第四十九話「援軍」
「……はい。おそらくその場所は、ここ、チャラカ平原となるかと――」
カインが指したチャラカ平原は、平原と呼ばれているが、
「ですが、こちらが三万に対し敵は十万、それも帝国軍ですぞ? 籠城もせず正面からぶつかり合うのは自殺行為です」
「たしかにゲラルトの言うとおりだ。が、貧弱な防壁を頼りに、飢えて籠城するのは下策だろう……」
「ここは領都を捨てる、というのはいかがでしょう? 隣接領に避難し、戦力を結集し叩く。というのは?」
ゲラルトが防壁の厚い他領を指す。
「悪くはない。が、ヴォルマルクが領民に対してどう動くか分からない以上、俺はここから離れられん」
フラッドは自身を慕ってくれる領民たちを、見捨てることはできなかった。
「確かに……。領民は皆フラッド様を慕っています……。フラッド様が避難された場合、領民は帝国に対して散発的なゲリラ戦を挑む可能性が高いです……。そうなるなら、ボクが残り、領民を率いて帝国軍を消耗させます」
「ダメだ。カインも領民も無駄死にはさせない。俺のために死ぬなど論外だ」
三人が頭を悩ませていると、兵が慌てた様子で入室してきた。
「フラッド様!! ベルティエ侯爵、ガリバルディ伯爵、クニスペル伯爵、フランコ男爵が軍を率いてお見えになられました!!」
「なんだって!?」
「軍を率いてだと?」
「確かですか?」
「はいっ!!」
驚くフラッドに警戒するゲラルトに冷静なカイン。
三人が屋敷を出ると、ベルティエ侯爵をはじめとするフォーカス領の隣接領主たちが武装し、大軍を引き連れていた。
「フォーカス卿! 援軍に参りましたぞ!!」
先頭に立つベルティエ侯爵が声を上げた。
「ベルティエ卿!!」
「ここにいる者は貴族から平民まで皆、飢饉時に卿から受けた恩義に報いろうとするものだ!! 総勢四万!! 今より我々は爵位関係なく、フォーカス卿の指揮下に入る!!」
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」
援軍の兵たちが声を上げる。
「ありがとうございますベルティエ卿! ガリバルディ卿! クニスペル卿! フランコ卿!」
「こっ、これなら勝てるかもしれません……!」
呆然としたようにカインは援軍を見つめていた。
「しかしまだ三万の兵力差があるぞ? それに我等は急造の軍。練度も結束力も帝国に劣ろう……」
「手はあります。ディー、アナタの配下に空を飛べる魔獣はいますか?」
ゲラルトの問いに、カインはエトナの肩に乗るディーを見た。
【魔獣鳥たちのことか? もちろんいるぞ】
「その者たちと意思疎通できますか? 魔獣鳥の言葉を言語化できますかっ?」
【当たり前だろう】
「……なら勝てる……いや……そうだ……連携も先陣も……全部……」
カインは俯いてぶつぶつと独りごつ。
「士気は
カインは顔を上げてフラッドの背中に声をかけた。
「フラッド様!! この戦い、勝てます!!」
振り返ったフラッドは、逆光で後光がさすように金の髪や青い瞳が輝いて、神々しくすらあった。
「よし、なら……やるか――」
「はいっ!!」
覚悟を決したフラッドの姿は、家臣も、援軍に来た領主たちも、兵たちにも、輝かしく映った――
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