第二十七話「説得」
「フラッド様、どうされました?」
「火急の件とのことですが」
「ああ、二人に頼みたいことがある。それはこれだ!」
ジャガイモを取り出したフラッドに、二人は真意を測りかねる。と、いったような表情を浮かべる。
「ジャガイモ……ですか?」
「ジャガイモ……ですな」
「そうだジャガイモだ! 俺はこのフォーカス領で、明日にでもジャガイモ食及び、ジャガイモ栽培推奨令を出したい! だから二人の意見を聞かせてもらいたいと思ってな!!」
二人はますます困惑した表情になる。
フラッドがまたバカなことを言い出した。というものではなく、フラッドのことだからきっと重要なことなのだろうが、まったく意味が分からないという困惑だ。
「それはまた突然ですな……」
「……フラッド様、食料備蓄といい、今回の件といい、なにを危惧(きぐ)しておられるのですか?」
「うむ、単刀直入に言おう。二人も薄々勘づいてはいるだろうが、飢饉だ」
フラッドの言葉に二人はやはりと頷く。
「ですがフラッド様、飢饉の対策なら、わざわざジャガイモでなくてもよろしいのでは?」
ゲラルトの言葉にカインも無言で同意する。
ジャガイモとは、土地が余った農家が小遣い稼ぎで飼料用に栽培(適当に植えてほったらかし)している程度で、その価格も麦類の数分から数十分の一である。
そんなものを手をかけて育てるくらいなら、栽培ノウハウが確立されているうえに、同じ土地を使いながら、ジャガイモより収益を上げられる作物を増やしたほうがいいからだ。
「確かにゲラルトの意見も最もだが、一度大きな視点でものを見てほしい。今の王国の食糧事情は、ほぼ麦によって支えられている。そうだな?」
「「はい」」
二人が頷く。
「それはとても危険なことだ。例えばだが、もし麦類だけが罹る植物病が発生した場合、どうなる?」
「大変なことになりますね……」
「一つのものに依存しすぎることは、多大な危険性を含む。リスクは常に分散させないとな」
「しかし……そのような都合のいい植物病が
二人はまだ
未来を知ってるフラッドはそうでも、二人からしてみれば
「確かにゲラルトが指摘するとおりだが、蔓延してからでは手遅れになる。保険は常にかけておかなければならない。だからこそのジャガイモだ。高い生産力と生命力、そして味。どれをとっても麦に後れを取るものではない。麦がダメならジャガイモがあり、ジャガイモがダメなら麦がある。そういう状態になることが理想だ」
「なるほど……とはいえ、領民にジャガイモを食べろ。などと、下手をすれば暴動が起きかねませんぞ……」
「! いえ、それは違いますゲラルト殿!」
そういうことだったのか! というようにカインがカッと目を見開いた。
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