第4回転
私、
カラカラカラ。
どれだけ回してもキミに伝えるべき言葉の一つすら見つからない。くだらない考えばかりがあふれては消えてゆく、この繰り返し。
そして今日も回り始める。
私、考えたんです!
いえ、毎度考えすぎて空回りするくらい考えてますが、そういうことではなく、アイデアがあるんです!
いつも考えすぎて空回りして、結局思い通りのことが言えない。それがいつものパターンです。
そこで私は考えました。
いっそのこと言葉で伝えなければいいのでは?
頭の中がどれだけぐるぐるしていても、行動で示した好意は伝わるはずです!
ナイスアイディアです! 今までの空回りはこのためにあったのかもしれません!
さて、どんな風に伝えるか、それが問題です。
逆r──
前回の余韻を引きずるえっちな私を抹殺して、計画を進めることにします。
一番手っ取り早く好意を伝えるなら!
そう、キスです!
……ごめんなさい無理です調子乗りました。自由に話しかけることもできない私がエベレストを目指すのは自殺行為でした。もう二度とできもしないことを考えません。私がキスしようとしても頭突きになるのが関の山ですから!
それにだいたいそんな仲良くなってない女の子にキスされても怖くないですか? ラブコメや少女漫画ならお約束な気もしますが、一人の人間として考えてみると怖さの方が先に立つというか、いえいえ勇気がないからやらない理由を探しているというわけではないのですよ、けして、うん、もちろん。
そ、そうです!
逆の立場になって考えてみてください!
キミが私のあごをクイと持ち上げて「オレの女にしてやるよ……」と強引にキス、手で押し返そうとしても私を強く求めるキミの力にはかなわないんです。強引なのにその強引さが私を思う気持ちの強さを示しているようで、行き場を失った私の手はさまよいながらもキミの背中へと……
はふぅ
いえ! 今のは違います! キミはそんなオラオラ系じゃありませんし! あー、もう、やめです! 私が実践できないことをこれ以上考えても意味ありませんから!おしまい! おしまいです!
さて次を考えましょう。
キスよりマイルドな……ハグ?
えぇぇ、無理ですよ。ムリ!
私の血には海外の血も入っているらしいですが、育ちは純日本人ですから、挨拶がわりに抱きつく習慣なんてありませんし、できませーん!
緊張で力がこもりすぎて、鯖折りになるのがいいところ。背骨がきしむ悲鳴が愛のサイン、三度響いて砕けて消えた。静かに薄れ行く体温に、私は今日もキミのかけらを探し続けています。
……殺してどうする私!
謎のポエムまで出てきたということは、いよいよ私の脳は逃避しはじめてます。
ハグもダメ! はい、次!
そろそろ行動で示すというアイデア自体が失敗だったのでは?
と危ぶみはじめてきたところですよ私は
ハグでもダメとなると……ウインク? ダメダメ、私は両目つぶっちゃう不器用女です! 無理やり片目を閉じてもしかめっ面になって「目に砂でも入った?」と言われる可能性の方が高いです。
あぁ、もう! 難しいものですね。恋愛がこんなに難しいなんて……子供の時は手をつないで一緒に遊べばもう友達で簡単なのに、ずいぶん遠くまで来てしまったような気がします。えっと、手をつなぐ?
それです! 手をつないでみましょう!
恋人つなぎは無理ですが、普通のやつ!
もしかしたら友情の表現と誤解されるかもしれませんが、それでも仲良くなりたい気持ちは伝わるはずです。その先の気持ちを伝えるのは仲良くなってからでもいいはずです。友情から生まれるラブの二段階大作戦! 臆病な私の心にも優しい!
もうこれしかありません!
そうと決まれば今日の帰り道、少し前を歩いているのはキミじゃないですか!?
うおぉぉぉ、くらえぇぇぇぇ!
乙女として大切なものを失ってる気がしますが、今の勢いで行かないと同じことを二度とできる気がしません! 機は我にあり! コラテラルダメージというやつです!
キミのそばに駆け寄り、その手を握ります。
筋張ってる指とやわらかな手のひら。そのギャップに胸の奥がとくんと震えるのがわかりました。
今なら言えそう。
キミのことが──
口を開いたその時、キミの向こうに見えたのは車の影。
瞬間、反射的な行動。
キミの手を強く引き、自分の側に寄せる。自動車の重い車体が通り過ぎていくのが風圧でわかりました。ほっと胸をなでおろします。今、胸にあるドキドキはキミと至近距離にいるせいなのか、危機に直面したせいなのか。
「歩道の外側を歩くと危ないですよ」
(
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます