書きかけの地図

ろくろわ

書きかけの地図

 私は数歩先も見えぬ程吹雪く中、電子端末を開き現在の位置を確認した。昔はGPSと呼ばれる自分の位置が分かるシステムもあったそうだが、既に失われた技術だ。

 今は電子端末に残る誰かが残した書きかけの地図を頼りに周りの風景と照らし合わせ、自分の位置を知るしか手段が無い。


 世界は刻一刻と変わっている。


 地図に記された所は崩れ、消され、埋もれ、焼かれ、そしてまた空白となる。


 今、私は地図の記されていない所まで来た。

 この先は私が地図に記していく番だ。直ぐに空白となるかもしれない。それでも私達の後を着いてくる旅人の為に私は地図に書き残していく。


 書きかけの地図が完成する事は無い。

 

 それでも私はこの先を歩いていく。



 了

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書きかけの地図 ろくろわ @sakiyomiroku

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