や大司教とか神官たちと友好的な関係を築かねば……」
「そうですね、まだ神託もよく分かってませんからね」
「だよなぁ……」
【そもそも教皇の暗殺を防ぐことがベルクラントを助けることになるのか、それとももっと別のことからベルクラントを主が助けることになるのか、見当もつかんからな】
「ま、とりあえずやれることを一つずつやってくだけさ。とりあえず俺は神託は副目標くらいにしとして、本命の教皇暗殺を防ぐことに注力しようと思う」
「ですね、そっちを放置したらまた罪を着せられた挙句サク=シャ軍ですからね」
「ところで、二人とも気付いていたと思うが、あのチェザリーニという大司教、予知夢でサク=シャ軍率いてた奴だよね?」
「ですね」
【だな】
「やっぱ怪しいと思う? 黒幕的な?」
「うーん……難しいところですね。予知夢の分私たちは大司教に対して色眼鏡がかかってしまっていますから、決めつけず注意は払っておく、くらいがいいかと」
【この宮殿にはかなり強力な結界が張られているからな……。クランツの時のように小動物に化けて探りを入れることはできん】
「ま、それは仕方ないさ。というかディーにそんなことさせて、もしバレたら言い訳できないしな。間諜として投獄されても文句も言えん」
「ですね」
【確かにな】
「とりあえず、今日は疲れきったから風呂に入って寝よう。ここの大浴場は広くて綺麗だし、心も体も癒されるとしよう」
そうして大浴場で汗を流し身も心も癒されたフラッドたちは眠りについたのだった。
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